八の調


過去の女








梢「はぁ・・・」

花梨「そんなに彼氏がいないのが寂しい?」

梢「うん・・・」

浩子「ひあ〜・・・ストレートに・・・」

珠実「まぁそろそろ退院出来ると思うから大丈夫です〜」

梢「そうだけど〜・・・ふぅ・・・」

白鳥さんが入院してもう何日経ったかしら・・・
夏休み前のテストは終わって進路についても一段落ついた。
だけど白鳥さんがいなくてどこか寂しいような・・・

花梨「まったくうらやましいね梢は。ずっと好きだった人と付き合う事が出来て。」

梢「うん・・・」

浩子「で、梢ポンの恋人・・・あれ?何て名前だっけ?」

珠実「白鳥さんです〜」

浩子「白鳥さんっていつ頃退院出来るの?」

珠実「色々あって伸びたけど明日辺りには退院出来るそうです〜」

花梨「でもさ、よくそんな早く治ったね。」

梢「それはいい応急処置した人がいたからね。」

珠実「それじゃ梢ちゃんそろそろ。」

梢「うん。帰ろう。二人はどうする?」

花梨「とりあえず今日も弓道は休みだし・・・」

浩子「私達もそうだから・・・寄ってってもいい?」

梢「うん、いいよ。」

花梨「それじゃ一緒に。」

珠実「帰るです〜」

私達は一緒に帰る事にした。

花梨「そう言えば一緒に住んでる緑色の髪の子、どうなの?」

梢「朝美ちゃんは・・・その・・・」

浩子「まだ元気でないの?」

梢「うん・・・」

朝美ちゃんは鳥汐ちゃんの事があってからずっと元気が無い。
学校から帰って来たら物置にこもって誰とも会おうとしない・・・

梢「どうしてこんな事になったのかな・・・」

珠実「梢ちゃん・・・」

梢「どうしてこんな辛い事が何度も・・・」

花梨「梢・・・」

梢「あ、ごめんね、こんな事言っちゃって・・・」

浩子「ううん・・・」

いつもと違う雰囲気のまま、私達は鳴滝荘に帰ってきた。

梢「ただいま〜」

恵「あ、お帰り〜」

浩子「あ、お姉さまおじゃまします〜」

恵「いらっしゃい。」

梢「あの、桃乃さん・・・朝美ちゃんは・・・」

恵「朝美ちゃんならあそこよ・・・」

そう言って桃乃さんは物置を指差した。

梢「そうですか・・・」

恵「さっき殺し屋ブラザーズが来たけど・・・今はそっとしておくしか無いわよ。」

梢「はい・・・」

花梨「そう言えばあの子って確か内職で生計立ててたんだよね。今どうしてるの?」

梢「あ、それは・・・」

「ただいま〜」

浩子「え?」

ちょうど話そうとした時に土神さんと朱桜さんが帰ってきました。

梢「あ、お帰りなさい。」

花梨「梢どう言う事?」

瑞穂「あ、ヒロちゃんに花梨ちゃんだっけ?私達今だけ入居しているの。」

浩子「あ、もしかして朝美ちゃんの?」

理想奈「そう言う事。家にはちゃんと言ってあるから大丈夫よ。」

花梨「はぁ・・・」

理想奈「それで朝美ちゃんは・・・」

恵「もう帰って来てるわよ。引きこもったけどね・・・」

理想奈「そうですか・・・」

瑞穂「大丈夫だって。私は内職してるからアンタは朝美ちゃんを。」

理想奈「うん。」

そう言って土神さんは五号室に向かいました。

珠実「どうしてあの人もいるんでしょうか〜?」

梢「え?」

花梨「どうしてって・・・黒崎さんの手伝いででしょ?」

珠実「でしたらどうして住み込む必要があるです?」

梢「そう言えば・・・」

理想奈「私は朝美ちゃんの為にって思ってるけど・・・瑞穂はどうしてなのかな?」

花梨「誘ったんじゃないんですか?」

理想奈「ううん。話した時に『一緒に手伝う』って言って・・・」

花梨「う〜ん・・・土神さんと朱桜さんは今何処に泊まってるんです?」

理想奈「白鳥くんの部屋だよ。一緒にね。」

花梨「それはどうしてです?」

理想奈「確か・・・瑞穂が言い出したのよね大家さん。」

梢「はい。確か『いるついでに掃除しておく』っておっしゃってました。」

花梨「ははぁ・・・それはつまり・・・」

梢「?」

花梨「土神さん、梢の彼氏の事好きなんだわね。」

梢「ええ!?」

理想奈「まさかぁ。だって瑞穂は白鳥くんと大家さんの事知ってるから私達結構注意されてるのよ。」

花梨「注意してるからこそって事ですよ。」

珠実「ふむ、一理あるですね。」

梢「珠実ちゃんも花梨ちゃんも何言ってるのよもう。」

確かに白鳥さんが気付いてなくても誰かが白鳥さんの事を想うと言う事は十分にありえる話だけど・・・
ちょっと困るかな・・・

「まぁありそうな話だな。」

梢「?」

後ろを見ると瑠璃岸さんにみっちゃんとさっちゃんがいました。

沙耶「こんばんわ。朝美の様子見に来ました。」

恵「朝美ちゃんなら物置よ。」

沙耶「どうも〜行くで。」

三千代「あなたに言われるまでも無いですわよ。」

みっちゃんとさっちゃんが朝美ちゃんがいる物置に向かい、玄関には私達青短高校のみんなと桃乃さんと瑠璃岸さん朱桜さんだけになりました。

翼「さてと、話を戻していいか?」

恵「何処に?」

翼「瑞穂が白鳥に惚れてるって事。」

珠実「ま〜ここじゃ何ですし炊事場で〜」

恵「そね。」

そう言う事で私達は炊事場に移動しました。

花梨「それじゃまず土神さんと白鳥さんについて。」

翼「あいつらは性格上真面目だから色んな意味で気が合ってたな。」

理想奈「うんうん。それに彼氏欲しがってたよね。」

恵「んじゃもう決まりじゃない。」

浩子「梢ポンに恋のライバル登場だね。」

梢「そうと決まったわけじゃないですよ。それにこんな事言ってると土神さんに悪いよ。」

花梨「ま、私は可能性を言ってるだけだから。」

梢「もう・・・」

理想奈「まぁ大丈夫ですよ。所でこれは?」

炊事場の隅には二mほどある箱が立てて置いてあった。

梢「それは栗崎さんが頼んだ物です。」

花梨「それってあの白鳥さんの中にいる女好き?」

梢「うん。前に行った時に頼まれて・・・」

恵「確か沖縄とか言ってたわよね。」

浩子「ひあ〜あの人沖縄の方なんですか・・・」

花梨「中身何なの?」

梢「見てないから・・・」

花梨「じゃあ今開ければ?」

梢「そんなの失礼だよ。」

「そうそう。他人の秘密はあんまり知らない方がいいのよ〜」

梢「え?」

聞いた事の無いような声・・・
裏庭から?

梢「今の・・・」

珠実「裏庭からです〜」

翼「客なら前から来るだろ・・・てぇ事は・・・」

梢「・・・」

白鳥さん達を狙っている・・・
そして朝美ちゃんがあんな風になったきっかけを作った・・・

梢「十二支・・・!!」

私はすぐに裏庭に出ました。

「やっほ。初めまして、だね?」

裏庭には紺のショートパンツと白のキャミソールに赤のジャケット、サングラスにこげ茶色の長髪を白のリボンでポニーテール状に結った女性がいた。

梢「十二支・・・ですね?」

女性「そ。ちなみに名前は兎連って言うの。漢字で書けば兎に連続の連ね。」

この女性、兎連さんからは人を殺すような雰囲気は無かった。
けど何か恐ろしさは感じた・・・
それは兎連さんの傍にある物・・・

梢「それは何です・・・」

兎連「これ?」

それは二mはあると思う大きな箱だった。
彼女はそれをリュックを背負うように右肩に背負っていた。

兎連「これは私の相棒かな?」

梢「武器・・・か何かですか?」

兎連「正解〜」

梢「人を殺す為の・・・?」

兎連「ん〜・・・そうなるね。」

珠実「梢ちゃん!!」

すぐに他の人がやって来た。

珠実「すぐに離れるです!!警察を呼んでこいつを!!」

兎連「止めた方がいいよ。こんないい所血で染めたくないし。」

理想奈「何気に酷い事言ってる・・・」

梢「兎連・・・さん・・・」

兎連「ん〜?何かな美少女大家蒼葉梢ちゃん?」

梢「何をしに来たんですか?」

兎連「今日は下見よ。別に変な事はしないわよ。」

梢「下見・・・?」

兎連「そ。多分猿治のお馬鹿さんが言ったかもしれないけどさ、ここの事、私と猿治含めて七人知ってるからね。」

恵「七人って・・・」

兎連「全員じゃないのよ。ま、どうしてかは知らなくていいでしょうけどね。」

理想奈「この人と捕まった人、それに朝美ちゃんのあの子に白鳥くんを襲った奴を含めるとしたら後三人がここを?」

兎連「大丈夫よ。あんまり辺りに迷惑起こさない奴だけだから。」

花梨「十分騒ぎ起こしてると思うけど・・・」

兎連「ま〜そんな中私がどうして来たのはあの白鳥ちゃんの住んでる所と恋人がどんななのかな〜なんて思ってね。」

梢「白鳥・・・ちゃん?」

兎連「私も結構あの子の事気にってるのよね〜こんな形で出会わなかったら優しくしてあげちゃうのに。」

梢「白鳥さんは・・・白鳥さんは私の恋人です!!変な真似しないでください!!」

兎連「分かってるわよ。だからそんな事はしないわ。それより・・・」

兎連さんが箱を立てたまま置いて私に近づいてきました。

珠実「な、何するです!!梢ちゃんに近づくなです!!」

珠実ちゃんが私の前に立とうとしました。

兎連「何もしないわよ。今はね・・・」

珠実「むぐ〜〜〜!!」

兎連さんが珠実ちゃんを左手で押さえつけて動けなくしていました。

兎連「今私を殺すならいいわよ。そう言う事してるから別にいいし。」

浩子「ひ、ひぁ〜・・・」

誰かが『だったら望み通りに』って言うような展開だけど・・・言えそうには無い・・・
この場の雰囲気が・・・彼女から発せられる得体の知れない何かが私達を固めていた・・・

兎連「さてと・・・」

兎連さんの右手が私の顔に近づいてきた。
逃げたいけど体が言う事を効かない・・・

梢「ひっ!?」

そのまま手を私の顎にそえて私の顔を良く見えるように少し上げ、彼女も顔を近づけてきた。

兎連「ふ〜ん。」

梢「な、何です・・・?」

兎連「・・・綺麗な瞳。エメラルドのようね。」

梢「え?」

兎連「結構私好みね。」

そう呟くと彼女は私達から離れ再び箱を右肩で背負いました。

兎連「き〜めた。私あんたに惚れちゃった。」

梢「え?」

兎連「だからあんたを殺しには来ない事にした。」

梢「え?え?」

初めは何を言ってるのか分かりませんでした・・・
突然殺すの止めたって言われても・・・

兎連「まぁもしかしたら遊びには来るかもしれないけどそんときゃお茶出してくれないかな?」

珠実「駄目に決まってるです!!」

兎連「ははは。まぁいつか白鳥ちゃん・・・と言うよりもカミ〜の相手に来るかもしれないからまた近い内来ると思うね。」

梢「カミ〜?栗崎さんですか?」

兎連「そよ。私彼の女なのよ。」

梢「ええ!?」

女って事は・・・栗崎さんの恋人!?

花梨「嘘に決まってるでしょ梢!!何処に恋人殺す女いるのよ。」

兎連「うふふ、真実か否かは彼に聞きなさいな。」

恵「だったらさっさと帰りなよ!!白鳥クンはいないんだから!!」

兎連「分かってるって。あ、だったら朝美って子に言って欲しい事あるけど、それだけはいい?」

梢「朝美ちゃんに?」

兎連「鳥汐はあの子に会いたがってるわよ。ターゲットじゃなく友達としてね。」

梢「え?」

兎連「あの子内気だから自分から会いに来るのが恥ずかしいのよ。もし会いたいんだったら土曜日の夕方辺りにこの街の公園に多分いるわよ。」

梢「どうしてそんな事を・・・」

兎連「あの子、私達に話したのよ。こんな形で出会わなかったらって。」

梢「・・・」

兎連「これは本当だからね。あの子の悲しむ顔は私は一番見たくは無いから。」

梢「私も朝美ちゃんの悲しむ顔は見たくないです。」

兎連「ふふっ交渉成立かな?じゃね!!」

そう言って兎連さんは常人離れの身のこなしで鳴滝荘を出て行きました。

理想奈「い、一体なんだったのかしら・・・」

梢「目的は分かりませんが・・・一つだけ分かった事があるわ。」

花梨「何梢?」

梢「鳥汐ちゃんは・・・本当に朝美ちゃんの事を想ってるって事。」

理想奈「それじゃもしかしたら彼女を元気に出来るかもって事?」

珠実「でも嘘って事もあるですよ〜本当だからねとかぬかしましたが〜」

梢「でも・・・」

「信じていいと思うぜ。」

梢「え?」

上の方から白鳥さんの声が・・・
屋根?

「よっと。」

恵「わっ!!」

屋根から白鳥さんが降りて・・・?

梢「栗崎さん?」

神那「あったり〜」

白鳥さんではなく栗崎さんでした・・・

梢「いつからここに?それに病院の方は?」

神那「一日くらいいいと思って無理矢理頼み込んで退院してきたんだよ。ちなみに兎連が鳥汐の話をしだした時からだ。」

浩子「じゃあいいですか?本当にあの人はあなたの女ですか?」

花梨「いや、嘘に決まってるでしょ・・・」

神那「本当さ。」

花梨「ほらね、本当だって・・・ってえええ!?」

神那「俺が愛した女は生涯あいつだけだ・・・どんな形になろうとな・・・」

梢「栗崎さん?」

その時一瞬でしたが栗崎さんが悲しそうな顔をしたのに気付きました。

花梨「で、でも何でそんな人を殺すような・・・」

神那「追々話してやるよ。所で梢ちゃん、頼んだ物は。」

梢「炊事場にありますよ。」

神那「おし、これで俺も戦えるな。」

梢「ではアレはなんかの武器ですか?」

神那「ああ。おっと。」

梢「?」

神那「せっかく帰って来たのに恋人に会えないってのは寂しいだろ?今代わるぜ。」

隆士「ほんと茶化すのが好きなんだから・・・ま、いいかただいま。」

栗崎さんは白鳥さんに代わりました。

梢「おかえりなさい。」

隆士「さっきの兎連の話は大丈夫だと思うよ。あの人冗談は好きでも嘘は嫌いとか言ってたから。」

珠実「それこそ何だか信じられないです〜・・・」

隆士「まぁね・・・それよりもさっきの事を朝美ちゃんに。」

理想奈「分かったわ。」

そう言って朱桜さんは朝美ちゃんの所に向かいました。

隆士「さてと、これで残る問題はここを知っているのが誰かって事だ。」

梢「白鳥さん達は十二支の事を知ってるんですよね?」

隆士「うん。」

珠実「とりあえずさっきあの女が言ってた七人に思い当たる節はあるですか?」

隆士「確か辺りに迷惑をかけない奴だよね?」

珠実「それが本当ならばですが。」

隆士「迷惑か・・・竜汪と鳥汐、猿治に兎連の他暗殺向きって言ったら・・・」

珠実「まぁそれは他の人にも教えた方がいいと思うのでみんなが揃った際にでも。」

隆士「そうだね。」

翼「んじゃ中に入るか。」

そして皆さん炊事場に入りました。













隆士「みんな揃ってるね。朝美ちゃんは大丈夫?」

朝美「うん、もう大丈夫だよ。」

朝美ちゃんも元気を取り戻し、この事件に関わった全員が炊事場に集まった。

灰原「んじゃ教えてくれ。お前が思うここを知ってそうな奴。」

隆士「はい。色々考えて思い当たった十二支、とりあえず鳥汐に兎連、捕まった猿治は外すとして・・・」

翼「回りくどく言わんでいい。」

隆士「そう・・・とりあえず一人は僕を狙ってきた竜汪に間違いない。」

梢「るおう・・・その人が白鳥さんを?」

隆士「うん。そして迷惑をかけないって事から暗殺向き、つまり人に知られない物を使っている誰かだと思うんだ。」

恵「物ってそいつら武器でも持ってるの?」

隆士「はい。全員違う物を。そこで思い当たったのは虎焔、蛇蒼、馬邨の三人だと思うんだ。」

沙夜子「その三人ってどんな人・・・?」

隆士「虎焔は格闘家で虎丈をやった奴らしいんです。おそらく素手で相手するのは虎丈以外無理だと・・・」

瑞穂「関わりたくないな〜・・・」

隆士「蛇蒼は服の袖に鎖分銅を忍ばせていて下手に絡まったら骨は確実に砕けるでしょうね・・・」

三千代「お、恐ろしい・・・ですわ・・・」

隆士「最後の馬邨は・・・あんまり戦い好きな性格じゃない。むしろ防御に向いてる方だと・・・」

梢「どうしてそんな人が・・・」

隆士「さぁね・・・ただ馬邨に傷をつけた事のある人は今まで誰もいない。だから誰かと一緒に組んで行動してる。多分今回は兎連とだと思うな。」

タチバナ「捕まった人、朝美お嬢様の友人となった者以外の五人の力量は。」

隆士「多分そこら辺の暴走族やチンピラが百人寄って集っても一人だけで全滅間違いなし。よく思えばこの五人は十二支の五強とも言われてるしな〜・・・」

灰原「また厄介な奴ばかり・・・」

隆士「その分自ら進んで何か仕出かそうとは思わない連中だからましだけどね・・・」

まひる「じゃあ他の五人は?」

隆士「他の五人か、あいつらは好んで戦いや人を殺すのが好きな奴だからな・・・この街に来たらどうなる事か・・・」

珠実「迷惑な話です〜」

虎丈(十分五強の時点で迷惑だがな・・・)

隆士(そうだよね。)

梢「でもその話でしたら狙ってくる事は・・・」

隆士「多分大丈夫だと・・・」

梢「よかった・・・」

梢ちゃんが安心したようにほっと息をついた。
ちょうどその時。

プルルル・・・プルルル・・・

遠くから電話の呼び出し音が鳴った。
梢ちゃんがすぐに向かいった。

恵「で、大丈夫なの君らだけで。」

隆士「どうでしょうかね〜・・・やるだけやっては見ますが・・・」

梢「白鳥さ〜ん。」

隆士「ん?」

梢「白鳥さんにお電話です。」

隆士「僕?」

梢「はい。女の人のようですが・・・」

誰だろ?
僕はそう思いながら電話のある場所に向かい受話器を取った。
その奥から聞こえてきた声は・・・

(もしもし隆。私。)

聞き覚えがある声・・・

隆士「もしかして・・・馬邨!?」

馬邨(そう。久しぶりね。)

電話の主は十二支五強が一人馬邨だった。

隆士「どうして君が、それよりどうしてここの?」

馬邨(電話帳で調べた。)

隆士「あそう・・・そう言えば電話帳さえ見ればここの住所や電話番号分かるもんね・・・」

馬邨(それよりも。牛凱がお前の居場所を突き止め向かってる。)

隆士「牛凱!?」

馬邨(私は争いは嫌いだけど他人のする事に口出しはしない主義だからな・・・ただ隆にだけ言っておこうって思ってね。)

隆士「あ、ありがとう・・・」

馬邨(それだけよ。じゃあね。)

そう言って彼女から一方的にきった。

隆士「相変わらずマイペース・・・」

僕も受話器を置き、みんなの所に戻った。

梢「電話の人、誰だったんですか?」

隆士「馬邨だった。牛凱がこっちに来てるって・・・」

梢「ええ!?」

恵「で、何だって電話なんか?それにぎゅうがいって誰?」

隆士「十二支の中で一番戦い好きな戦い馬鹿ですよ・・・多分どっかでここを知ったんでしょうね・・・」

梢「そ、それじゃあ今ここに・・・?」

隆士「向かってるって・・・退院したばかりなのに・・・」

虎丈(どうするよ。あいつ相手はちと厳しいぜ。)

隆士「そうなんだよな〜・・・牛凱の得物は虎丈の格闘術じゃいささか無理だし・・・」

神那(んじゃここは俺に任せてもらおうかね。)

隆士(それしかないね。)

そう思って僕は神那と交替した。

神那「んじゃいっちょ暴れ牛でも沈めに向かうか。」

梢「大丈夫ですか栗崎さん?」

神那「ん〜心配してくれるなんて嬉しいね〜それじゃ今夜一緒にね・・・」

ドゴン!!

神那「オブッ!?」

珠実「いい加減にするですよ〜・・・!!」

珠実ちゃんの九尾砕きがクリーンヒット・・・

隆士「た、珠実ちゃん・・・」

僕は自動的に交替せざるを得なかった・・・

珠実「おや?白鳥さんに戻っちゃいましたね。」

隆士「い、今ので神那は気を失ったよ・・・」

瑞穂「そ、それってやばくない・・・?」

隆士「間違いなく・・・」

珠実「あらら〜ごめんです〜・・・」

絶対反省してない・・・

恵「でもどうするの?栗崎クンが気を失ってたら白鳥クンか藍川クンになるわよね?」

確かにその通り・・・
いくら虎丈の格闘術が強力でもあいつの得物は・・・
かと言って僕がもう一度アレを振るうのも嫌だし得物も無い・・・

隆士「まいったな・・・」

虎丈(こうなったら俺で時間を稼ぐしかないだろ。)

隆士「それしかないか・・・」

僕は仕方なく虎丈と交替した。

虎丈「さてと、牛凱ははっきり言って馬鹿だからな。戦ったら辺りがまともな状態で残ってるかどうか・・・」

沙耶「それに今何処におるのかも知らないし・・・」

虎丈「今は五時半か・・・多分人がいないような場所にいるだろうな。」

梢「それはどうして?」

虎丈「あいつの獲物がそうさせるんだよ。とりあえず問題は場所だな・・・」

隆士(思い当たる節は無いし・・・楓さんに聞いてみたら?多分いるでしょ。)

虎丈「そうだな。楓さんいるか?」

楓「はい。」

呼ぶと炊事場の隅に楓さんが現れた。

朝美「忍者みたい・・・」

沙夜子「違うわよ・・・朝美・・・」

朝美「え?」

楓「どうやら賊はこの街の公園に向かってる様子です。」

虎丈「また公園かよ。まいいや、どうもね。」

楓「では。」

そう言って楓さんは素早く去った。

沙耶「何やねんあの人。」

まひる「何となくタチバナに似てるような・・・」

タチバナ「今のは・・・」

虎丈「よし、じゃあ俺は公園に行って来る。お前らはここに残ってるか家に帰るかどうでもいいが来るなよ。」

恵「当たり前よ。」

虎丈「じゃ、こいつを持って行くか。」

そう言って虎丈は神那の荷物を抱えた。

虎丈「何とか神那が目を覚ますまで俺で時間を稼ぐしかない。あいつが起きさえすりゃそれでオッケイさ。」

梢「あ、あの・・・」

虎丈「ん?」

梢「気を付けてくださいね・・・」

隆士(梢ちゃん・・・)

虎丈「心配するな。俺らは死ぬわけには行かないんだ。晩飯の用意して待ってろ。」

梢「はい。」

そう言って虎丈は炊事場を後にし鳴滝荘から出た。

虎丈(アレでよかったろ?)

隆士(うん・・・)

虎丈「急ぐぞ。あいつはやっかいだからな。」

隆士(分かってる。)

そう言って虎丈は公園に向かい走り出した。
いつか竜汪と戦う時が来るだろう・・・
僕がいくら虎丈から教わっても竜汪には勝てれるとは思わない・・・
だけどあいつは多分僕がやらなきゃいけないんだ・・・




同じ剣を振るう者としていつか・・・





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