ニの調


悲劇








梢「・・・?」

学校の帰り道、私は何かを感じた。
何かが心に刺さったような・・・
痛みに似たような・・・

珠実「どうしたです〜梢ちゃん?」

梢「え?」

花梨「ぼ〜っとしちゃってさ。」

珠実ちゃんと花梨ちゃんに話しかけられて私はまた歩き始めた。

花梨「にしてもお珠と梢の所に行くのも久しぶりね。」

浩子「ひあ〜そうだね〜」

梢「そうだね。」

もうすぐ期末テストがあるから、私と珠実ちゃん。
そしてヒロちゃんと弓道部員の花梨ちゃんと一緒に勉強する事にしました。

珠実「にしても〜珍しい組み合わせですね〜」

梢「そうだね。」

私達四人が揃うなんてよくよく思えば無いよね。
花梨ちゃんとはお昼を一緒に食べたり、ヒロちゃんは時々話し合ったりするけど。
みんな一緒ってのは初めてかな?

浩子「そう言えば梢ポン〜お姉さまはどうなの〜?」

梢「桃乃さんは元気だよ。」

浩子「ひあ〜」

花梨「ヒロはどうしてそんなにその人の事気にしてるの?」

梢「桃乃さんは沙夜子さんと一緒に去年の青華祭でヒロちゃん達のお手伝いをしてくれたんです。」

花梨「あ〜噂になってる管弦楽を救った謎のヒロインの事?」

梢「そうです。」

浩子「ひあ〜早く会いたいよ〜」

梢「焦らない焦らない。あら?」

歩いていると前に朝美ちゃんがいました。
そして他には・・・

朝美「み・・・みっちゃん・・・」

三千代「大体あなた達はクロスケさんの何なんですの!?」

沙耶「よしぃや・・・」

まひる「・・・」
タチバナ「・・・」

朝美ちゃんのお友達のお二人とまひるちゃんとタチバナさんがいました。
何やら険悪なムードで・・・

梢「どうしたの朝美ちゃん?」

朝美「あ、お姉ちゃん・・・実はね・・・」

まひる「私と朝美は伯母と姪の関係だ。」

三千代「そんな事を聞いてるんじゃありませんの!!」

沙耶「聞いとったやん・・・」

朝美「一緒に帰ってたら偶然まひるちゃんとタチバナさんに会って・・・それから・・・」

珠実「なるほど〜」

花梨「知り合い?」

梢「うん。」

朝美「みっちゃんも落ち着いてって。まひるちゃんは私の・・・」

恵「おや〜何かにぎやかじゃない。」

遠くから桃乃さんと沙夜子さん、灰原さんがやってきました。

浩子「ひあ〜お姉さま〜〜〜!!」

恵「お、久しぶりじゃない。」

浩子「お姉さま〜お体大丈夫ですか〜?」

恵「大丈夫よ。」

梢「どうしたんですか一体?」

恵「それがさ〜・・・沙夜ちゃんが朝美ちゃんの迎えに行くって言って出かけたんだけど・・・」

灰原「こいつ迷子になったらしくてよ・・・」

沙夜子「・・・」

恵「探しに行こうとした時バラさんが妊婦一人に行かせるわけにはとかで一緒に来たのさ。」

朝美「そうだったの・・・すいません・・・」

沙夜子「朝美ぃ〜・・・」

まひる「姉さま・・・」

沙夜子「あら・・・まひる・・・」

沙耶「何やこの二人姉妹やったんかい。」

まひる「さっきからそう言ってる。」

浩子「ひあ?もしかしてお姉ちゃんがメイドをしてるお屋敷の?」

タチバナ「サクラの妹か。」

浩子「いつも姉がお世話になってます〜」

梢「な、何だかにぎやかになって来たね・・・」

珠実「さっさと鳴滝荘に行くです〜」

梢「う、うん・・・」

珠実ちゃんにせかされ鳴滝荘に向かおうとしました。
でも・・・

理想奈「朝美ちゃんだ〜〜〜〜〜〜!!」

朝美「ええ!?」

突然白鳥さんのご友人の三人がやって来ました。
さらににぎやかになりました・・・

瑞穂「お久しぶりです。」

梢「そうですね。白鳥さんは?」

瑞穂「白鳥君はさっき別れたから戻ったんじゃありませんか?」

灰原「んじゃ早く帰らなきゃナ。出てくる時鍵かけて来たからよ。」

梢「そうですね。」

理想奈「それじゃみんなでGO!!」

恵「へ?」

瑞穂「あ〜この子ね・・・さっき白鳥君から黒崎さん親子の事聞いて内職手伝うって言う事聞かなくて・・・」

翼「白鳥に明日手伝っていいかってのを聞くはずだったんだけど・・・」

朝美「あ、ありがとうお姉ちゃん・・・」

三千代「同情されるなんて惨めですわねクロスケさん。まぁこの私に忠誠を誓えば・・・」

翼「よせっての・・・」

三千代「う・・・」

翼「そんなんじゃいつまで経ってもガキのままだぜ。」

三千代「ふ、フンだ!!すぐにムチムチプリリンになってやるんだから!!」

沙耶「ほぉ〜・・・この人があんたの彼氏か。」

瑞穂「相変わらず仲いいね。」

理想奈「エローリ〜」

朝美「つ、付き合ってるなんてみっちゃん・・・お、大人だね・・・」

翼「どうだっていいだろ。」

三千代「そ、そうですわよ!!」

浩子「ひあ〜・・・何だか蚊帳の外〜・・・」

花梨「私らキャラ薄いからね・・・」

沙夜子「ごはん〜・・・」

恵「こりゃま〜ややこしい事になってきたわね〜」

梢「ええ・・・」

珠実「ほっといてさっさと鳴滝荘に帰るです〜」

梢「う、うん。」

また珠実ちゃんにせかされ鳴滝荘に向かう事にしました。

恵「まさかとは思うけど・・・」

その時桃乃さんが皆さんにある事を尋ねました。

恵「ここにいる全員鳴滝荘行き?」

花梨「はい。」
浩子「ひあ〜」
沙耶「そのつもりです〜」
三千代「私もそのつもりですわ。」
まひる「悪いか?」
タチバナ「・・・」
理想奈「勿論!!」
瑞穂「この子がどうしてもって事で・・・」
翼「お世話になりまっす!!」

梢「え?え?」

えっと・・・全部で十五・・・あ、白鳥さん入れて十六人・・・
ご夕食の材料足りるかしら・・・?
そんな事を考えながら私達は鳴滝荘に向かいました。
その途中公園に近づいた時・・・

タチバナ「・・・!!」

タチバナさんが突然立ち止まりました。
私達はみんな歩くのを止めタチバナさんを見ました。

まひる「どうした?」

タチバナ「血の臭いが・・・」

恵「へ?」

初めはタチバナさんが何を言ってるのか分かりませんでした。
でも・・・

ドクンッ・・・

私は何かを感じていた・・・

ドクンッドクンッ・・・

張り裂けそうなほど心臓が鼓動してる・・・
苦しくなり私は右手で左胸を握りしめた・・・
何かがここで・・・

珠実「梢ちゃん大丈夫ですか〜?」

梢「え?」

浩子「梢ポン苦しそうだよ?」

梢「だ、大丈夫だよ・・・」

そうは言ったけれど・・・

ドクンッドクンッドクンッ・・・!!

まだ心臓は大きく鼓動してる・・・
苦しい・・・

朝美「お姉ちゃん!?」

苦しくなり、私は遂にその場に座り込んだ・・・

恵「こ、梢ちゃん!?」

珠実「梢ちゃん!!」

梢「はぁ・・・はぁ・・・!!」

タチバナ「すぐにここを離れた方が・・・」

翼「お、大家さん大丈夫ですか!?」

みんなが私の心配をしてる・・・
珠実ちゃんが私を立たせてくれた・・・

珠実「急いで帰るです!!」

灰原「お、おう!!」

珠実ちゃんが私を抱えて走ろうとする・・・
でも私は・・・

梢「って・・・!!」

珠実「!?」

梢「ま・・・って・・・!!」

珠実「梢ちゃん・・・?」

私の声が届いたのか・・・珠実ちゃんは私を降ろした・・・

梢「私・・・行く・・・」

朝美「い、行くって?」

珠実「まさか梢ちゃん・・・」

梢「私・・・」

珠実「駄目です!!」

公園の入口に体を向けると珠実ちゃんが前に立つ・・・

梢「珠実ちゃん・・・」

珠実「いくら梢ちゃんでも・・・駄目ったら駄目です!!」

初めてかな・・・こんなに怒ってる珠実ちゃんを見るのは・・・

恵「何があるか知らないんだし、すぐに帰った方が・・・」

朝美「お姉ちゃん・・・」

灰原「梢・・・」

みんなが私を止めようとしてる・・・
私だってこの奥に何があるか分からない・・・
そして近づこうとすればするほど・・・
苦しくなっていく・・・
知ってはいけないような事なのかな・・・?
知らない方がいいのかな・・・?
だけど・・・

梢「・・・ごめん!!」

珠実「あっ!!」

私は公園に向かい走り出した・・・

珠実「梢ちゃん!!」

花梨「梢!!」

後ろからみんなの声がする・・・
もしかして追って来てる・・・?
そうだとしても・・・私は走る・・・
この先に何があるのかを知る為に・・・

梢「!?」

公園内を走ってると何かを見つけた・・・

梢「これ・・・」

それは明らかに白鳥さんの鞄でした・・・
でもどうしてこんなボロボロに・・・
それに・・・そこには赤い液体が・・・
これは・・・血・・・

梢「も、もしかして・・・!!」

私はとても不安になり、何処かへ続いてる血の跡を辿りました・・・

ドグンッドグンッドグンッ!!

血の跡を辿ってると先程よりも心臓が・・・
苦しい・・・

梢「はぁはぁ・・・はぁ・・・!!」

既に息は上がっていて・・・
もう走れそうにもありませんでした・・・
何度も何度も気持ち悪くなり吐きそうにもなりました・・・
でも私は走り続けました・・・
この先の何かを知る為に・・・

梢「はぁはぁ・・・はっ!?」

そして私は遂に見つけました・・・
少し先に倒れている・・・
血塗れの人を・・・

梢「はぁ・・・はぁ・・・」

私はその人の近くによりました・・・
そしてそのお顔を見ました・・・
それは明らかに・・・

梢「白鳥さん・・・」

白鳥さんでした・・・

梢「う、嘘ですよね・・・?」

信じる事が出来ず・・・私は少し後ずさりし、座り込んだ・・・

梢「嘘ですよね・・・白鳥さんが・・・白鳥さんが・・・」

絶望感が私を襲う・・・

梢「白鳥さんが・・・しら・・・とりさ・・・んが・・・」

目の前が真っ白になる・・・









恵「はぁ・・・はぁ・・・ま、待ってよ!!」

あたし達は梢ちゃんの後を追っていた。
だけど身重のあたしはそう早くは走れない。

珠実「もう桃さん!!置いてくです!!」

恵「うっさいわね!!」

それでもあたしも出せるだけの力を出して走った。

浩子「梢ポン大丈夫かな・・・」

花梨「大丈夫に決まってるでしょ!!でなきゃ嫌よ!!」

タチバナ「・・・この先から血の臭いがします・・・!!」

まひる「タチバナ・・・」

タチバナ「はっ!!」

殺し屋ブラザーズは兄の方がちっこいのをおんぶして走ってる。
あたしもおんぶしてよ・・・

灰原「ま、待ってくれ〜!!」

沙夜子「うぅ〜・・・」

後ろではバラさんが沙夜ちゃんを背負ってる・・・
ばてるの早・・・

珠実「こ、これは!?」

そんな事思ってると一番前を走ってた珠ちゃんが何かを見つけた。

瑞穂「こ、これ白鳥君の!!」

それはボロボロの白鳥君の鞄だった。
そして・・・

朝美「な、何これ・・・?」

その辺りに広がってる赤い液体・・・
それは血だった・・・

三千代「な、何なんですの!?」

翼「こ、これ血じゃないか!?」

沙耶「そ、それじゃまさか!?」

一番嫌なパターンが頭を過ぎる・・・

理想奈「そんな事無いわよ!!白鳥くんに限って!!」

珠実「当たり前です!!」

すぐにあたし達はまた走り出した。
鞄のあった地点から血の跡が続いていてそれを辿った。
そして走ってると梢ちゃんの後姿が見えた。

珠実「梢ちゃん!!」

一足先に珠ちゃんが梢ちゃんの所に向かった。

珠実「梢ちゃん!!梢ちゃん!!」

梢「・・・そ・・・らと・・・んが・・・」

あたしも梢ちゃんに近づいたけど・・・
梢ちゃんの目に輝きは無く、ただの廃人の様にも見えた。

珠実「一体どうし・・・!!」

珠ちゃんが梢ちゃんの目線の先を見て驚いていた。

恵「どうしたのよ・・・!?」

あたしもそれを見てしまった・・・
血塗れの・・・白鳥クンを・・・

朝美「お姉ちゃんだいじょ・・・!!」

翼「やっと追い・・・!!」

そこに朝美ちゃんと白鳥クンの友人達が到着した。

瑞穂「し、白鳥君!?」

理想奈「う、嘘よ・・・白鳥くんが・・・白鳥くんが・・・!!」

それから他の人も到着はした・・・
ただ白鳥クンにはまだ気付いてなかった。

三千代「一体どうしたのですの?」

翼「見るな!!」

三千代「きゃっ!!」

彼が朝美ちゃんの友達を抱き寄せて目を塞いだ。

理想奈「白鳥くんが・・・白鳥くんがそんな・・・うっ!!」

瑞穂「理想奈!!」

そして変わり果てた白鳥クンの姿を見た眼鏡の子がその場にうずくまり吐き出した。

瑞穂「理想奈しっかり!!理想奈!!」

朝美「そ、そんな・・・お兄ちゃ・・・」

沙耶「朝美ぃ!!」

沙夜子「朝美・・・!!」

まひる「朝美!!」

そして朝美ちゃんも気を失って倒れた・・・
二人もこんな事になり、他の人も何が起こってるかに気付いたみたい・・・

恵「みんなすぐに鳴滝荘に!!」

浩子「で、でも梢ポンが!!」

珠実「梢ちゃんは私が連れて行くです!!」

花梨「頼むよお珠!!」

そして珠ちゃんは梢ちゃんを抱きかかえ、友達二人と一緒に鳴滝荘に向かった。

まひる「タチバナ!!」

タチバナ「はっ!!」

殺し屋ブラザーズ兄はちっこい方を降ろして朝美ちゃんを抱きかかえた。

瑞穂「すいません!!この子も!!」

タチバナ「お嬢様・・・」

まひる「・・・」

タチバナ「はっ!!」

目で会話したようで眼鏡の子も抱きかかえて殺し屋ブラザーズは鳴滝荘に向かった。

翼「俺が警察に言っておく!!お前はこいつを!!」

瑞穂「う、うん!!」

翼「絶対見るなよ!!」

三千代「え、ええ!!」

沙耶「行くで!!」

沙夜子「朝美・・・」

灰原「行くぞ!!しっかり掴まってろ!!」

そしてみんな鳴滝荘に向かい、そこにはあたしと彼・・・
そして白鳥クンがいるだけだった・・・

翼「俺はここに残って白鳥の容態を診てるッス!!お姉さんはみんなの事を・・・!!」

恵「い、いいの!?」

翼「早く!!」

恵「う、うん!!」

そして私も鳴滝荘に向かった・・・













恵「みんな・・・大丈夫・・・?」

・・・
話しかけも返答がない・・・
重い空気が圧し掛かる・・・

恵「朝美ちゃんとあの子は?」

三千代「クロスケさんはお部屋に・・・今お母様とあの二人が付きっきりで診てますの・・・」

瑞穂「理想奈は・・・白鳥君の部屋を借りました・・・大部落ち着きましたが・・・もうちょっと安静が・・・」

恵「そう・・・」

瑞穂「すみません・・・」

恵「いいのよ、困った時はお互い様。」

あたしは明るく振舞ったけど・・・やっぱり辛い・・・
あたし達は炊事場にいる・・・
ここには朝美ちゃんの友達の二人・・・白鳥クンの友達のショートヘアーの子、そしてバラさんとあたしに梢ちゃんの友達の二人だけ。
珠ちゃんは梢ちゃんを部屋に送ってって戻ってこない・・・

灰原「一体何があったってんだ・・・?」

瑞穂「白鳥君がどうして・・・」

恵「それよ。どうして白鳥クンがあんな目に遭わなきゃいけないのか?」

沙耶「無差別とちゃうんですか?」

三千代「それだったら何故あそこまでやるのですの!?」

沙耶「うちに分かるかいな!!」

花梨「やめなさい!!」

三千代「・・・」
沙耶「・・・」

灰原「考えられる事はいくつかある。一つは今言ったように無差別か・・・もう一つは最初から白鳥を狙ってたか・・・」

浩子「それだとどうしてですか?」

灰原「さぁな。これが一番の有力線だったらあいつが何かを知って・・・」

恵「殺されたっての?」

灰原「あくまで可能性だ。」

恵「白鳥クンに何が・・・」

そんな事を話してると珠ちゃんが戻ってきた。

花梨「梢は!?」

珠実「・・・」

珠ちゃんは何も言わず首を横に振った。

珠実「意識はあるのですが・・・呼びかけても何も・・・」

浩子「ひあ〜・・・」

珠実「このままだとまた・・・」

灰原「だろうな・・・」

沙耶「何の事です?」

珠実「何でもないです・・・」

あたしには分かった・・・
このままじゃまた梢ちゃんは・・・
ただでさえ自分以外に四つも人格がある・・・
もしかしたら人格崩壊もあるかもしれない・・・

恵「白鳥クン・・・」

瑞穂「・・・翼が戻ってくればまた何か分かるかもしれないけど・・・」

三千代「翼さん・・・どうしたんでしょう・・・」

恵「彼は白鳥クンの容態を診るって言ってたわ・・・だから多分警察に事情を話してるか一緒に病院に行ったか・・・」

「いや、もう戻ってるッスよ。」

扉の方から声がした。
そこには彼がいた。

瑞穂「翼!!白鳥君はどうなの!?」

疲れた様子で彼は壁に寄りかかった。

翼「・・・傷は鋭利な刃物・・・刀とかの類の物で付けられた物らしい・・・」

恵「それじゃ・・・」

翼「警察も脱帽物だったってよ・・・ありゃそん所そこらの輩が出来る物じゃない・・・ってな・・・」

珠実「では・・・プロ?」

翼「俺が知ってるのはこれくらいだ・・・今警察が必死こいて調べてるよ・・・」

恵「・・・」

翼「でも・・・一つだけ救いなのは・・・」

瑞穂「え・・・?」

翼「まだ・・・希望はあるって事だな・・・」

恵「そ、それって!!」

彼の言葉の意味・・・
それってもしかして・・・

翼「あいつ・・・まだ生きてるぜ・・・」

恵「ほ、本当なの!?」

翼「ああ・・・」

その言葉を待っていた・・・
白鳥クンはまだ生きているんだって・・・
これで梢ちゃんも元気になるわ・・・

花梨「でもプロの手による物だったんなら・・・」

浩子「ひあ?」

花梨「なおさらあの人が襲われた理由が分からないわ・・・」

その言葉でまた悩んだ・・・
確かに生きてる事は嬉しいけど・・・
どうして彼が狙われたのか・・・

翼「・・・白鳥が戻ったらにしよう・・・その話は・・・」

瑞穂「アンタ・・・」

翼「良く分かんないけどよ・・・変わった医者みたいな人がいたんだ・・・『すぐに治せる。明日には完全に怪我を治してそのアパートに送ろう』って言ってた・・・」

灰原「何だか胡散臭そうな話だナ・・・」

翼「俺だってそう思ったさ・・・だけど俺には信じるしかなかった・・・それしかなかったんだ・・・」

恵「そうよね・・・あたしがそこにいたら同じだと思う・・・」

珠実「・・・」

恵「珠ちゃん・・・」

珠実「例え生きていても・・・私は白鳥さんを許す事は出来ません・・・」

花梨「ちょ、お珠・・・」

珠実「どんな理由があれ、梢ちゃんを悲しませた白鳥さんを私は・・・!!」

恵「・・・」

あたしに珠ちゃんをなだめる事は・・・出来なかった・・・
正直あたしも同じだったから・・・
生きてるなら嬉しいけど・・・
梢ちゃんを悲しませた白鳥クンに・・・
少しの怒りを覚えていたから・・・

珠実「・・・私、明日学校休むです・・・」

花梨「お珠・・・分かったわ。梢の事頼むね。」

浩子「ひあ〜・・・」

翼「瑞穂、お前も明日は休めよ。」

瑞穂「でも・・・」

翼「先生には俺が言っておく。理想奈の事・・・頼むな。」

瑞穂「うん・・・」

沙耶「うちらは学校行こう・・・朝美の事言わなあかんし・・・」

三千代「ですが・・・」

沙耶「大丈夫やて・・・あの子にはお母さんもおるし、頼りになりそうなのもおるし。」

三千代「・・・」

灰原「気をつけて帰れよ・・・」

浩子「はい・・・」

そして大体の人が帰っていった・・・
残ってるのはあたしら鳴滝荘の住人に殺し屋ブラザーズ、白鳥クンの友人の女の子二人・・・

恵「どうして・・・こんな事になったんだろう・・・」

灰原「・・・あいつが全て知ってるダロ・・・」

恵「あいつ・・・?」

灰原「白鳥サ・・・」

恵「・・・そうね・・・」













「終わったぞ・・・」

「そうですか・・・」

「すまないな・・・お前達に重荷を背負わせる事になって・・・」

「いいですよ・・・あの三人については・・・?」

「いずれ分かるだろう・・・それまで・・・」

「分かりました・・・それと・・・」

「?」

「ありがとうございます・・・僕にまた・・・時間をくれて・・・」

「そうか・・・」













恵「ん〜・・・もう朝なの・・・」

昨日の事件から一夜明けた・・・
あたしは自分の部屋の布団から起き上がり外に出た・・・

恵「・・・」

あたしは管理人室に向かった・・・

恵「入るよ〜・・・」

一応ノックして管理人室に入った。
そこには布団の上で放心状態のまま座ってる梢ちゃんと・・・
梢ちゃんの前に座ってる珠ちゃんがいた・・・

恵「どう・・・?」

珠実「・・・」

珠ちゃんは何も言わなかったけど・・・
昨日と変わらないって事がすぐに分かった・・・

恵「進展無し・・・か・・・」

珠実「・・・」

恵「白鳥クンが生きてるって話したの?」

珠実「勿論です・・・」

恵「梢ちゃん・・・」

梢「・・・」

あたしが話しかけても梢ちゃんに反応は無かった・・・

恵「こりゃ白鳥クンが戻ってこない限り駄目ね・・・」

珠実「私じゃ・・・駄目なんでしょうか・・・」

恵「珠ちゃん・・・」

珠実「私じゃ梢ちゃんを・・・梢ちゃんを・・・!!」

恵「・・・大丈夫よ・・・」

あたしは珠ちゃんを抱きしめた。

恵「大丈夫だから・・・梢ちゃんは大丈夫だから・・・だから泣かないの・・・」

それから珠ちゃんが落ち着くまであたしは珠ちゃんを抱きしめた。





恵「さてと・・・朝美ちゃんとあの眼鏡の子はどうなのかしらね・・・」

そう思って歩いてるとショートヘアーの子がやって来た。

瑞穂「あ、おはようございます。」

恵「おはよう。えっと・・・」

そう言えばあたしこの子の名前知らないっけ・・・

瑞穂「瑞穂です。土神瑞穂。」

恵「ごめんね・・・瑞穂ちゃんは大丈夫なの?」

瑞穂「ええ・・・理想奈の方も落ち着いたらしくて今はよく寝ています。」

恵「学校の方はいいの?」

瑞穂「翼が行ってますから・・・それよりもすいません・・・私達を泊めてくださって・・・」

恵「いいのよ。家族には言ったの?」

瑞穂「ええ。ちゃんと彼女の家にも・・・」

恵「そう・・・ならいいわ。あたし朝美ちゃんとこに行くけど・・・一緒に行く?」

瑞穂「あ、はい。」

あたしは彼女、瑞穂ちゃんと五号室の前に来た。

恵「入るわよ。」

あたしは扉を開けた。

瑞穂「うわっ凄い段ボール・・・」

見た事も無いような数の段ボールを見て瑞穂ちゃんは引いていた。

まひる「どうした?」

恵「朝美ちゃんどうなの?」

まひる「大丈夫だ。今は落ち着いて眠っている。」

恵「そう、良かったわ。所でアンタ学校は?」

まひる「学校今日休む。父様にも母様にも了解得た。」

恵「ま、いいけどさ。」

瑞穂「これで残る問題は・・・大家さんね・・・」

恵「梢ちゃんは・・・」

あたしはみんなに梢ちゃんの容態を言えなかった・・・

瑞穂「そうですか・・・所でテレビあります?」

恵「ん?あたしの部屋にあるわよ。」

あたしの部屋はあたしがいた頃とそっくりそのまま。
今でもここ唯一のテレビがある場所になってる。

瑞穂「昨日の事、もしかしたらニュースでやってるかもしてません。」

恵「そうよね。一緒に来てくれる?」

瑞穂「はい。」

恵「沙夜ちゃん達は?」

沙夜子「私・・・ここに・・・」

まひる「私もだ。」

タチバナ「お嬢様方がおられるのであれば・・・」

恵「分かったわ。」

と言う事であたしら二人はあたしの部屋でテレビを見る事にした。

(それでは次の事件です。昨日夕方頃東京都港区で起こった傷害事件で、警察は今も・・・)

ちょうどその事件の事をやっていた。

瑞穂「・・・」

(なお、今だ犯人についての手掛かりは見つからず、警察では今後現場の公園を重点的に捜査すると・・・)

恵「これだと・・・犯人見つからないかもね・・・」

瑞穂「ええ・・・」

あたしは警察の動きにちょっと怒りを覚えた・・・
白鳥クンをあんな目に遭わせ、梢ちゃんを苦しめた犯人を・・・
見つけるどころか犯人がどんな奴なのかさえほとんど知らない警察を・・・

恵「白鳥クン・・・早く帰ってこないのかな・・・」

瑞穂「そうですね・・・」





そう思いながら・・・あたし達はずっとテレビを見続けた・・・





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