あの日々を・・・今もよく覚えてる・・・



それは僕自身を大きく変え・・・



そしてみんなの心にも深く残っている・・・



人はいつか忘れるだろうこの出来事を・・・



だけど僕達には違う話・・・



死と隣り合わせだったあの日々を・・・



僕らは決して忘れる事は無いだろう・・・









下弦の月の調


一の調


悪夢再び













月明かりの下の暗闇に僕と一人の男がいた。

(知ってしまったからには死んでもらわなければな。)

(そ、そんな・・・!!)

(そうだろう。知ったお前達が悪いのだ。)

男はそう言って僕に銃口を向けた。

(い、いやだ・・・!!どうして僕らが!!)

(何度も言わせるな・・・お前達は知ってはならぬ事を知った・・・それだけだ・・・)

男の指が引金に掛かる。

(それだけ・・・それだけで人を・・・!?)

(それで十分だ。人を殺すのにはな。)

(あ・・・あ・・・!!)

(さらばだ・・・)

そして男は引金を・・・











隆士「うわぁっ!!」

ガバッ!!

鳴滝荘の二号室、僕は目を覚ました。

隆士「はぁ・・・はぁ・・・!!」

カーテンの隙間から光が射している。
いつもと変わらない朝、違うのは僕の状態だった。

隆士「一年振りか・・・またあの夢を見るなんて・・・」

僕の服は汗でぐっしょりと濡れていた。

隆士「シャワーでも浴びてこよう・・・」

そう思って着替えとタオルを持った。
その時ある事を思い出した。

隆士「あ、確か今シャワー壊れてたんだっけ・・・」

昨日の夜、梢ちゃんが言っていた言葉。

梢(すみません、シャワーは壊れちゃったみたいで・・・)

隆士「しょうがない・・・タオルで拭くだけにしよう・・・」

タオルで拭くだけにして汗で濡れたTシャツとズボンを脱ぎ、トランクスだけになった。

隆士「帰ったらすぐに風呂に入ろう・・・とりあえず今は体を拭いて、朝ご飯を食べて・・・ん?」

僕はその時時計を見てある事に気付いた。

隆士「と、時計が・・・」

時計は四時で止まっていた。
日差しからすれば七時は過ぎていると思われる。

隆士「わ、わぁぁぁぁーーーーーー!!」

時間を確かめる為部屋を飛び出し、炊事場に向かった・・・











朝美「あぁーーーーー!!」

白鳥さん以外の皆さんがそろった炊事場に朝美ちゃんの声が響きました。
朝美ちゃんは何かを見て驚いていました。

梢「朝美ちゃんどうしたの?」

朝美「お兄ちゃんのお茶碗が・・・!!」

朝美ちゃんの手には私が白鳥さんに買ったしょくパンダのお茶碗がありました。
ですが・・・

梢「欠けてる・・・」

白鳥さんのお茶碗は欠けていました。

恵「あら〜・・・これって梢ちゃんと白鳥クンが初デートの時に買った奴じゃない。」

珠実「本当です〜」

恵「沙夜ちゃん・・・がやったにしてもチョコッとだけね。」

沙夜子「・・・」

沙夜子さんが『私じゃない』って眼で私を見ました。

梢「疑ってませんよ。何かの不意に欠けてしまったんでしょうね。」

沙夜子「・・・」

灰原「しかし・・・茶碗が欠けるなんざ、こりゃ何か不吉だな。」

恵「そ〜ねぇ〜・・・白鳥クンって結構不幸だし・・・」

梢「も、桃乃さん・・・」

私は桃乃さんの一言が耳に残り、大丈夫ですよね?って聞こうとしました。
その時。

ドッドッドッドッドッドッ!!

炊事場に近づく足音が聞こえました。

恵「おや、噂をすれば白鳥クンね。」

バダンッ!!

勢い良く扉が開きました。
そこには・・・

隆士「と、とととと時計時計!!」

とても慌てた様子の白鳥さんがいました。
・・・トランクス一枚の姿で・・・

朝美「お、お兄ちゃん!!」

隆士「あ、朝美ちゃん!!今何時!?」

朝美「し、七時二十分だよ!!」

朝美ちゃんは両手で顔を隠し、白鳥さんに背を向けました。
かく言う私も顔が真っ赤になっているのが良く分かります・・・

隆士「よ、良かった・・・まだ朝食は・・・」

珠実「し〜ら〜と〜り〜さ〜ん〜・・・!!」

珠実ちゃんがとても怒った様子で白鳥さんに近づいて行きました。

隆士「どうしたのたま・・・み・・・ちゃ・・・!!」

白鳥さんは自分が今どんな状況なのか気付いたようです。

隆士「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

そのまま走ってご自分のお部屋に戻ったようです。
遠くから扉を閉める音が響きました。

恵「朝からまた・・・どうしたのかしら?」

灰原「時計がどうとか言ってたナ。」

梢「・・・」

珠実「大丈夫ですよ〜梢ちゃん〜」

梢「う、うん・・・」

そうは言った物も・・・私の顔はまだ赤いまま・・・

朝美「・・・」

そして朝美ちゃんも・・・











隆士「はぁ・・・」

部屋に戻った僕は服を着てまた炊事場に向かった。
だけどその足取りは重い・・・

隆士「あんな姿を見せちゃうなんて・・・僕ってばほんと・・・」

激しく落ち込みながら僕は炊事場に入った。

梢「あ・・・」
朝美「あ・・・」

朝美ちゃん以外のみんなが僕の方を見る・・・
そりゃあんな格好見たからか・・・

隆士「あ、そ、その・・・お、おはよう・・・」

梢「お、おはようございます・・・白鳥さん・・・」

梢ちゃんの顔が真っ赤だ・・・
さっきのアレを梢ちゃんが見たって思うと僕も顔が赤くなる・・・
そして珠実ちゃんからは異様な殺気を感じる・・・

恵「ま、さっきはどしたのよ白鳥クン?」

珠実ちゃんの気配に気付いたのか、桃乃さんが話し掛けて来た。

隆士「久しぶりに嫌な夢を見て・・・起きたらいっぱい汗かいてて・・・」

恵「なるほどね・・・シャワーを浴びようとしたけど壊れてるから・・・」

隆士「はい・・・」

珠実「それとトランクス一枚で来るのと何の関係が〜・・・?」

隆士「う・・・」

珠実ちゃん・・・相当怒ってるな・・・
そりゃ梢ちゃんにあんな格好見せちゃったからな・・・

隆士「時計が・・・止まってて・・・」

恵「なるほどね〜時計が止まってちゃ〜しょうがないわね。」

隆士「すいません・・・」

梢「あ、あの・・・ご飯・・・」

隆士「あ、うん・・・」

遅刻したら折檻が待つのみ・・・
僕はすぐにご飯を食べだした。

隆士「あれ?この食器・・・」

僕が持ってる食器はいつものしょくパンダじゃなかった。

朝美「あ、あのね・・・」

朝美ちゃんがまだ顔を赤くしたまま僕に話しかけた。

朝美「お、お兄ちゃんの食器・・・欠けてて・・・」

隆士「そうなの?」

梢「え?あ、その・・・はい・・・」

梢ちゃんがすまなそうな顔をして下を向いた。

隆士「別に梢ちゃんのせいじゃないでしょ?落ち込まなくても・・・」

梢「でも・・・」

珠実「そうですよ〜こんな露出狂のスケベキングの事なんか気にしなくて十分です〜・・・」

た、珠実ちゃん酷い・・・
でもしょうがないか・・・

恵「まぁいんじゃない?どうせ二人がそんな格好を見るようになるのもそう遠くないんだしさ〜」

隆士「ほあっ!?」
梢「ええっ!?」

二人同時に声を上げてしまった。
そして揃って顔が赤く・・・

恵「だって白鳥クン19でしょ?で、梢ちゃんは17。もう結婚出来るじゃない。」

隆士「そ、そんな!!僕達はそんな・・・!!」

梢「は、話が早すぎますよ桃乃さん!!」

恵「にゃははは!!早く結婚したらいいのよ。あたしよりもね。」

あ、そうか。
そう言えば桃乃さんはもう・・・





僕がここに来てから二度目の夏が来ようとしている・・・
そんな六月のある日、フランスに行った桃乃さんから電話があった。

恵(あ、白鳥クン?あたしあたし。)

隆士(桃乃さん?お久しぶりです。どうしたんですか?)

恵(あたし近々そっちに帰るんだ。)

隆士(そうなんですか?)

恵(でさ、あたしの部屋・・・まだ空いてるよね?)

隆士(はい・・・それが?)

恵(梢ちゃんに言っといてくれない?ちょっとの間、またやっかいになるって。)

隆士(帰ってくるって日本じゃなくてここにですか!?)

恵(当たり前じゃない。それとも一つ・・・)

隆士(なんです?)

恵(あたしね・・・できたんだ・・・)

隆士(何がです?)

恵(相変わらず鈍いわね・・・女の子が出来たって言ったら・・・)

隆士(え・・・ま、まさか・・・)

恵(順調に育ってるわよ。あたしの中でね。)

隆士(ええ!?)

恵(まだ性別は分かんないけど・・・みんなには言っておこうって思ってさ。)

隆士(おめでとうございます!!)

恵(ありがとね。そっち行ったら盛大に頼むね。)

隆士(はい!!)

僕はすぐにみんなに報告した。
僕が言うと梢ちゃんは喜び、珠実ちゃんはちょっと冷やかし、朝美ちゃんは顔を真っ赤にしていつもの反応。
沙夜子さんは無反応に近かったけどちゃんとおめでとうって言ったし、灰原さんもちょっと驚いていた。
それから少し経って桃乃さんは帰ってきた。
そしてその日に鳴滝荘で盛大にお祝いをした。
何処から聞いたのか、そこには翼君達や梢ちゃんの学校の管弦楽同好会の人達。
果ては阿甘堂のお姉さんや桃乃さんのクラスメイトって言うカップルも来て大いに賑った。
もちろんお酒は抜きで・・・

恵(何でお酒無いのよ〜!!)

隆士(子供がいるんですから我慢してください。)

恵(分かったわよ・・・)

梢(その代わりですが・・・これで我慢してください・・・)

そう言って梢ちゃんはカラダ・バランス飲料DAKEDOを渡した。

恵(ありがとね。梢ちゃんも早くこうなるといいね。)

梢(え!?そ、そんな・・・!!)

隆士(相変わらず茶化すのが好きですね桃乃さ・・・あ。)

恵(どしたの?)

隆士(結婚したからもう桃乃さんじゃ無いんですよね・・・)

恵(気にしなくていいわよ。紫羽だろうと桃乃だろうとあたしはあたし。今まで通りでいいわよ。)

隆士(そうですか。僕もその方が楽なので・・・)

恵(早く梢ちゃんを幸せにするのよ。)

隆士(へぇっ!?)





それから一ヶ月、桃乃さんは夏の間こっちにいる事になり鳴滝荘に前のようなにぎやかな声が響き始めた。
お酒がなくなった分前よりは静かかな?

梢「あの白鳥さん・・・学校の方・・・」

隆士「え?ああ!!」

思い出に耽っていると気付けば八時五分・・・

隆士「わわわわわっ!!」

僕はご飯とお味噌汁を一気に食べ、部屋に戻った。

隆士「急がないとまた折檻が・・・!!」

銀先生の折檻を喰らいたくない一心で一分以内に学校へ行く準備を済ませた。

梢「大丈夫ですか?」

隆士「うん・・・」

朝美「今日のお兄ちゃん・・・ついてない事ばっかりだね。」

隆士「ま、いいさ。」

梢「それじゃ行って来ますね。」

恵「あいよ。行ってらっしゃい!!」

そして僕と梢ちゃん、珠実ちゃんと朝美ちゃんは鳴滝荘を出た。











翼「お、白鳥。」

瑞穂「おはよう白鳥君。」

隆士「お、おはよう・・・」

何とか学校に間に合い、教室に入り席に近づくと三人が話しかけてきた。

理想奈「あれ?やけに疲れてない?」

隆士「ま、色々あってね・・・」

翼「色々って何だよ?もしかして人に言えないような事か?」

隆士「そうじゃないけど・・・」

瑞穂「とりあえず座ったら?」

隆士「うん・・・」

瑞穂さんに言われ、僕は席に座ろうとした。
しかし・・・まだ僕の不運は続いていた・・・

ガコッ!!

隆士「え?うわっ!!」

ガツンッ!!

理想奈「白鳥くん!?」

椅子に座った瞬間、椅子の足が一本壊れ、支えのバランスが悪い椅子はそのまま倒れたのだ。
そして僕は思いっきり頭をぶつけてしまった。

翼「お、おい白鳥!!大丈夫か!?」

隆士「あたた・・・な、何とか・・・」

瑞穂「椅子が壊れてたなんてついてないね・・・」

隆士「今日はとことんついてないな・・・」

翼「あん?もしかして色々あったっての・・・ついてないことだったのか?」

隆士「うん・・・実は朝から・・・」

僕は三人に朝あった事を話した。

瑞穂「大変ね白鳥君・・・」

隆士「よりによって梢ちゃんにあんな格好を・・・」

理想奈「そうかな?白鳥くんの裸なら私は大丈夫だけどな〜」

隆士「え・・・?」
翼「え・・・?」
瑞穂「え・・・?」

三人の声がはもる・・・
朱桜理想奈さん、愛称ホモスキー・・・
その名の通り男同士の恋愛、いわゆるボーイズラブが好きな子・・・
彼女いわく男の裸は美少年であればいい、または美少年同士の絡みならなおOKらしい・・・
瑞穂さんから聞いた話ではコスプレイヤーとの事・・・
絶対に千百合ちゃんと会わせない方がいいな・・・
そうなればまさに魔のトライアングル・・・
魚子ちゃんならまだ着せ替えで済むだろうけど・・・
それはそれで厳しいかも・・・

理想奈「だって白鳥くんって可愛い顔してるから私は別に嫌じゃ・・・」

瑞穂「理想奈・・・」

理想奈「何?」

瑞穂「白鳥君にはあの子がいるでしょ〜・・・?」

瑞穂さんは怖そうな顔をしながらXカリパーを取り出していた・・・

理想奈「あ、こ、好み言っただけじゃない!!やぁ〜ね瑞穂ったらもう!!」

瑞穂「そう・・・?」

隆士(この場合瑞穂さんにお礼言っていいのか・・・それとも理想奈さんをフォローすべきか・・・)

瑞穂「で、白鳥君は大家さんとの仲どうなの?」

隆士「まずまずかな?」

僕はまだこの三人には梢ちゃんと付き合ってる事を話していない。
翼君は僕にふられてるけど今朝美ちゃんの友達と付き合ってるらしいし・・・瑞穂さんは彼氏を欲しがってるし・・・理想奈さんは・・・どうなんだろう?
とにかく話すわけには行かないと思いまだ話していない。

翼「そろそろ先生来るぞ。白鳥は椅子どうするんだ?」

隆士「先生に頼んでみる。」

瑞穂「それが一番ね。」

翼「んじゃ俺はあっちに戻るわ。また昼にな。」

隆士「うん。頑張ってね。」

そう言って翼君は教室を出て行った。
それから少し経って銀先生が入ってきた。

銀「みなさんご機嫌よう。」

隆士「あ、あの先生。」

銀「あらあら?どうしたんですか白鳥隆士君?」

隆士「実は椅子が壊れて・・・」

銀「あらあら。ではすぐに換えの椅子を用意します。その代わりそれまで課題を回収しててくれませんか?」

隆士「はい。理想奈さん僕の鞄から課題を・・・」

理想奈「うん。」

理想奈さんに頼み僕の課題を出してもらう。
しかし・・・

理想奈「無いよ?」

隆士「え!?」

瑞穂「もしかして朝のゴタゴタで忘れた・・・?」

隆士「そ、そんな・・・」

課題を忘れてたなんて・・・このままでは先生の折檻を・・・!!

銀「あらあら・・・」

隆士「ひっ!!」

いつの間にか後ろに先生が・・・
恐る恐る後ろを振り返る・・・

銀「それは大変。」

子供が泣き出すような笑ってない笑顔・・・
まさに処刑執行人・・・

瑞穂「せ、先生。白鳥君椅子が壊れちゃってるんですよ。今回くらいは・・・」

瑞穂からの救いの声・・・
その時彼女が天使、いや女神のように見えた・・・

銀「そうですね〜・・・分かりました。」

隆士「はぁ・・・!!」

銀「白鳥隆士君と交代してくれる人がいるならいいですわ。」

クラス全員「!?」

先生の一言で教室に妙な緊張が走った・・・

銀「誰かいないのですか?」

・・・
誰も手を上げる訳が無い・・・
その時僕は人間と言う生き物の原始的な感情に恨みを感じた・・・

銀「と言う事で・・・ごめんあそばせ〜・・・」

僕はそのまま先生に連れられて・・・

隆士「あ!!ぁあぁあっ!!」











隆士「酷いよ〜・・・」

瑞穂「ごめん・・・だって・・・」

学校が終わり、僕は三人と一緒に歩いていた。

隆士「そりゃ銀先生の折檻は誰もが受けたくない事だけど・・・」

理想奈「本当についてないね白鳥くん・・・」

隆士「こうだと今夜辺り黒崎家の内職手伝いか宴会か・・・はぁ・・・」

翼「黒崎って黒髪美人なお姉さんとツルペタの親子の事か?」

理想奈「アンタね!!朝美ちゃんをツルペタって失礼でしょ!!」

隆士「ま、まぁまぁ・・・」

瑞穂「そう言えばどうして内職を?」

そう言えばみんなにはまだ鳴滝荘の人の事を詳しく話してなかったな。

隆士「実はさ・・・」

僕は三人に黒崎家、珠実ちゃんの事をある程度話した。
灰原さんに関してはまだ分からない事があるので言わなかった・・・

理想奈「朝美ちゃんかわいそう・・・」

翼「そんな事があったなんて・・・意外だな・・・」

隆士「まぁそんな感じかな?」

瑞穂「にしてもそのプチ銀先生もいい子なんだね。」

隆士「ま、まぁね。」

理想奈「ねぇ白鳥くん!!」

隆士「ん?」

理想奈「私今日から白鳥くんと一緒に住む!!」

隆士「ほあっ!?」
瑞穂「はいっ!?」

理想奈「あんな可愛い子に不幸なんて似合わないもの!!私も手伝う!!」

隆士「だ、だからって一緒にだなんて・・・!!」

理想奈「で、空き部屋ってまだあるの?」

隆士「ほへっ?」

あ、一緒に住むって鳴滝荘の空き部屋にね・・・
びっくりした〜・・・まさか僕と一つの部屋で暮らすのかと・・・

瑞穂「白鳥君、やらしい事考えたでしょ?」

隆士「ひはっ!?」

顔に出てたらしく瑞穂さんに突っ込まれた・・・

隆士「そ、そんな事!!」

理想奈「で、どうなの?」

隆士「空き部屋はあるけど・・・朝美ちゃんならそこまでしてくれなくてもいいって言いそうだな〜・・・」

理想奈「ん〜・・・じゃあ週一!!いや週ニで!!」

隆士「はは・・・とりあえず聞いてみるよ・・・結果は明日学校で。」

理想奈「うん!!」

これはまたにぎやかになりそうだな〜・・・

隆士「それじゃ僕はこの辺で。」

瑞穂「うん。じゃあね。」

翼「じゃあな。」

さよならを言って僕は三人と別れた。

隆士「さてと・・・ちょっと寄り道でもしてこうかな?」

そう思い僕は公園に向かった。
これが僕の人生を大きく変える事と知らず・・・











隆士「ふぅ〜・・・やっぱりここはいいな〜・・・」

茜色の空が僕の心を癒してくれる・・・

隆士「今日は本当についてなかったけど・・・この後もなんかあるのかな〜・・・?」

これから何が起こるか分からない不安に体がここから離れない。

隆士「でも帰らなきゃな・・・にしても・・・」

僕はある事に気付き、辺りを見渡した。
この時間のこの公園にいるのが僕一人ってのがおかしい・・・
大体この公園には仕事帰りのサラリーマンや学校帰りの学生が一人か二人はいるはずなのに・・・
そして僕はこの空気を・・・この違和感を感じるのは二度目だ・・・
人がいるような場所・・・なのに誰もいない・・・

隆士「今朝の夢といい・・・まさかとは思うけど・・・」

ドクンッ・・・

心臓の鼓動が聞こえる・・・
それほど今の僕は何かに緊張している・・・

隆士「あの時と同じだ・・・虎丈に神那・・・朱雀さんと会ったあの時と・・・」

ドクンッドクンッ・・・

心臓の鼓動が速くなって行く・・・
やっぱりいるんだ・・・あいつらが・・・!!

隆士「早く離れなきゃ・・・!!」

僕はすぐに公園を出ようとした。
だけどもう遅かった・・・

ドスッ・・・!!

隆士「!!」

胸部に妙な違和感を感じた。
何かが刺さり、そして貫いたような・・・

隆士「は・・・」

僕は自分の体を見た。
そこには刃物の様な物が僕の体から出ていた。
僕の血をまといながら・・・

隆士「う、うわぁぁぁーーーー!!」

そう、僕は何者かに刺されていた・・・
胸部にとてつもない痛みが走る・・・

ズボッ!!

隆士「ぐっ!!」

何者かが刃物を抜いた。
傷口から大量の血が溢れ出す・・・

隆士「はっはっはっ・・・!!」

僕は両手で傷口を押さえようとした。
だけど血は止まる事は無い。

隆士「こ、このままじゃ・・・!!」

「ああ。死ぬな。」

隆士「はっ!?」

すぐ後ろで声がした。
振り向くとそこには黒い髪に黒のロングコート・・・
血が付いた少し短めの剣を両手に持った見覚えのある男がいた。

隆士「る・・・竜汪・・・!!」

竜汪「覚えたか、白鳥隆士。」

隆士「わ、忘れてたかったさ・・・!!」

竜汪「そうか・・・俺が来た事・・・お前は分かってるはずだ・・・」

隆士「僕を・・・殺しに来た・・・」

竜汪「そう・・・三年前撃ち損じたお前を・・・」

隆士「捕まってなかったなんて・・・!!」

竜汪「我らをなめてもらっては困るな。」

隆士「くっ・・・!!」

僕はあいつ・・・竜汪から逃げたかった・・・
だけど体が覚えている・・・
あいつから逃げる事など無理だと・・・

竜汪「諦めるのだな。我から逃げる事など・・・」

隆士「ああ・・・分かってるさ!!」

僕は竜汪に鞄を投げ付けた。

竜汪「小賢しい真似を!!」

ザスザスッ!!

竜汪は両手の剣で鞄を切り刻んだ。
その隙に僕はそこから走り出していた。

隆士「あいつから逃げるには・・・あいつが見失ってくれさえすれば・・・!!」

しかし傷は深く、今もなお血は流れ続けてる。
速く走れる訳も無かった・・・

ザシュシュッ!!

隆士「!!」

背中にとてつもない痛みを感じた・・・
どうやら竜汪に切られたようだ・・・

竜汪「諦めろ・・・お前に待つのは・・・死だ・・・!!」

隆士「・・・!!」

竜汪「滅せよ・・・」

ザスッザスッザシュシュシュシュッ!!

隆士「!!」

声を上げる暇も与えないほどの乱れ切りで竜汪は僕を切り刻んだ。

竜汪「今のお前にこの剣・・・見切れまい・・・」

隆士「ほんと・・・」

竜汪「さらばだ。」

竜汪の気配が消えた・・・
だけど僕にはもう関係なかった・・・

隆士「今日は・・・ついて・・・な・・・」

僕は力尽き僕の血で出来た水溜りに倒れた・・・

隆士(梢ちゃん・・・)

その時僕の脳裏に梢ちゃんとの日々が蘇って行く・・・

梢(白鳥さんですか・・・?)

初めて会った時・・・

早紀(お前誰だ?)

初めて早紀ちゃんになった時・・・

魚子(魚子もお兄ちゃんのこと大好き!!)

初めて魚子ちゃんに好きって言われた時・・・

梢(一生・・・大事にします・・・)

梢ちゃんにお茶碗を買った時・・・

棗(と・・・友達に・・・なって・・・くれ・・・る・・・?)

初めて棗ちゃんと出会った時・・・

梢(みんなと出会えて・・・よかったです。)

海に行った時・・・

千百合(CORRECT!!)

千百合ちゃんに酷い目に遭いそうになった時・・・

梢(白鳥さんやみんなと一緒に、たくさんたくさん、作っていけたらいいなって・・・)

紅葉狩に行った時・・・

梢(はい白鳥さん・・・喜んで・・・!!)

告白した時・・・

梢(白鳥さんのことが・・・好きだったから・・・)

梢ちゃんの誕生日の時・・・

魚子(魚子とお兄ちゃんは恋人同士になったんだもんね!!)

魚子ちゃんがキスした時・・・

棗(大・・・好き・・・)

恋人になって棗ちゃんと会った時・・・

千百合(・・・やっぱり隆ちゃんは・・・私にとって・・・特別な人・・・)

千百合ちゃんと顔を見て会話をした時・・・

早紀(大!!好きだーーー!!)

早紀ちゃんの突撃を喰らった時・・・
そして・・・

梢(頑張ってくださいね・・・私応援してますから・・・!!)

梢ちゃんが・・・僕の手を握って来た時・・・

隆士(ごめ・・・ん・・・僕・・・)

目が霞んで来た・・・
今見えるのは全てが赤く見える世界・・・
眼球に血がついたんだろうか・・・?
でもそんな事どうだっていい・・・
今僕が思う事・・・

隆士(夢・・・叶えられそうに・・・無い・・・)

梢ちゃんが応援してくれるって言ったのに・・・
その期待を・・・裏切ってしまう・・・罪悪感・・・

隆士(珠実ちゃん・・・怒るだろうな・・・朝美ちゃん・・・泣くかな・・・?やっぱりみんな・・・泣くのかな・・・)

もう僕の目には何も映っていない・・・

隆士(梢ちゃん・・・みんな・・・ごめ・・・ん・・・)

僕は静かに目を瞑る・・・

隆士(梢・・・ちゃ・・・)





そして僕は・・・何も感じなくなった・・・





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