十七の調
青き龍の咆哮 後編
虎丈「どりゃあ!!」
神那「うぉりゃあ!!」
藍川さんと栗崎さんが私達の道を作る為に戦っている。
私は朝美ちゃんと鳥汐ちゃんと白鳥さんを守っている。
朱雀「もう少しです!!もう少しで皆さんと!!」
鼠条「この・・・さっさとそいつら殺しやがれ!!」
山吹「そう簡単には殺されんわい!!でぇい!!」
翼「じいさんやるなぁ・・・」
皆さんがやってきてから鼠条の様子がさっきとは違っていた。
読みを間違えたからか焦りが感じられる・・・
瑞穂「でもあのおじいさん凄いわね・・・」
朝美「本当・・・」
朱雀「一体どう言う方なのでしょう・・・」
山吹「おしゃべりしてる暇があったら走るのじゃ!!ワシだって若く無いわい!!」
神那「だったら隠居してろっての!!」
山吹「お前らがそうさせてくれぬから出来ないのじゃ!!」
神那「じゃあこれ終わったら好きに隠居していいからよ!!」
山吹「言われんでも・・・分かっとるわい!!」
「おぐぁっ!!」
タチバナ「なっ!?」
山吹さんが仕込み杖を力を込めて横振りした瞬間、前に白鳥さんが鼠条にやったあの空を走った斬撃が発生して何人かを切り貫きました。
山吹「手加減はしておいたわい・・・今の内にほれ!!」
虎丈「張り切り過ぎなんだよ・・・そっち気をつけな!!」
「どあぁっ!!」
梢「今のは先ほどの・・・」
藍川さんは先ほど朝美ちゃん達を助けた時に使った体当たりで複数の人を押し倒していきました。
虎丈「犀撃か?」
梢「はぁ・・・」
神那「じゃあ俺も一気に続くか!!」
そう言うと栗崎さんは穂の付いていない方を前にして短く持ち直しました。
神那「ついてきな!!突撃ぃーーー!!」
「おあぁーっ!!」
栗崎さんはそのまま沢山の人をなぎ倒しながら前へ走っていきました。
鳥汐「ちょっとやり過ぎじゃ・・・」
瑞穂「多分いいのよ。邪魔よ!!」
「ごぐっ!?」
瑞穂さんも釘バットで私達を襲おうとしてくる人を叩いてくれている。
だけど殴られた人は痛そう・・・
朱雀「今の内に!!」
梢「はい!!」
私達は藍川さんと栗崎さんが作ってくれた隙に私達は走り抜け、何とか皆さんの所まで来る事が出来ました。
沙夜子「朝美・・・!!」
朝美「お母さん!!」
理想奈「朝美ちゃんもう大丈夫だからね。後は逃げるだけだね。」
虎丈「ああ。だから先に逃げてろ。」
沙耶「どう言う事です?」
神那「今この状況で逃げたって追いつかれる可能性がでかいだろ?だからこいつらだけは片付けてから戻るさ。」
三千代「だ、大丈夫ですの?」
虎丈「何とかなるだろうさ。」
朱雀「私は控えた方がいいですね・・・梓。」
梓「はい。」
タチバナ「お嬢様、私も手伝う為残ります。」
まひる「タチバナ・・・大丈夫か?」
タチバナ「必ず戻ります。」
恵「急いで戻るわよ。」
花梨「はい。」
部長「デスが・・・そウ簡単には行かナいでしョう・・・」
珠実「ま、また部長が真面目な事を・・・」
菫里「何故そう思うのじゃ?」
部長「ソの人達を見レバ分かりまスよ・・・」
梢「その人達って・・・え?」
瑞穂「あ、あれ?」
藍川さんと栗崎さんが倒してきた人達は何故か何とも無いかのようにまた立ち上がっていました。
どこか痛みが感じられてないようにも見れます・・・
翼「お、おいどうなってんだ?」
鼠条「キキキ・・・さぁどうしてかなぁ〜・・・?」
神那「お、おいおい・・・お前まさか・・・」
虎丈「・・・薬か!?」
鼠条「キキキ・・・ご名答だぜ・・・」
竜太郎「麻薬かよ・・・なんて奴ら・・・いや、何て奴なんだよお前は・・・」
鼠条「キキキ・・・褒め言葉として受け取らせてもらうぜ・・・」
理想奈「それじゃあこの人達は・・・」
珠実「恐らく痛みを感じていないのでしょう・・・」
瑞穂「そんなのありなの!?」
鼠条「アリだからやってるだろうが。」
虎丈「厳しいな・・・」
神那「つまりは痛みを痛みとして感じない分何度も襲ってくるだろうな・・・」
山吹「おろかな事をしおってからに・・・」
鼠条「キキキ・・・さぁどうする?こうなったら殺すしか手は無いぜ?」
朱雀「何て事を・・・!!」
鼠条「悪いのはこいつらよ。金に目がくらみやがって何でもするなんて言ったこいつらがな。」
灰原「外道だな・・・お前は・・・」
鼠条「何とでも言いやがれっての。じゃ、攻撃開始だ。」
「うぉーーーー!!」
鼠条の命令で一度に沢山の人が襲い掛かってきました。
虎丈「走れ!!ここは俺らが食い止める!!」
神那「ただ俺らが無事に済むかどうかは分かんねぇがな!!」
山吹「まったく年寄りに無茶させおって・・・」
梓「怪我をしても・・・恨みっこ無しです!!」
梢「皆さん・・・気をつけてください・・・!!」
翼「白鳥は俺が運ぶ!!これぐらいはやってやんなくちゃな!!」
梢「すいません・・・」
私達は白鳥さんを翼さんに預けました。
灰原「じゃあ急ぐぞ!!誰か一人でも捕まったらお終いだぞ!!」
珠実「はいです!!」
私達は皆走り出そうとした。
その時でした。
鼠条「お〜っと待った。逃げれるとでも本気で思ってるのか?」
梢「!?」
私は鼠条のその一言が耳に入り足を止めた。
梢「ど、どう言う事です・・・」
神那「梢ちゃん止まんねぇで走れって!!」
鼠条「キキキ・・・あの時いたお前なら分かるんじゃねぇんか?俺が用意無しに呼び出すかどうかなんかよ・・・」
瑞穂「も、もしかしてそれって!?」
鼠条「キキキ・・・だがあの時とは仕掛けが違うぜ・・・」
虎丈「お、おいお前・・・まさか・・・!?」
鼠条「キキキ・・・今度はこれだ。」
そう言って鼠条はリモコンのような物を出して私達に見せ付けました。
恵「ど、どう言う事なの梢ちゃん!?」
梢「前に白鳥さんが言っていました・・・『鼠条は人が苦しむ光景を見るのが好きな最低な奴』、『もしあいつが来たら町に毒を流すだろう』って・・・」
竜太郎「お、おいそれじゃ・・・」
鼠条「キキキ・・・ビンゴだぜ・・・この町の水源に毒を流す仕掛けを仕込んできたのさ・・・これでポチってやったら町中に毒がまわるぜ〜・・・」
朱雀「な、何ですって!?」
虎丈「とことん腐った根性しやがってよ・・・!!」
神那「サイテ〜だぜ・・・」
鼠条「キキキ・・・俺には気持ちいい褒め言葉だぜ・・・」
梢「・・・」
鼠条「さ〜ってと・・・下手に抵抗したらこの町が毒で満ちるぜ〜?」
神那「チッ・・・どうすれってんだ・・・?」
鼠条「キキキ・・・そんなの言わずとも分かるんじゃないのか?」
神那「くそっ・・・」
朱雀「仕方ありませんね・・・」
栗崎さんと朱雀さんは気づいたのか槍と銃を地面に置きました。
鼠条「キキキ・・・素直じゃないか・・・そっちの奴らも一人でも逃げようとしたら・・・」
沙耶「最低や・・・」
三千代「翼さん・・・」
翼「・・・大人しくするしかなさそうだな・・・今は・・・」
浩子「ひぁ・・・」
この町を人質取られた私達は抵抗する事を止めた。
鼠条「キキキ・・・さぁてっと・・・何をしてやろうかね・・・」
竜太郎「・・・もしお前に良心ってのがあるなら・・・恵は逃がしてくれ・・・こいつは・・・」
恵「無駄よ竜太郎・・・毒使ってる時点で良心なんかあるはずが無いわ・・・」
鼠条「キキキ・・・その通りだ・・・何があったって関係無いね・・・」
花梨「とことん最低ね・・・」
鼠条「何とでも。さぁてとどうするか・・・」
梢「・・・」
鼠条「よし、まずは蒼葉梢。白鳥隆士をつれてこっち来い。」
梢「・・・」
珠実「駄目です梢ちゃん!!聞いちゃ!!」
梢「でも町の人達が苦しむのも嫌なの・・・大丈夫だから・・・」
そう言ったけど本当はとても怖い・・・
私が行かなきゃ町の人達が・・・
だけど同時に白鳥さんにも危険が及ぶ・・・
実際には短かったかもしれないけどその事を何度も考えた。
梢「・・・分かりました。瑠璃岸さん・・・」
翼「チッ・・・すまない・・・」
私は瑠璃岸さんから白鳥さんを受け取り、鼠条の方に向かった。
鼠条「キキキ・・・素直じゃねぇか・・・」
梢「それで・・・どうするのですか・・・?」
鼠条「キキキ・・・」
梢「・・・」
夕「はぁ・・・はぁ・・・!!」
その頃薄暗い水無月家の一室では沙夜子とまひるの母、夕が何故か苦しんでいた。
丑三「夕ちゃん・・・大丈夫か?」
夕「え、ええ・・・」
サクラ「奥様・・・」
丑三「夕ちゃん・・・ワシらに何を隠しておるのじゃ・・・そこまで苦しんでおるのに・・・」
夕「ご、ごめんなさい丑三さん・・・今は・・・うくっ!!」
サクラ「奥様!?」
夕「うぅ・・・!!」
夕は右手で顔を、左手で胸を押さえつけた。
丑三「夕ちゃん!!しっかりするんじゃ夕ちゃん!!」
夕「だ、大丈夫で・・・あうぅっ!!」
サクラ「すぐに医者を呼んできます!!」
サクラは医者を呼ぼうと部屋を出ようとした。
だがその時。
夕「ま、待ってください・・・サクラさん・・・」
夕がサクラを呼び止めた。
サクラ「奥様・・・ですが・・・」
夕「べ、別に・・・病気でも・・・何でも無いんです・・・」
丑三「しかしここ最近になって突然こんな風になって・・・まひるや沙夜子達も命を狙われておると聞く・・・何がどうなっているんじゃ・・・?」
夕「い、いずれ・・・分かります・・・わ・・・そ、それよりも・・・」
その部屋のベットで寝ていた夕が体を起こした。
サクラ「お、奥様横になっていなくては!!」
夕「へ、平気です・・・そ、それよりも行かなくては・・・いけません・・・」
丑三「い、行くってどこにだい?」
夕「・・・娘達と・・・兄と・・・彼のいる場所へ・・・」
梢「あうっ・・・!!」
珠実「梢ちゃん!!」
虎丈「くそ・・・手も足も出せねぇ・・・」
梢「だ、大丈夫・・・ですから・・・」
町全体を人質に取られている為誰も手を出せずにいる・・・
私は鼠条に何度も殴られたり蹴られたりされている・・・
鼠条「キキキ・・・いい気味だぜ・・・こうやって女を痛めつけるってのはよ!!」
梢「ぐふっ!!」
鼠条の足が私の腹部の蹴りつけた。
苦しくて一瞬息が出来なくなった・・・
梢「ごほっごほっ!!」
珠実「梢ちゃん!!よくもぉ!!」
鼠条「お〜っとこれが目に入らねぇのか?」
珠実「くっ!!」
襲い掛かろうとした珠実ちゃんを鼠条はリモコンを出して止めた。
下手な抵抗はこの町の終りにつながるから・・・
鼠条「さ〜ってと・・・このままこいつだけをいたぶるのもいいけどよ・・・」
梢「うっ・・・?」
鼠条は白鳥さんの方を見た・・・
今は私から離れた場所に倒れている・・・
鼠条「元々こいつを殺せって言われてたんがよ、そんじゃあ面白くねぇから考えたこの作戦だ。だが全く反応しねぇ。ホントは死んでんじゃねぇか?」
梢「そ、そんな事・・・白鳥さんは・・・白鳥さんは生きています!!」
鼠条「ホォ〜、だったら・・・」
梢「!!」
鼠条は白鳥さんの方を向いてナイフを取り出した。
もしかして・・・!!
鼠条「こうしたって・・・」
梢「や、やめてください!!」
何をするのかが分かった私は白鳥さんの方に走った。
鼠条「へっ引っかかったな!!」
花梨「梢後ろ!!」
梢「え・・・?」
花梨ちゃんの声に私は後ろを見た。
目の前には鼠条が持っていたナイフが近づいてきていた・・・
梢「もしかして初めから・・・私を・・・!?」
ザスッ!!
梢「あうっ!!」
浩子「いやぁーーーーーー!!」
花梨「梢!!」
梢「だ、大丈夫だよ・・・」
ナイフは私の右目の上をかすっただけで刺さりはしなかった。
だけどそこから血が流れ始めた・・・
梢「うぅ・・・!!」
私は右手で傷口を押さえた。
だけど止まりそうになく、血は流れている。
鼠条「キキキ・・・ざまぁねぇな。ま、さっきのナイフは毒は塗ってねぇから安心しな。」
梢「うくっ・・・!!」
鼠条「痛いか・・・?そりゃ痛ぇよな〜ひゃ〜はっは!!」
瑞穂「あいつ・・・!!」
灰原「落ち着くんだ・・・今手を出したら・・・」
瑞穂「分かっていますよそれは!!でも・・・!!」
鼠条「がたがたうっせぇんだよ!!」
鼠条は皆さんの方、瑞穂さんに向けてナイフを投げました。
鼠条「今度は毒付きだぜぇ!!かすってもオダブツ確定だ!!」
梢「逃げてください!!」
鼠条「おせぇよ!!」
キィン!!
鼠条「あぁっ!?」
瑞穂「え・・・?」
ナイフは瑞穂さんの前で何かに当たり下に落ちた。
「こ、これは・・・思った以上に・・・危険でしたね・・・」
鼠条「あにぃ!?」
菫里「そ、その声は!?」
梢「え・・・?」
少し離れた場所に体の大きな男の人と日除けのような物の中にいる子供みたいな女の人ともう一人女の人がいました。
あの人達は確か・・・
朝美「おじいさん!?それにおばあさんも!?」
浩子「お、お姉ちゃん!?」
まひる「父様に母様、どうしてここに。」
丑三「いやな・・・夕ちゃんがここに来なくてはいけないって言うもんじゃから・・・」
沙夜子「母様が・・・?」
夕「はぁ・・・はぁ・・・お、お久しぶりですね・・・兄さん・・・」
朝美「に、兄さん?」
菫里「・・・元気そうじゃな、夕。」
神那「はぁ!?じいさん兄妹いたのか!?」
朱雀「それが夕様でしたなんて・・・気づきもしませんでした・・・」
菫里「言ってない物が分かるわけ無かろうが・・・」
夕「そ、その声は・・・朱雀さん・・・ですね・・・」
朱雀「え、ええ・・・ですがどうしてここが・・・?」
鼠条「邪魔すんじゃねぇ!!」
梢「はっ・・・!!」
鼠条は今度は夕さんの方にナイフを投げました。
朝美「おばあさん!!」
夕「大丈夫・・・サクラさん・・・」
サクラ「ふ、ふぇ・・・は、はい!!」
夕「・・・はぁっ!!」
キィン!!
理想奈「ええ!?」
夕さんはサクラさんから何かをもらい、それを投げてナイフを落としました。
鼠条「な、何だよ貴様は!?」
夕「・・・菫里夕・・・と言えば分かるでしょう・・・」
鼠条「菫里・・・夕だと!?」
朝美「え・・・?」
鼠条が夕さんの旧姓を聞いた途端、鼠条の顔付きが変わりました。
鼠条「・・・そうか・・・そうだったか・・・キキキ・・・これはいいぜ。」
梢「ど、どう言う事です・・・?」
夕「・・・いつか・・・話します・・・ですから・・・今ぁぐぅ!!」
丑三「夕ちゃん!?」
タチバナ「奥様!?」
突然夕さんが苦しみだしてその場にうずくまりました。
沙夜子「母様!?」
まひる「母様!?」
鼠条「チャンスだ!!奴も捕まえろ!!」
命令で夕さん達にも何人かが向かって行った。
朝美「逃げてください!!」
丑三「むぅん!!」
「ぶがっ!!」
沙耶「うわぁ・・・」
丑三さんは近づいてきた人の顔を力を込めて殴りつけました。
丑三「夕ちゃんに手を出させはせん!!」
まひる「父様凄い・・・」
鼠条「くそっ!!老いぼれのくせしてやりやがる!!だがな、こっちには切り札があ・・・」
夕「そこです・・・!!やぁっ!!」
鼠条「るぁっ!?」
夕さんがまた何かを投げ、それが鼠条が握ってるリモコンに当たりリモコンが鼠条の手から離れました。
夕「今です・・・それを!!」
神那「あぁ!!虎丈!!」
虎丈「分かった!!」
夕さんが作ったチャンスを見計らい、栗崎さんが槍を拾って藍川さんの方に軽くジャンプしました。
神那「行けぇ!!」
虎丈「おぉーー!!」
翼「はぁっ!?」
藍川さんが栗崎さんの足を蹴り、そのまま栗崎さんが鼠条の方に飛んでいきました。
神那「もらったぜ!!」
鼠条「なっ!?」
神那「ゲットぉ!!」
栗崎さんはリモコンをキャッチして鼠条から距離を置いて着地しました。
朱雀「これで毒は流せません。覚悟しなさい!!」
鼠条「ちっ!!だがな、お前らは一つある事を忘れてるぜ。」
虎丈「何だと・・・?」
鼠条「それはなぁ・・・」
梢「え・・・」
鼠条が私達の方を向いた。
もしかして・・・
鼠条「こいつらに関してのガードががら空きなんだよ!!」
梢「!!」
神那「しまっ!!」
既に鼠条は刀を取り出して私達の上に振り上げていた。
朱雀「させません!!」
鼠条「撃たせんじゃねぇ!!」
朱雀「あうっ!!」
銃を撃とうとした朱雀さんを何人かが押さえて阻止しました。
虎丈「くそっ!!間に合うか!?」
神那「間に合ってくれ!!」
藍川さんと栗崎さんが走り出しましたが間に合いそうにありませんでした。
私は動かない白鳥さんの体を抱き寄せた。
もしこれで最期になるなら・・・一緒の方がいいですから・・・
珠実「梢ちゃん逃げてぇ!!」
朝美「お姉ちゃん!!」
花梨「梢!!」
浩子「梢ポン!!」
みんなの声が聞こえるけど・・・もう逃げれそうにはない・・・
梢「白鳥さん・・・」
隆士「・・・」
話しかけてみても白鳥さんは目覚めそうに無い・・・
傍らには山吹さんからもらったあの木刀があったけどもう使われる事も無いでしょう・・・
梢「私・・・白鳥さんに出会えて嬉しかったです・・・」
隆士「・・・」
梢「白鳥さんと出会って・・・白鳥さんの恋人になれて・・・とても嬉しかったです・・・」
隆士「・・・」
梢「また・・・天国で会いましょうね・・・」
隆士「・・・」
梢「大好きです・・・白鳥さん・・・」
隆士「・・・!!」
鼠条「おぅりゃーーーー!!」
瑞穂「梢ちゃん!!」
鼠条が刀を振り下ろしてきた・・・
もう・・・終りなんでしょうね・・・
梢「さよなら・・・」
私は死を覚悟し、目を閉じた。
「それを言うのは・・・」
梢「え・・・?」
一瞬耳元で声が聞こえた・・・
この声は・・・
ガギィン!!
鼠条「なっ!?」
虎丈「お・・・」
神那「・・・来たか・・・!!」
私のすぐ上で何かが砕けた音がした。
そして気づいたら私が抱き寄せられていた・・・
この優しい温もりは・・・
梢「はぁ・・・!!」
隆士「まだ・・・早いよ・・・」
朱雀「隆士様!!」
白鳥さんが・・・私を助けてくれていました。
山吹「ようやく目覚めたかい・・・」
隆士「お久しぶりです。先生。」
鼠条「ぼ、木刀で刀をぶっ壊したのかよ・・・」
白鳥さんの右腕にはあの木刀が握られていました。
そして左腕には私が・・・
隆士「捕まってて。」
梢「はい・・・!!」
白鳥さんは私を抱きしめて皆さんがいる場所まで藍川さんに教わった鮭跳で飛んでいきました。
珠実「梢ちゃん!!」
梢「珠実ちゃん・・・私は大丈夫だよ。」
珠実「ですが傷が・・・」
梢「大丈夫だから・・・」
隆士「・・・後は僕がやるよ・・・」
瑞穂「白鳥君・・・」
隆士「何があったか分からないわけじゃないさ・・・だからここは・・・」
梢「あ、あの・・・」
隆士「うん?」
梢「・・・過去がどうあれ・・・今何が必要か見極めろ・・・です・・・」
隆士「・・・」
山吹「そうじゃぞ。どうするかはお前次第じゃが・・・」
隆士「・・・星の型は・・・使いません・・・」
山吹「そうか・・・」
隆士「ですけど・・・使わなくてもここは乗り切れます。」
鼠条「なめやがって・・・あぁそ〜か。怖いんだろ?」
隆士「何が?」
鼠条「キキキ・・・知らねぇとでも思ってんのか?」
隆士「いや・・・お前達なら僕の過去ぐらい調べるのなんて難しい事じゃないからね・・・」
鼠条「キキキ・・・ま、お前が目覚めたって事ぁお前の本性が見れるってこった。」
恵「白鳥クンの・・・本性・・・?」
鳥汐「それってさっき言っていた・・・」
隆士「・・・」
鼠条「こいつらの様子からすりゃ、お前過去の事何も話してねぇな?」
隆士「・・・話す理由も無かったからね・・・だけど梢ちゃんと灰原さんはもう分かってるよ・・・」
理想奈「ど、どう言う事?」
灰原「・・・」
鼠条「キキキ・・・言えるわけねぇよなぁ・・・だったら俺が教えてやるよ。そいつぁなぁ・・・」
梢「言わないで!!白鳥さんは・・・!!」
隆士「いいんだよ梢ちゃん・・・どうせいつかは話そうと思っていたからね・・・」
梢「ですが・・・!!」
鼠条「そいつぁ人殺しなんだよ。ガキの頃に大の大人一人をぶっ殺したな。」
瑞穂「え!?」
恵「ま、マジ!?」
珠実「し、白鳥さんが・・・」
朝美「人を・・・殺した・・・?」
朱雀「う、嘘です!!隆士様はそんな・・・!!」
山吹「本当じゃよ・・・白鳥は小学五年の時に・・・人を殺しているのじゃ・・・」
虎丈「ほ、本当かよ・・・」
神那「隆士が・・・」
隆士「・・・」
梢「で、ですが!!ですが白鳥さんは幼馴染の子を助ける為に・・・!!」
鼠条「助けるぅ?ひゃ〜はっはっは!!笑わせるぜ!!」
梢「え・・・?」
鼠条「あぁ〜そう言う事か。都合の悪い部分は教えてねぇのか?」
隆士「・・・少なくとも・・・灰原さんがそうしたんですよね・・・」
灰原「・・・あぁ・・・」
鼠条「キキキ・・・やっぱてめぇは俺らと同じだ。」
隆士「・・・」
鼠条「まったくふざけた話しだぜ・・・人殺しが子供の為の絵本を書くだ?そいつぁ何かの罪滅ぼしのつもりか?」
隆士「・・・」
鼠条「どんな事したっててめぇは人殺しなんだよ。その手は既に血で汚れてんだろ?」
隆士「・・・」
鼠条「てめぇのそう言う所、虫唾が走るぜ・・・どうあったっててめぇは・・・」
ガッ!!
鼠条「おぉ?」
梢「し、白鳥さん・・・?」
隆士「・・・」
白鳥さんは何も言わずに木刀を地面に力強く突き刺しました。
隆士「説明は・・・それで十分だろ・・・?」
鼠条「ほぉ〜これがお前の本性か?」
確かに今の白鳥さんは今までの白鳥さんとは何か違っていました。
隆士「これが僕の本性かどうか何て・・・僕には分からないね・・・ただ・・・」
鼠条「ただぁ?」
隆士「お前に対して・・・心の底から怒りが込み上げて来てるのは・・・確かだ!!」
虎丈「うぉっ!?」
神那「す、すっげぇ気迫・・・」
翼「アレが・・・白鳥なのかよ・・・」
鼠条「キキキ・・・なら俺を殺すか?」
隆士「殺しはしないさ・・・だけど・・・」
梢「白鳥さん・・・」
隆士「梢ちゃんを傷つけた事・・・その行為で僕を怒らせた事を・・・後悔させる・・・!!」
鼠条「キキキ・・・てめぇに出来るのか?」
隆士「少なくとも・・・」
鼠条「なっ!?」
竜太郎「いぃ!?」
白鳥さんは一瞬の内に鼠条のすぐ近くにまで寄っていました。
隆士「お前は僕には勝てないだろうさ。」
鼠条「ぐごっ!!」
白鳥さんは近づいてすぐに前に傷をつけた場所を木刀で斬りました。
鼠条「こ、このやっ!!」
隆士「遅い!!」
鼠条「がっ!!ごっ!!うぐっ!!」
白鳥さんは素早く何度も鼠条を木刀で斬りつけて行きました。
その速さは一瞬見逃せば何があったかさえ分からないほどに・・・
山吹「あやつ・・・腕は衰えて無いの・・・」
鼠条「こ、この野郎!!ぶっ殺して!!」
隆士「お前に僕は殺せない・・・はぁっ!!」
鼠条「ばぐっ!!」
隆士「これで!!とどめ!!」
バギッ!!
鼠条「ぐがぁ!!」
白鳥さんは鼠条の顎を斬り上げ、その後すぐに頭を力の限りに木刀で叩きつけました。
その際木刀は完全に折れてしまいました。
隆士「駄目だな・・・木刀折る何て・・・」
山吹「まだお前の心が不安定なのじゃろ。」
隆士「ですね・・・」
鼠条「き、貴様・・・!!」
隆士「脳に伝わった衝撃で少しの間は動けれないはずだ。大人しくしているんだね。」
鼠条「ぐ・・・!!」
「ひ、ひぃーーーー!!」
鼠条がやられて私達の周りにいた人達が皆逃げていきました。
梢「白鳥さん・・・」
隆士「・・・鼠条が言った事は本当さ・・・僕は人を殺している・・・」
瑞穂「白鳥君・・・」
隆士「人殺しといるのが嫌なら・・・僕はここから去るよ・・・」
梢「そんな事・・・無いです・・・」
隆士「梢ちゃん・・・」
梢「例えどんな過去があっても・・・白鳥さんは白鳥さんです・・・それに・・・」
隆士「それに?」
梢「もう・・・私の前から・・・いなくならないでください・・・」
隆士「・・・」
恵「全くその通りよ白鳥クン。」
理想奈「彼女を悲しませるような事があったら白鳥くんでも許さないんだからね。」
翼「そうそう。お前が目を覚まさなくなって一番悲しかったのは大家さんなんだぞ。」
隆士「・・・」
虎丈「お前のおかげで色々大変だったんだぞ。その分のケジメぐらいお前で片付けろよ。」
部長「ドウすルカはアナた次第でスガ、こノ場合は梢部員を悲しまセない事ですよ。」
神那「そん時は俺がお前をぶっ飛ばすぞ。」
竜太郎「人を愛するってのは難しい事でもある。だけど愛した女性を悲しませないのが男としてやんなきゃいけない事だ。」
隆士「・・・分かってますよ・・・ごめんね梢ちゃん・・・」
梢「いいんです・・・ですから今は・・・」
隆士「わっ」
私は倒れるように白鳥さんに抱きつきました。
梢「今は・・・こうしててください・・・」
隆士「・・・うん・・・」
翼「ま、今はいいか。」
瑞穂「そだね・・・ちょっと妬けるけど。」
朱雀「仕方ありませんわ。」
山吹「後は・・・あいつが再び振る事が出来るか否かじゃの・・・」
隆士「・・・」
梢「白鳥さん・・・もう・・・寂しいのは嫌ですから・・・」
隆士「分かってる・・・分かってるよ・・・」
変わらぬ温もりで私を抱きしめてくれる白鳥さん・・・
だけど私はまだこの人の苦しみを分かってはいない・・・
この人がどんな苦しみを背負って生きてきたのかは分からないけど・・・
ここに愛する人がいる、それだけで今は何もいらない・・・
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