十六の調


青き龍の咆哮 前編








朝美「はぁ・・・」

鳥汐「どうした?」

朝美「ちょっとね・・・」

梢お姉ちゃん達が羊宗って人を捕まえた日から五日、私は鳥汐ちゃんと公園で会っている。

朝美「分かってるんだけど・・・考えたくない事があるの・・・」

鳥汐「・・・言わなくいい・・・あたし達の事でしょ?」

朝美「・・・うん・・・」

鳥汐ちゃんは友達であると同時に十二支、つまり私達の命を狙っている敵・・・
いずれ鳥汐ちゃんも・・・

鳥汐「・・・ごめんね朝美・・・」

朝美「え?」

鳥汐「出会わなかった方がよかったんだよね・・・お前とあたし・・・」

朝美「鳥汐ちゃん・・・」

鳥汐「そうだったらお前は辛い思いをしなくて済んだのに・・・」

朝美「いいの・・・それは・・・」

鳥汐「だけど・・・」

朝美「確かに辛い事があったけど・・・いいの。そのおかげで鳥汐ちゃんと友達になれたんだし鳥汐ちゃんの笑顔が見れたんだもん・・・」

鳥汐「・・・朝美・・・」

朝美「だから大丈夫。それにお兄ちゃん達が何とかしてくれるって。」

鳥汐「だけど隆士お兄ちゃんは・・・」

朝美「・・・うん・・・」

お兄ちゃんはまだ目覚めない・・・
梢お姉ちゃんはずっとお兄ちゃんの傍で見守っているけど・・・

朝美「でもお兄ちゃんは必ず目を覚ますよ。」

鳥汐「信じてるんだね・・・隆士お兄ちゃんの事を・・・」

朝美「勿論だよ。」

「キキキ・・・なぁに言ってんだよガキどもがよ・・・」

鳥汐「!?」

朝美「え・・・?」

私達の後ろに見た事の無い男の人がいて話しかけてきた。
だけど鳥汐ちゃんは知ってそうって事は・・・

朝美「も、もしかして!?」

鳥汐「鼠条!?」

やっぱり十二支の人だった・・・
鼠条って名前、確かお兄ちゃんが目覚めなくなった時にいたって言う毒や酸を使うって言う・・・

鳥汐「あたしを・・・つけてたのね・・・」

鼠条「キキキ・・・最近お前が不審な行動してるって言うからよ・・・な〜にやってんだか。」

鳥汐「朝美逃げろ!!」

朝美「え!?」

鳥汐「いいから早く!!」

鼠条「キキキ・・・逃げれるとでも思ってるのか?」

鳥汐「なっ!?」

朝美「え!?」

私達の周りにはいつのまにか沢山の人がいた。
もしかして・・・

朝美「この前と同じ・・・?」

鼠条「キキキ・・・そう言う事だ。下手に抵抗しない方がいいぜ。」

鳥汐「・・・一体どうするつもりなんだ・・・?」

鼠条「キキキ・・・じゃあおとなしくついてきてもらおうじゃないか・・・」

鳥汐「・・・」

朝美「みんな・・・」













恵「アレからちょっとたつけど・・・白鳥クンはまだ目を覚まさないの?」

梢「はい・・・」

竜太郎が来てから五日、つまり梢ちゃん達がここを狙っていた奴を一人捕まえた日から五日経つ。
だけど白鳥クンはまだ目覚めてはいない。

瑞穂「白鳥君・・・」

竜太郎「俺があっちにいる間にとんでもない事になってたなんて・・・まだ信じられねぇよ・・・」

恵「でも現実なのよね・・・はぁ・・・」

竜太郎「大丈夫か?」

恵「うん・・・」

梢「・・・白鳥さんの所に行ってきます・・・」

沙夜子「分かったわ・・・」

そう言って梢ちゃんは白鳥クンの所に行った。

恵「やっぱり辛いわよね・・・」

灰原「そうだろう・・・」

沙耶「そう言えばこの前出てきた人も・・・」

珠実「早紀ちゃんですか・・・」

恵「彼女達も心配してるでしょうね・・・」







早紀(白鳥!!起きてくれって白鳥!!)

珠実(早紀ちゃん・・・)

早紀(なぁ起きてくれって白鳥!!)

恵(早紀ちゃん落ち着いて・・・白鳥クンだってすぐ目を覚ますわよ。)

早紀(お前を守ってやるって言ったのに・・・アタシは・・・アタシは・・・!!)

恵(・・・)

早紀(白鳥・・・!!)







翼「あの子が言っていた赤坂早紀って子なんだよな。」

理想奈「あの子も辛そうだったね・・・」

浩子「こんな時に辛くない人なんていないよ・・・」

花梨「だよね・・・」

三千代「そう言えばあの三人はどちらに?」

珠実「藍川さん達ならちょっと出かけてます。何でも一度脱走した牛凱の事もあるっておっしゃって・・・」

灰原「じいさん方は縁側で将棋をやってるぞ。」

まひる「のんきな物だ。」

恵「まぁ今は休んでましょうよ。」

竜太郎「特にお前はな。」

恵「分かってるって。そう言えば朝美ちゃんは?」

タチバナ「出かけると言っておられました。恐らく・・・」

花梨「あの子に会いに行ったんでしょうね。」

恵「無事だといいけど・・・」

「少なクとも・・・今お豆さんハ危険デシょう・・・」

珠実「なっ?」

明らかにヤバさ漂うこのしゃべりは・・・

珠実「部長!?」

何故か元オカ研部長が来ていた・・・

竜太郎「だ、誰?」

恵「あ〜・・・後で言うわよ・・・」

珠実「で〜何で部長が来てるです〜?明らかに場違い感バリバリですよ〜?」

部長「今はソんな事ヲ言ッてイル場合ではアりまセンヨ・・・」

珠実「ぶ、部長・・・?」

話し方と雰囲気は変わってないけど何かいつもと違っている感じがした。

沙夜子「朝美がどうかしたの・・・?」

部長「こコに来ル途中でコノような物ヲ渡サレたノです・・・」

そう言って彼女は手紙のような物を差し出した。
それを殺し屋ブラザーズの兄が受け取って読み出した。

タチバナ「これは・・・!!」

まひる「どうした?」

タチバナ「『緑髪のガキは預かった。助けたかったら藍川虎丈、栗崎神那、橙条院朱雀、蒼葉梢、土神瑞穂、白鳥隆士のみで指定する場所に来い。』と・・・」

恵「緑髪って・・・もしかして朝美ちゃん!?」

珠実「奴らに捕まったですか!?」

理想奈「で、でもこれが嘘じゃないって確証は・・・」

虎丈「悪いが嘘じゃなさそうだぜ・・・」

ちょうどその時藍川クン達が帰ってきた。

恵「ど、どう言う事よそれ!?」

朱雀「先ほど公園にこれが・・・」

そう言って朱雀ちゃんが何かをテーブルの上に置いた。
それは・・・

三千代「このリボン・・・!!」

沙耶「私らの制服の・・・じゃあ!?」

神那「あの子のだろうよ・・・うかつだったぜ・・・」

虎丈「ああ・・・多分鳥汐がいるだろうから危害は少なく済むと思ったけど逆だったな・・・」

朱雀「おそらく鳥汐ちゃんも一緒に捕らえられたのでしょうね・・・」

部長「ソレで・・・あなタ達はドうするノですカ?」

虎丈「助けに行くに決まってるだろう。」

神那「ここで行かなきゃ男が廃るってんだ。」

恵「アタシらは呼ばれちゃいないから・・・任せるわ・・・」

沙夜子「お願い・・・!!」

虎丈「ああ。」

朱雀「ですが指定してきたのが私達だけでないのが・・・」

瑞穂「私に梢ちゃん・・・そして白鳥君・・・」

翼「何か企んでるんだろうな・・・」

灰原「梢に土神を呼び出したのも白鳥絡みだろうナ・・・」

朱雀「それに隆士様は今だ昏睡状態の身・・・わざわざ呼び出す必要があるのでしょうか・・・?」

竜太郎「それもそいつらの企みじゃないのか?」

虎丈「だけど指定されてるって事は連れて行かなきゃ人質がどうなるかだ・・・連れて行くしかないだろう・・・」

珠実「ですが梢ちゃんは・・・」

梢「いいですよ・・・」

浩子「梢ポン・・・」

話を聞いていたのか梢ちゃんが戻ってきた。

梢「危険だけど・・・朝美ちゃん達も危険なのには変わり無いんです・・・ですから・・・」

瑞穂「・・・ま、そうよね。」

花梨「土神さん・・・」

瑞穂「呼ばれたからには行かなくちゃね。」

菫里「そこまで言うのならワシらは止めはせん。」

山吹「好きにするがいい。」

菫里さんと山吹さんも話しに入ってきた。

虎丈「んじゃあ、行くとするか。」

神那「ああ。」

梢「白鳥さんはどうするのですか?」

朱雀「そこはお二人が・・・」

神那「俺は槍がかさばるから虎丈な。」

虎丈「チッしょうがないな・・・」

珠実「気をつけてです・・・」

梢「うん・・・行って来るね。」

山吹「そうじゃ嬢ちゃん、これを。」

梢「これは?」

山吹さんは梢ちゃんに一本の木刀を渡した。

恵「その木刀、何なの?」

山吹「何でも無いわい・・・ただ危険な保険としての。」

竜太郎「危険な保険って何だよ・・・」

山吹「そいつが必要になったらこう言っとくれ。『過去がどうあれ、今何が必要かを見極めろ。』とな。」

梢「・・・分かりました。」

恵「梢ちゃんどう言う事?」

梢「何でもないです・・・」

梢ちゃんが秘密にしてるって事は何か大きな事なのね・・・

恵「なら聞こうとはしないわ。朝美ちゃんを助けてあげてね。」

梢「はい。」

瑞穂「行きましょう。」

虎丈「ああ。」

神那「おうよ。」

朱雀「はい。」













朝美「・・・」

私と鳥汐ちゃんは鼠条って人とその人の仲間って思う人達に連れられて何処かの倉庫と思う場所にいる・・・
手と足はロープで縛られて動く事が出来ない・・・

朝美「お兄ちゃん達を・・・どうするつもりなの・・・?」

鼠条「キキキ・・・ただ殺すってのも惜しい物があるだろ?」

朝美「そんなの・・・分かんないよ・・・」

鼠条「じゃあ分かりやすく教えてやる。これを見ろや。」

朝美「!?」

鼠条さんは自分の上着を脱いで体を私に見せた。
そこには大きな傷があった。

朝美「その傷は・・・?」

鼠条「こいつぁなぁ・・・隆士につけられた傷だよ・・・」

朝美「お、お兄ちゃんに・・・?」

鼠条「ああそうさ・・・あん時のあいつは本気で俺を殺そうとしてたなぁ〜・・・」

朝美「お、お兄ちゃんがそんな事するわけない!!」

鼠条「ほぉ〜?どうしてそう言い切れる?」

朝美「お兄ちゃんは優しい人だもん!!人を傷つけるなんて・・・!!」

鼠条「あいつが優しい?ハッ!!笑わせる。」

朝美「え・・・?」

鼠条「お前らはあいつの事を知らねぇからそう言えるんだよ。あいつぁ俺らと同族なんだよ。お前らの前じゃ演技してるだけのな。」

朝美「え・・・え・・・?」

鼠条「まぁそれを教えるにゃまだ早ぇ。さっき言った『ただ殺すってのも惜しい物』の意味を教えてやるよ。」

朝美「・・・」

鼠条「今あいつが昏睡状態ってのは知ってる。だったら今の内に今のあいつが大切にしているのを消すって事よ。」

朝美「そ、それって・・・!!」

鼠条「下手すりゃそれで隆士が目を覚ますかも知れねぇけどよ・・・そうなったらそうでいいってもんよ。」

朝美「どう言う事・・・?」

鼠条「そうなったらそうであいつの本性が見れるってんだよ・・・」

朝美「・・・」

鼠条「さぁ〜って・・・どっちに転がるか楽しみだぜ・・・」

朝美「・・・」

鼠条「ん〜?どうした怖いか?」

朝美「そ、そんな事・・・」

鳥汐「朝美・・・聞くな・・・」

朝美「鳥汐ちゃん・・・」

鼠条「へっ、勝手にしてろ。どっちにしたって白鳥を絶望のどん底に落とし込む事は確定だ・・・」

「まぁ〜だ確定って決まっちゃねぇだろ。」

鳥汐「今の声・・・」

鼠条「キキキ・・・来たか。」

朝美「あ・・・!!」

私達がいる倉庫に梢お姉ちゃん達が入ってきた。
目覚めていないお兄ちゃんと一緒に・・・

梢「朝美ちゃん!!」

朝美「お姉ちゃん!!」

虎丈「言われた通りメンバーで来てやったぜ。二人を放してもらおうじゃないか!!」

鳥汐「二人って・・・」

神那「鳥汐もそう言う扱いされてるってこたぁ助けなきゃいけねぇだろ?」

鳥汐「・・・」

瑞穂「で、これから何をするつもりなのかしら?」

鼠条「何をするかって?キキキ・・・決まってるだろ?」

朱雀「・・・これは・・・」

倉庫のあちこちから鉄の棒とか手に何かをはめていたりする私達を捕まえに来た人達が出てきた。

梢「五日前と同じ・・・」

瑞穂「でもこっちは数が数よね・・・」

朱雀「ざっと見て五十人はいるでしょうか・・・」

虎丈「見た所別にこの町だけってわけでも無いだろうな。」

神那「多分日本全国、ありとあらゆる所から金で集めたんだろうよ。」

鼠条「キキキ・・・分かってるじゃないか・・・」

虎丈「蒼葉と土神は下がってろ。朱雀、二人と隆士を頼むな。」

朱雀「ええ。神那さんは・・・」

神那「分ぁってるって。」

虎丈さんは両手にグローブのような物を、神那さんは槍の穂に切らない為だと思うけどカバーのような物をつけて構えた。
朱雀さんは前に見た銃を持っている。

神那「これで死人は出さずに済む。ま、虎丈が間違ってやっちまうか朱雀が当てる場所を間違えさえしなきゃな。」

虎丈「そんなヘマすると思ってるのか?」

朱雀「心外ですね。」

神那「分かってるから言ったのさ。」

梢「気をつけてくださいね・・・」

瑞穂「一応護身術程度なら身につけてるから多少は大丈夫だけど・・・それでもあまり戦えないと思うからそれは考えてね。」

朱雀「ええ勿論。恋のライバルとは言え友達が殺されるなんて嫌ですから。」

鼠条「おしゃべりは終わったか?じゃ、やれ。」

鼠条さんの一言で沢山の人が一斉にお姉ちゃん達に襲い掛かった。

朝美「みんな!!」

虎丈「この程度の奴らにやられるかっての!!どりゃ!!」

神那「おらおらおらぁ!!」

藍川さんはお兄ちゃんと違って手も使った格闘術で、栗崎さんは槍で殺さないように戦っている。
その光景は今まで私が見た戦いとは違っていた・・・

朝美「これが・・・お兄ちゃん達の戦い・・・」

鳥汐「この縄さえなかったら・・・!!」

虎丈「よくまぁこんだけ数そろえたぜ・・・!!」

神那「一気に数を減らしてやる!!虎丈飛べ!!」

虎丈「おう!!」

栗崎さんの掛け声と同時に藍川さんはジャンプして、栗崎さんは槍を持ちながら両手を横に広げた。

神那「巻き込まれたくない奴は逃げな!!どりゃぁーーーーー!!」

栗崎さんは回りながら広げた槍で沢山の人を倒していった。

神那「これやると目ぇ回るから辛いんだよな〜・・・」

虎丈「だったら雑魚は任せたぞ!!俺は鼠条を!!」

藍川さんは前にお兄ちゃんがやった空中でジャンプをする奴で私達の方、鼠条さんの方に飛んできた。

虎丈「隆士の分もぶっ飛ばす!!蛇掘!!」

鼠条「おっとぉ!!」

朝美「きゃっ!!」

藍川さんはとても早いパンチをしたんだと思うけどよくは見えなかった・・・
だけど鼠条さんはジャンプして避けていた。

鼠条「やってくれたな!!死ね!!」

虎丈「うおっと!!」

鼠条さんはナイフを何本か投げてきたけど藍川さんは横に飛んで避けた。
多分毒が塗ってあったんだと思う・・・

鼠条「俺の相手は雑魚を倒してからにするんだな!!」

虎丈「くそっ!!動けるか!?」

朝美「あ、縛られてて・・・」

鳥汐「わ、私も・・・」

虎丈「ま、定石か・・・っておわっ!!」

朝美「きゃっ!!」

私達に五人ほどの人が襲い掛かってきていた。
その内一番前にいた人が藍川さんに鉄の棒で殴りかかろうとしていた。

虎丈「こっちにきやがってぇ!!ぶっ飛べぇ!!」

「ごヴぁっ!?」

藍川さんは棒を右手でつかんですぐにその人に近づいて左の肘でその人に体当たりしてその人を吹っ飛ばした。
それで後ろにいた人達にその人が飛んで行ってその人達も倒れて行った。

虎丈「ふぅ・・・久々に犀撃したからいてぇっての・・・」

朝美「あ・・・」

虎丈「蒼葉達の所まで行くぞ。いいな?」

朝美「は、はい!!」

鳥汐「あ、あたしは・・・」

虎丈「おっと話しは後だ!!行くぞ!!」

鳥汐「え?わっ!!」

朝美「きゃっ!!」

藍川さんは私と鳥汐ちゃんを抱えてお姉ちゃん達の所まで一気に走っていった。

梢「朝美ちゃん!!鳥汐ちゃん!!」

虎丈「解いてやってくれ。」

瑞穂「ええ。後ろ!!」

藍川さんの後ろに今度は日本刀で切りかかろうとしていた人がいた。

朱雀「虎丈さん伏せて!!」

虎丈「うおっ!!」

バァン!!

「おぶっ!!」

朱雀お姉ちゃんが持っていた銃で襲おうとした人を撃った。
確か弾はゴムだって言ってたけど大丈夫なのかな・・・

虎丈「無茶しやがって・・・」

神那「くっちゃべってる暇あったら手伝え!!雑魚でも数の問題あるだろうがよバカヤロウ!!」

虎丈「今行ってやるって!!」

藍川さんはすぐに栗崎さんの所に向かって一緒に戦い始めた。

朝美「お兄ちゃんは・・・」

梢「うん・・・まだ・・・」

瑞穂「大丈夫だから・・・にしてもきつく縛ったわねこれ・・・!!」

鳥汐「あたしは・・・別にいいのに・・・」

朱雀「今はそんな事言わないの。それより見せてください。」

梢「はい。」

朱雀「・・・ちょっと痛いかもしれませんが・・・我慢してくださいね。」

朝美「え?そ、それって・・・」

バァン!!

朝美「ひゃっ!?」

すぐ後ろで銃声がした・・・
もしかして朱雀お姉ちゃん・・・

朱雀「ゴム弾でも零距離なら縄ぐらい切れますわ。」

鳥汐「朱雀お姉ちゃん・・・結構無茶する・・・」

朝美「・・・早く言ってよ・・・」

とりあえずそれしか方法が無かったから縄を全部それで切った。

瑞穂「人質はこれで救出成功ね・・・」

虎丈「だったらすぐに逃げろ!!俺と神那はこいつらを片付けてから行く!!」

朱雀「分かりました!!皆さん行きましょう!!」

瑞穂「白鳥君は私と梢ちゃんでね!!」

梢「はい!!」

神那「おいおい!!ちったぁ心配してくれって!!」

朱雀「信じてるから言わないだけです!!」

神那「あそ・・・」

朝美「気をつけてね!!」

神那「ありがとよ!!」

朱雀「行きましょう!!」

私達は先に倉庫を出て逃げようとした。
だけど倉庫の外は・・・

瑞穂「あ、あっらぁ・・・」

梢「・・・これは・・・逃げれませんね・・・」

倉庫の外にはまた沢山の人が待ち構えていて・・・
とても逃げれそうに無かった・・・

虎丈「おいおいおい・・・冗談じゃねぇぞ・・・」

倉庫から藍川さんと栗崎さんもやってきたけど・・・
流石に厳しそう・・・

瑞穂「百人・・・で済むかしら・・・」

梢「分かりません・・・」

神那「まぁこう言うのはどこか一点を強行突破するのが定石さ。」

鳥汐「上手く行くの・・・?」

神那「んなの知らん。」

瑞穂「無責任・・・」

神那「何とかなるって。」

虎丈「じゃあ抜けるポイントを見極めなきゃな・・・えっと・・・」

鼠条「そんな事してる暇あると思うのか〜?やっちまいな。」

また一斉に襲い掛かってきた。

神那「ちぃっと待ってろやおい!!」

梢「それは無理なんでは・・・」

虎丈「こうなったらただつっき抜けるだけだ。行くぞ!!」

梢「はい!!」

朝美「行こう!!鳥汐ちゃん!!」

鳥汐「あたしは・・・」

朝美「いいから!!」

私は鳥汐ちゃんの手を引いてみんなの後についていった。
前の方を藍川さんと栗崎さんが道を作っているけど・・・
ちゃんと逃げれるか分からなかった・・・

梢「だ、大丈夫ですか!?」

虎丈「こ、この程度何でもねぇよ!!」

神那「だけどちったぁ援護欲しいぜ!!」

朱雀「分かってますけど・・・弾数が・・・」

朱雀さんは走りながら銃を撃って藍川さん達を援護しているけど・・・

梢「囲まれてるって・・・こう言う事を言うんですね・・・」

私達は周りを全て囲まれて逃げるのは難しかった・・・

神那「雑魚を数で集めてきやがって・・・頭の悪い考えしてきやがって・・・」

鼠条「キキキ・・・塵もつもれば何とやらだぜ・・・」

神那「あぁあぁ・・・その根性には敬意を表すぜ・・・」

鼠条「で・・・どうするんだ?」

虎丈「三十六系逃げるしかないけど・・・物の見事に囲まれちまってるからな・・・」

梢「どうしましょう・・・」

虎丈「多分目覚めてない隆士もつれて来いって言った理由は・・・」

神那「これも入ってるのだろうな・・・」

鼠条「キキキ・・・」

朝美「ううん・・・あの人がお兄ちゃんを呼んだのは・・・お兄ちゃんの大切な物・・・お姉ちゃんを殺す事・・・」

瑞穂「ま・・・それも当たり前な理由でしょうね・・・梢ちゃんを呼んだ理由はね・・・」

朝美「だけど一番の目的は・・・お兄ちゃんを絶望に落とすって言ってた・・・例え目覚めてもって・・・」

神那「はぁ?目覚めてもってどう言う事だよ?」

朝美「目覚めたら・・・お兄ちゃんの本性が見れるって・・・」

梢「もしかして・・・!!」

朱雀「梢さんは・・・何か知っているのですか・・・?」

梢「・・・少しだけですが・・・」

瑞穂「それってさっき言ってた『過去がどうあれ、今何が必要か見極めろ』と関係があるの・・・?」

梢「はい・・・ですが・・・」

虎丈「言えない事ならそれでいい。過去よりも今と未来が必要なんだ。」

鳥汐「今と・・・未来・・・」

神那「ま、そう言う台詞はこの状況を打破してからにしろよな。」

虎丈「確かに・・・」

鼠条「キキキ・・・そう簡単に出来るとでも?」

「やってみなくては分からんじゃろ?」

鼠条「おおう?」

朝美「み、みんな!?」

少し離れた場所に鳴滝荘にいるはずのみんながいた。

山吹「もしかしてはと思ってきては見たら・・・多勢に無勢にしてもこれはやりすぎじゃろう・・・」

恵「と言ってもアタシらは戦力にならないし・・・むしろ足手まといと言うか。」

「交代で護衛が遅れた分、私も戦いましょう。」

みんなと一緒にどこか楓さんや要さんに似ている人がいた。

朱雀「梓!!あなたが来てくれましたか!!」

梓「お嬢様達に手を出そうとする者は・・・何人たりとも許すわけにはいきません!!」

まひる「朝美に手を出したお前達許さない。タチバナ。」

タチバナ「はっ!!」

山吹「この老いぼれでも少しは戦えよう。まずは嬢ちゃん達をあそこから逃がす事が先決じゃ。」

タチバナ「分かりました。」

梓「ええ。」

翼「こう言う時に何も出来ない自分ってのはほんと嫌になっちまうぜ・・・」

鼠条「キキキ・・・だったらそっちにも何人か向かわせりゃ一網打尽だぜ・・・」

朱雀「いけません・・・皆様逃げて!!」

鼠条「遅ぇっての。行けや。」

鼠条さんの命令で私達を取り囲んでいた人達の半分ほどがみんなの方に向かっていった。

梢「逃げてください!!」

珠実「大丈夫ですよ梢ちゃん。何故なら・・・」

灰原「半分がこっちに来たって事はお前達が逃げれる難易度も半分に下がったって事だ!!」

鼠条「なっ!?」

虎丈「そうか!!神那、朱雀!!」

神那「合点!!もうイッチョ一点突破だ!!」

朱雀「弾は込めてます!!行きましょう!!」

瑞穂「朝美ちゃん、鳥汐ちゃん。白鳥君をお願い。」

朝美「え?」

瑞穂「私だって手伝いは出来るわよ。」

そう言う瑞穂さんの手にはあのバットがあった。

梢「ごめんなさい瑞穂さん・・・私は何も出来なくて・・・」

瑞穂「何も出来ないわけじゃないでしょ?今白鳥君を支えてるのは誰?」

梢「瑞穂さん・・・」

瑞穂「守ってあげてて、白鳥君を。」

梢「はい!!」

朝美「私達も手伝うよお姉ちゃん。」

鳥汐「・・・あたしも。」

虎丈「それじゃあ・・・行くぞ!!」

朝美「はい!!」

私と鳥汐ちゃんはお姉ちゃんと一緒にお兄ちゃんを支えて走り出した。
今お兄ちゃんを守れるかどうかは私達にかかっていた・・・
その責任は重く感じられたけど負けたくは無い。
だってお兄ちゃんは鳴滝荘を守ってくれる・・・




守り神様なんだもの・・・





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