十一の調


想い出








隆士「はぁ〜・・・疲れた〜・・・」

「お疲れ様です。」

ある日僕は一度実家に戻り再び鳴滝荘へとんぼ返りしていた。

隆士「渚さんもすいませんね・・・こんな事で呼び出したりしちゃって・・・」

渚「いえいえ、隆士様の頼みであれば。」

渚さんは楓さん同様朱雀さんに仕えてる人。
僕はこの人の運転してる車に乗っている。
どうしてこうなったのかと言うと・・・









恵(そう言えば他の三人って元々どんな感じだった子なの?)

梢(そう言えばそうですね。)

珠実(気になるです〜)

朝美(気になる気になる〜)

沙夜子(る〜)

恵(と言う事で他の三人が写ってる写真を持ってくるのだ白鳥三等兵!!)









と言う事で僕は実家へ向かわされアルバムを適当に持ってくるハメになったのだ。

渚「大変ですね隆士様も。」

隆士「もう慣れたよ・・・」

疲労がかなり溜まっている中僕は鳴滝荘へやっと到着した。

隆士「ありがとうございます〜・・・」

渚「それでは。」

隆士「ただいま〜・・・」

梢「あ、おかえりなさい。大丈夫ですか?」

隆士「頼まれたようにアルバム持って来ましたよ〜・・・」

梢「お疲れ様です。皆さんはいつも通り。」

隆士「うん・・・」

僕はいつも通り縁側で集まっているみんなの所に向かった。

恵「お、帰ってきたね。で、写真は?」

隆士「持って来ましたよ。」

僕はアルバムの中から僕ら四人が写ってる写真を取り出した。

梢「え〜っと。あ、白鳥さんはお変わりありませんね。」

朝美「この女の人が朱雀お姉ちゃん?」

珠実「ほほ〜気品漂う和風美少女ですね〜」

元の朱雀さんは黒く長い髪がとても印象的な可愛い人だった。

灰原「となるとこの満面の笑みでピースしてるこいつが栗崎ダナ?」

隆士「はい。」

神那は校則違反間違い無しの金髪で実は僕よりも背が低かったりするんだ。

恵「んじゃ残ったこの横向きのクールっぽさが出てるのが藍川クンね。」

虎丈は僕よりも背は高く体つきもよく黒髪の普通の人だ。

隆士「後は勝手に見てるなり何なりしててください・・・僕は疲れたんでもう寝ます・・・」

梢「あ、はい。」

そう言って僕は自分の部屋に戻って寝る事にした。









梢「えっとこれは・・・」

白鳥さんがお休みになられた後も私達は白鳥さんのアルバムを見ていました。

朝美「中学生の頃のお兄ちゃんも優しい顔してるね。」

恵「おひょ〜〜小さい頃のだ〜〜かわええ〜〜〜!!」

珠実「桃さん落ち着くです〜」

灰原「まったくだ・・・」

沙夜子「あら・・・?」

梢「どうしたんです沙夜子さん?」

沙夜子「これ・・・」

沙夜子さんが持ってる写真に写ってるのは小学校高学年くらいの白鳥さんと一人の女の子でした。

梢「お友達でしょうか?」

朝美「とっても仲がよさそうだね。」

灰原「あれ?こいつ・・・」

珠実「どうしたです?」

灰原「何か忘れてるような・・・う〜ん・・・」

恵「バラさんも歳?」

沙夜子「それに・・・」

梢「それに?」

沙夜子「この子が写ってるのはこれだけよ・・・」

女の子が写ってる写真はこの一枚だけでした。

恵「言われてみれば・・・」

珠実「それにこの頃の写真もこれだけで一気に中学生まで飛んでるです〜」

梢「誰なのかなこの子は?」

朝美「ん〜・・・」

その事を頭の隅に置いたまま私達はその後もアルバムを見続けました。













隆士(ん・・・)

どの位経ったか分からないけど目を覚ますと僕は炊事場でご飯を食べていた。

神那(お、やっと起きたか。)

隆士(あ、ああおはよう。今は神那が?)

朱雀(ええ。)

虎丈(俺らもさっきまで肉体の疲労で代わろうとは思ってなかったから動き出したのついさっきだけどな。)

隆士(はは・・・みんなは?)

神那「もう寝てるぜ。今何時だと思ってんだよ。」

隆士(え?)

僕は時計を見た。
既に一時だ。

隆士(ぼ、僕こんなに寝てたの?)

朱雀(はい。)

虎丈(アルバムは蒼葉が整頓して部屋に置いてあるぜ。)

隆士(ああ。)

神那「所でよ、一枚だけ女の子と写ってるのがあったな。」

隆士(え!?)

朱雀(一枚だけと言う理由で何なのかと言う議論が交わされましたが・・・)

うかつだったな・・・
あの子の写真が紛れてたなんて・・・

隆士(友達さ。もう長い事会ってないけど・・・)

虎丈(そうか。ま、悪いが俺はもう寝るぜ・・・眠ぃったらねえ・・・)

神那「んじゃ俺も飯食ったし代わるぜ。」

隆士(うん。)

そして僕と神那は交替した。

神那(じゃ、俺も寝るわ。)

朱雀(私も・・・おやすみなさい・・・)

隆士「うん。おやすみ。」

三人は眠りについた。
起きたばかりの僕は眠たくは無い。

隆士「・・・ちょうど今だな。」

僕は部屋に戻ってコートを羽織り鳴滝荘を出た。

隆士「三人とも寝てるからちょうどいいや・・・」

そして僕は虎丈から教わった歩行術である場所を目指した。

隆士「七月二十六日・・・今日はあの子の・・・」









隆士「ふう・・・やっぱり徒歩じゃ時間かかるな・・・」

結構時間掛かったけど僕は目的の場所、霊園に着いた。

隆士「・・・」

僕はある場所を目指し霊園を進んだ。
丑三時の霊園は怖いって聞くけど僕はそんな事を考えず一つの場所に向かった。

隆士「あ・・・」

ちょうど目的の場所の前に一人の男が立っていた。

隆士「・・・」

僕はその人物に確信があったから迷わず向かった。

隆士「・・・やっぱりそうだったんだ・・・竜汪。」

竜汪「・・・」

目的の場所、お墓の前にいたのは竜汪だった。

隆士「やっぱりあの時から毎年・・・?」

竜汪「ああ・・・」

隆士「そう・・・」

僕は墓の前に立ち合掌した。

竜汪「華は添えないのか。」

隆士「知ってるくせに・・・僕にそんな資格は無いって・・・」

竜汪「そうだな・・・」

隆士「お前が僕を狙う理由が分かったよ・・・兎連が教えてくれた・・・」

竜汪「そうか。」

隆士「竜汪。」

竜汪「ん?」

隆士「僕はお前に斬られる理由がある。だけど今は死ぬわけにはいかない。あの場所を狙う奴を全員捕まえたら・・・その時は・・・」

竜汪「それであの大家はどうするんだ?」

隆士「・・・」

竜汪「隆士、俺と戦うならもう一度刃を取れ。」

隆士「それは・・・」

竜汪「お前自身気付いてるはずだ。その事に。」

隆士「うん・・・だけど・・・」

竜汪「牛凱の時、一太刀だったが見せてもらった。何故あの時は。」

隆士「・・・ただ全力で守りたいって思って・・・それで気付いたら・・・」

竜汪「優しき修羅か・・・」

隆士「本当は振るいたくない・・・どんな理由があっても・・・それで僕は・・・」

竜汪「だが自分がやらねばまた人が傷付く。それも承知の事だろう。」

隆士「そう・・・だからどうしたらいいか分かんないんだ・・・今度同じ事があったらまた僕は・・・」

竜汪「己に勝つ事が出来るのは己自身だ。でなくては梨音は報われない。」

隆士「分かってる・・・ただまだ答えが出て来ないんだ・・・」

竜汪「・・・その闇が消えた時、決着をつける。死ぬなよ・・・」

そう言って竜汪は去って行った。

隆士「竜汪・・・」

竜汪が去った霊園に夏とは思えない冷たい風が吹いた。

隆士「今の僕にはあいつを・・・だけど僕は・・・」









隆士「ふぅ・・・」

夜が明ける前に鳴滝荘に戻った僕は縁側に座ってずっと考えていた。
竜汪の事、守る為に必要な事、僕の過ちと彼女の事を・・・

隆士「どうしたらいい物か・・・」

「・・・白鳥さん?」

隆士「ん?」

気付いたら僕の後ろにパジャマ姿の梢ちゃんがいた。

隆士「あ、梢ちゃんおはよう。」

梢「おはようございます。早いですね。」

隆士「起きたのが遅くて眠れなかっただけさ。梢ちゃんは?」

梢「私はシャワーでも浴びてこようと・・・」

隆士「なるほどね。寝癖あるよ。」

梢ちゃんの後頭部にピンっと立った寝癖があった。

梢「え?やだ・・・!!」

隆士「はは・・・あ。」

梢「どうしました?」

今の梢ちゃんの仕草が彼女のようだった・・・

隆士「な、何でもないよ・・・」

梢「そうですか?あ、朝食はもう少し待っててくださいね。」

隆士「うん。」

梢ちゃんはそう言うとお風呂場に向かった。

隆士「さてと・・・そう言えばアルバムは・・・」

これ以上あの子の事を詮索されちゃ困るので僕は部屋に戻り写真を回収しようと思った。

隆士「あれ?あの写真が無い・・・」

部屋の隅々も探してもあの写真だけ無かった。

「これの事か?」

隆士「!!」

扉の方から声がした。
振り返ると灰原さんがあの写真を持って立っていた。

隆士「灰原さん・・・」

灰原「寝ないでずっと思い返していたがどうも思い出せねぇ・・・」

この人は知っているんだ・・・
今ならまだごまかせるけど・・・

隆士「灰原さん・・・」

僕は話す事にした。

隆士「教えます・・・その子の事を・・・」

灰原「そうか・・・」

僕は灰原さんに知っている事を話した。
彼女の事、僕の過去、過ち、竜汪との因果関係を・・・

隆士「以上です・・・」

灰原「なるほどナ。これで思い出せなかったモヤモヤが晴れたぜ。」

隆士「灰原さんはいつ僕の事を?」

灰原「前に一度だけ頼まれ事でお前の所に来たんだ。そこで色々とナ。」

隆士「なるほど・・・そうですか。」

灰原「で、お前はどうするんだ?」

隆士「まだ分かりません・・・」

灰原「急ぐなとは言わねぇ。ただ梢を不幸にするような答えは出すなよ。」

隆士「心がけます・・・」

灰原「ならいい。頑張れヨ。」

そう言って灰原さんは部屋を出て行った。

隆士「・・・どうしたらいいか・・・梨音・・・」

問いかけても彼女はいない・・・
いるはずも無い・・・













恵「いや〜・・・今日もいい天気ね。」

珠実「です〜」

梢「そうですね。」

隆士「うん。」

特にする事が無いので私達は中庭でのんびりとしていました。

隆士「朝美ちゃん達は内職だよね。」

恵「そうよ。にしてもする事が無いと暇で暇で仕方ないわね・・・」

隆士「まぁ僕には嬉しい事ですけどね。」

珠実「確かにそうです〜」

恵「そう言えば気になったけどさ〜」

隆士「何です?」

恵「朱雀ちゃんって戦えるの?」

隆士「朱雀さんは・・・まぁ一応。」

梢「朱雀さんも何か武芸を?」

隆士「いや、確か・・・」

「説明しましょう。」

恵「わっ!!また・・・って楓って人じゃ無い?」

突然楓さんに良く似た人が現れました。

隆士「要さん・・・あなたもいたんですか?」

梢「かなめさんですか?」

要「はい。所で隆士様。朱雀お嬢様に。」

隆士「分かったよ。」

白鳥さんは朱雀さんに代わりました。

朱雀「要、アレはちゃんと持ってきましたか?」

要「はい。こちらに。」

そう言って要さんは朱雀さんに何かを渡しました。

梢「何ですかそれは?」

朱雀「これは私にとって必要な・・・物ですよ。」

梢「え?」

朱雀さんの手には銃がありました。

恵「じゅじゅじゅ、銃!?」

朱雀「大丈夫ですよ。本物ですが弾はゴム弾を使っているので殺傷能力はありません。」

恵「いやいやいやいや!!本物って時点でやばいじゃん!!」

朱雀「いえいえいえ、許可は取ってありますので。」

恵「そ、そう言う問題かな・・・?」

朱雀「そうですよ。」

珠実「結構怖い所あるです〜」

梢「そ、そうだね・・・」

朱雀「にしてもパイソンだけ?チェスターと89式は?」

要「申し訳ありませんが・・・」

恵「もしかしてまだあったの?」

要「はい。ショットガンとアサルトライフルを一丁ずつ。」

恵「アンタ日本の法律滅茶苦茶無視ってるしょ・・・」

朱雀「まぁまぁお気になさらず。」

梢「は、はぁ・・・」

朱雀「それに弾も。」

要「はっ」

そして今度は銃の弾が入っている袋を出してきました。

朱雀「八十四発ですか。まぁ足りなくなったらまた言えばいいんですし。」

そんな事をいいながら朱雀さんは銃に弾を込めました。

朱雀「ありがとう要。戻っていいわよ。」

要「はっ」

そう言って要さんも何処かに行ってしまいました。

恵「ま、まぁこれで一応みんな戦えるってわけね。」

朱雀「はい。では隆士様に。」

隆士「にしてもかさばるな〜・・・」

梢「そうですよね・・・栗崎さんの槍もそうですし・・・その弾は何処に置けば・・・」

珠実「白鳥さんの部屋にでも置いておけです〜」

隆士「そだよね・・・」

白鳥さんは袋を持って自分のお部屋に戻られました。

恵「そう言えばバラさんは?」

梢「灰原さんはお部屋で休んでいます。」

珠実「寝すぎですね〜」

梢「はい・・・朝食もいらないと言ってましたし。」

恵「バラさんも若くないんだし、夜更かししすぎじゃないの?」

珠実「そうですね〜」

梢「・・・」

珠実「梢ちゃんどうしたです〜?」

梢「え?な、何でもないよ。やっぱり物置使っていいって言ってくるね。」

そう言って私は白鳥さんの所に向かいました。

梢「あ、あの白鳥さん。」

隆士「梢ちゃん?どうしたの?」

梢「物置、使っていいですよ。」

隆士「そう?ありがとう。」

梢「あ、それと・・・」

隆士「ん?」

梢「灰原さんから・・・少しだけ聞きました。」

隆士「・・・」

梢「あ、あの・・・」

隆士「何々聞いたの?」

梢「白鳥さんがあの写真の子の為に・・・罪を犯した事を・・・」

隆士「そう・・・それじゃその子の事も・・・」

梢「あ、いえ。聞いたのは先ほどの事で白鳥さんがある事を辞めたと言う事しか・・・」

隆士「じゃあその子がどうなったのは・・・」

梢「聞いていません・・・」

隆士「そう・・・ならよかったよ・・・」

梢「え?」

隆士「いや、それよりも僕が怖くないの?」

梢「いいえ。白鳥さんは白鳥さんです。あの歌のライオンがあなたなら私はタンポポです。怖くなんか無いです。」

隆士「・・・」

梢「白鳥さん・・・きゃっ!?」

突然白鳥さんが私を抱きしめてきました。

梢「し、白鳥さん!?」

隆士「怖いんだ・・・僕は・・・」

梢「え・・・?」

隆士「僕のせいで誰かが傷ついて・・・それを僕は見ている事しか出来ないのを・・・」

梢「・・・」

隆士「そして助けようって思って・・・修羅と化して抑えようの無い化物になってしまう自分が・・・」

梢「大丈夫ですよ。」

隆士「・・・?」

梢「白鳥さんは白鳥さん。どんな事があってもそれは紛れようの無い事実です。」

隆士「梢ちゃん・・・」

梢「ですからそんなに深く悩まなくてもいいですよ・・・」

隆士「・・・ありがとう・・・もしそうなった時は・・・」

梢「言わないでくださいね。その先は・・・」

隆士「・・・うん・・・」

梢「白鳥さん・・・くじけないでくださいね・・・もし疲れても私達がいますから・・・」

隆士「・・・うん・・・だから僕も頑張るよ・・・みんなを守り通して見せる。」

梢「はい・・・」

私達はずっと抱き合った。
多分桃乃さんか珠実ちゃんが見てるかもしれないけど・・・
私達は強く抱き合った。













恵「どうしたのかな梢ちゃん?」

珠実「白鳥さんが心配なだけです〜・・・」

恵「どしたの珠ちゃん?な〜んかご機嫌斜めっぽいけど。」

珠実「何でもないです〜・・・」

ここ数日、あの事件以来私は白鳥さんに怒りを覚えている。
どんな理由があれ梢ちゃんを悲しませ、苦しめているあの人を・・・

恵「・・・珠ちゃんの気持ちも分からなくは無いよ。だけど白鳥クンだって被害者なのよ。」

珠実「分かってるです・・・でも・・・」

恵「・・・別に許せって言ってるわけじゃないのよ。白鳥クンの事も考えてやれって事。まぁあたしが言えた口じゃないけどね。」

珠実「白鳥さんの・・・?」

恵「彼だって好きでこんな事になったんじゃないんだから。そしてその中で守ろうと必死で頑張ってるのよ。」

珠実「・・・」

そんな事は分かっている。
白鳥さんが頑張っている事は良く分かっている。
だけど心のどこかでまだ許す事が出来ていない・・・

珠実「・・・」

恵「珠ちゃん・・・」













隆士「・・・」

梢「白鳥さん・・・ずっとこうしててください・・・」

隆士「僕もこうしていたいけど・・・見つかったら珠実ちゃんに何されるか分からないから・・・」

梢「そうですね・・・」

隆士「それじゃこの朱雀さんの弾は物置に置いてていいんだね?」

梢「はい。」

朱雀(すみません・・・私のはかさばる物で・・・)

隆士(それ言ったら僕なんて。)

神那(だよな。)

梢「どうしました?」

隆士「あ、今みんなとちょっと話してただけさ。」

梢「そうでしたか。では私はちょっとお買い物に行って来ますね。」

隆士「大丈夫?付いて行こうか?」

梢「大丈夫ですよ。珠実ちゃんも一緒ですから。」

隆士「なら安心かな?じゃあ僕は課題でもやっているよ。」

梢「はい。頑張ってくださいね。」

そう言って梢ちゃんは部屋を出た。

隆士「さぁてと。早く課題を終わらせてあいつらを何とかしないとね。」

虎丈(そうだよな。まだ十人残ってるってのが厄介だがな。)

朱雀(いいえ虎丈さん。十一人ですよ。)

虎丈(あ、そうか。あいつらのトップが残ってたな。)

神那(まだまだこれからだな。)

隆士「うん。」

そんな事を話して僕は課題に取り掛かろうとした。
その時だった。

梢「きゃあ!!」

隆士「!?」

梢ちゃんの悲鳴が聞こえてきた。

隆士「まさか!!」

僕は朱雀さんの銃と弾を持って部屋を出た。
そのすぐ近くに倒れている梢ちゃんを確認した。

隆士「梢ちゃん!!」

珠実「白鳥さん危ないです!!」

隆士「え?」

珠実ちゃんの方を向いた瞬間僕の頬すれすれの所を何かが通過した。

隆士「狙撃!?」

恵「早く物陰に隠れて!!」

隆士「くっ!!」

よく見ると珠実ちゃんも桃乃さんも木の陰に隠れていた。
だけど僕は・・・

隆士「梢ちゃんを見捨てるわけにはいかないんだ!!」

危険を承知で梢ちゃんに寄った。

珠実「危ないです!!」

隆士「わっ!!」

また狙撃されたが何とか避ける事が出来た。
その隙に僕は梢ちゃんを抱えて部屋に飛び込んだ。

隆士「ごめんね梢ちゃん・・・」

朱雀(どうやら怪我はしていませんね。気を失ってるだけです。)

神那(こんな事をする奴って言ったら一人だけだ。)

虎丈(ああ。本格的に攻めてきやがったな・・・!!)

隆士「羊宗・・・!!」

僕は梢ちゃんを部屋に寝かせて部屋を出た。

隆士「相手があいつなら・・・朱雀さん。」

朱雀(分かりました。)

僕は朱雀さんと交代した。

朱雀「恵さん、珠実さん!!そこから動かないでください!!」

恵「わ、分かったわ!!」

朝美「何々!?どうしたの!?」

灰原「何だぁ!?」

ちょうど同時に朝美ちゃんと灰原さんが出て来た。

朱雀「駄目です!!部屋から出ないで!!」

朝美「え?きゃっ!!」

その時朝美ちゃんの近くを銃弾が通った。

珠実「早く隠れるです!!」

灰原「お、おう!!」

すぐに二人も部屋に隠れた。

隆士(羊宗もここを知ったなんて・・・)

虎丈(この様子じゃほとんど知ってるんじゃないか?)

朱雀「詮索は後にしてください。今は羊宗の狙撃ポイントを確定する事です!!」

神那(分かるか?)

朱雀「私達の場所、そして五号室が狙撃されたと言う事から双方が見える炊事場の方角のビルからでしょうね。」

隆士(こう言うのって屋上からやるんじゃないの?)

朱雀「そうですね。では、試しに!!」

ガゥン!!

朱雀さんは狙撃ポイントと思う場所にゴム弾を撃った。

朱雀「当たりかはずれか・・・」

柱の影から撃った場所を覗いた。
その瞬間その柱に銃弾が当たった。

朱雀「今のでこちらが分かったようですね・・・」

虎丈(やばくないか?)

朱雀「ですがこちらが撃った際に一度狙撃が止んだ。つまり当たりです!!要!!」

要「はっ!!」

ちょうど狙撃ポイントからは見えない場所に要さんが現れた。

朱雀「羊宗はあそこです!!お願いします!!」

要「分かりました!!」

そう言うと要さんも狙撃が出来る銃を取り出して中庭に飛び出した。

朱雀「私達は羊宗の元に向かいます。ここを!!」

要「はっ!!」

神那(俺の槍も!!)

朱雀「今は急ぎますので今回は任せてください!!」

神那(あいよ。)

そう言って朱雀さんは弾をいくつか持ち、鳴滝荘を飛び出した。

隆士(急がなきゃみんなが危ない!!虎丈お願い!!)

虎丈(ああ。朱雀代われ!!)

朱雀「はい!!」

今度は虎丈に代わり、歩行術で建物の壁や屋根の上を伝って狙撃ポイントを目指した。

隆士(どうして奴らは関係無いみんなを巻き込むんだ・・・!!)

神那(あの事を知っちまった時点でもう無関係じゃないんだろうよ奴さんには!!)

朱雀(許す訳にはいきませんね・・・)

虎丈「ああ。だから急ぐぜ!!」

虎丈は全力で走り、狙撃ポイントだと思われるビル前に到着した。

朱雀(ここに間違いありませんね。)

虎丈「どうやって行く?前から行くか?」

朱雀(それだけしかありませんね。ここからは私に。)

虎丈「ああ。」

朱雀「では、行きます!!」

朱雀さんはビルに入り屋上を目指した。







隆士(いた、羊宗だ。)

屋上に到達し、そこには鳴滝荘を狙っている黒いスーツを着た男がいた。

朱雀「得物はPSG1ですね・・・リロードのタイミングを見計らって仕掛けます。」

隆士(お願い。)

虎丈(お、弾切れだ。)

羊宗は銃の弾が切れてマガジンを取り替え始めた。

隆士(今だ!!)

朱雀「羊宗!!」

羊宗「何!?」

ガゥンガゥン!!

羊宗「くっ!!」

羊宗は横に飛んでゴム弾をかわした。

羊宗「良く気付いたな白鳥隆士!!いや、橙条院朱雀!!」

羊宗は避けたと同時にマガジンを取り替えてこちらを撃ってきた。

朱雀「きゃっ!!」

隆士(実弾!?)

虎丈(そりゃ当たり前だろ!!相手は腐ってもスナイパーだぞ!!)

朱雀「この距離だとスコープ越しじゃない分狙いはカンになるでしょうね・・・弾数では劣りますが小回りが利く分こちらが不利と言うわけでもありません!!」

説明しながら朱雀さんは今ある分を全て撃ち、シリンダーを出してリロードをした。

朱雀「羊宗!!何故梢さんを!!」

羊宗「そう言う命令だからだ!!」

朱雀「命令でしか動く事が出来ないあなたらしいですね!!」

羊宗「ああそうさ!!俺はこの生き方で十分なんだよ!!」

朱雀「それは人間の生き方とは思えませんね!!」

羊宗「いいんだよこれで!!」

二人は言い争いながら銃撃戦を繰り広げた。
どのくらいかは分からないけど始まってそれほど経っていないが遠くパトカーが近づいてくる音が聞こえた。

朱雀「まずいです!!」

羊宗「くそっ!!」

一瞬の隙を付いて羊宗はドアに飛び込んだ。

朱雀「しまった!!」

隆士(逃げられた!!)

朱雀「すみません・・・すぐに後を!!」

神那(もう遅い!!すぐに警察が来ちまう!!)

隆士(それだったらあいつも・・・いや、無理か・・・)

あいつはどんな場所にでも隠れられる。
今追いかけてももう隠れてるだろうし警察に出くわして厄介な事になるだろう。

朱雀「ではどうしたら・・・」

虎丈(この場は俺らも逃げるしかない。代われ。)

朱雀「はい。」

再び朱雀さんと虎丈は交替した。

神那(で、どうやってずらかるんだ?)

虎丈「このまま一気に下に飛び降りる。」

隆士(・・・は?)
神那(・・・は?)
朱雀(・・・は?)

僕らは耳を疑った。
一気に飛び降りる?

神那(あ〜・・・ちょっと良く聞こえなかったな。で、何て?)

虎丈「だから飛び降りるんだよ。」

隆士(はぁーーーーーーー!?)
神那(いぃーーーーーーー!?)
朱雀(えぇーーーーーーー!?)

三人の声がはもった。

虎丈「しょうがないだろう!!行くぜ!!」

隆士(ちょちょと!!)

虎丈「はっ!!」

声だけの制止を振り切り虎丈は道路に面していない場所から飛び降りた。

隆士(うわぁーーーーーー!!)
神那(Noォーーーーーー!!)
朱雀(いやぁーーーーーー!!)

虎丈「大丈夫だ!!こうすれ・・・ばっ!!」

隆士(ええ!?)

虎丈は落下しながらビルを足蹴にし、落下の速度を緩めた。

虎丈「よし、着地成功。」

隆士(成功じゃなーーーーい!!)
神那(成功じゃねーーーーよ!!)
朱雀(成功ではなーーーーい!!)

虎丈「んだよ。鹿駆が使える俺だから事だぜ。」

隆士(そう言う話じゃ・・・もういい。早く帰ろうよ・・・)

虎丈「ああ。」

そして虎丈のまま僕らは鳴滝荘に向かった。

隆士(梢ちゃん大丈夫かな・・・何だか胸騒ぎがする・・・)

気を失った梢ちゃんがとても気がかりだ。
僕はまた彼女に怖い思いをさせてしまった。
守るなんて言ったのに・・・
梨音の時のように僕には・・・




人を助ける事が出来ないのだろうか・・・





十の調
十二の調
戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送