世界で一番好きだった

誰よりもあなたの事が好きだった

あなたといられれば幸せだった

あなたはもういないけど

私に幸せをくれたあなた

だからあなたに

伝えたい言葉があるの・・・






朝美「お母さん?」

沙夜子「?」

朝美「どうしたのお母さん。まだ内職終わってないよ?」

沙夜子「そう?」

鳴滝荘に冬が訪れたある日、いつもの様に沙夜子は縁側に座っていた。

朝美「もうしっかりしてよ。私先にやってるね。」

沙夜子「ええ・・・」

そう言って朝美は五号室に入って行った。しかし沙夜子はまだ空を眺めていた。

沙夜子「・・・」









隆士「何だか最近沙夜子さんおかしくない?」

その日の夜、沙夜子以外の住人が炊事場に集まって話し合っていた。

梢「そうでしょうか?」

恵「いくらなんでも気のせいでしょ。沙夜ちゃんはいつもあんな感じよ?」

珠実「ぼ〜っとしてるのはいつもの事です〜」

恵「そうよ。気のせい気のせい。」

灰原「そうか?俺もいつもと何だか違うと思うぞ。」

恵「バラさんも〜?どう見たっていつも通りの沙夜ちゃんじゃない。」

隆士「それはそうなんですけど・・・何だか寂しい目をしているような気がして・・・」

灰原「俺もそう思う。いつも残ってるから何かいつもと違う感じがしていたんだ。」

朝美「そうかな・・・私もいつもと変わらないと思うけど・・・」

珠実「娘の朝美ちゃんもそう言ってる事ですし気のせいですって〜」

隆士「そうかなぁ・・・」

梢「でも本当に何かあるのだとしたら・・・どうして私達に話してくれないのでしょうか?」

灰原「俺らに話せない事なのか・・・それとも話す必要の無い事か・・・」

朝美「お母さんに限ってそれは無いと思うけど・・・」

恵「だぁ〜から気のせいだって言ってるじゃない。この前の事から気にしすぎよ。」

朝美「この前のはまひるちゃんが連れて帰っただけだから・・・」

珠実「強制連行の如くですけど〜」

朝美「そ、それは・・・」

恵「気のせいよ。とりあえずそう言う事にしとこ。」

隆士「本当に気のせいなのかな・・・」

灰原「ん〜・・・」









朝美「・・・ん・・・?」

その日の夜、朝美は夜中に不意に目が覚めた。

朝美「まだ夜中よね・・・もう一度寝直そ・・・?」

朝美はその部屋に沙夜子がいないのに気づいた。

朝美「お母さん・・・?」

朝美は沙夜子を探しに部屋を出た。

朝美「あれ・・・?」

月明かりに中庭が照らされていたが沙夜子の姿は無かった。

朝美「トイレかな・・・」

朝美は他の住人を起こさないように静かに探した。しかしどこにも沙夜子はいなかった。

朝美「おかしいな・・・お母さんどこに・・・ん?」

朝美は玄関に来てある事に気づいた。

朝美「お母さんの靴が無い・・・?」

玄関に沙夜子の靴が無かった。

朝美「もしかして出かけたのかな・・・でもどうしてこんな時間に・・・」

そう思い朝美も外に出かけようとした。その時だった。

隆士「朝美ちゃん。」

朝美「ひゃっ!?」

隆士「しぃ〜・・・」

朝美の後ろに隆士がいた。

朝美「お、お兄ちゃんどうして?」

隆士「朝美ちゃんが何か探していたようだから気になってね。」

朝美「ごめんね起こしちゃって・・・」

隆士「ううん。それよりも沙夜子さんだよね。」

朝美「うん・・・多分外に出かけてるんだと思うんだけど・・・」

隆士「僕が探してくるよ。朝美ちゃんはもう寝た方がいいよ。」

朝美「で、でも・・・」

隆士「いいんだよ。じゃあお休み。」

朝美「う、うん・・・お休みお兄ちゃん・・・」

朝美はそのまま五号室に戻り、隆士は外に出た。

隆士「うぅ〜・・・やっぱり寒いな・・・」

隆士は沙夜子が迷子にならないような範囲を探し回った。

隆士「一体どこに・・・あ。」

そんな中、公園の中に沙夜子の姿を見つけた。

隆士「いたいた・・・沙夜・・・」

沙夜子「・・・か・・・!!」

隆士「え・・・?」

沙夜子「ばか・・・!!」

隆士「さ、沙夜子さん・・・?」

冷たい冬の月下、隆士は今まで見た事の無い・・・押し殺しているが泣き声交じりの声を呟き泣いている沙夜子の姿を目撃してしまった。

沙夜子「どうして・・・どうして・・・!!」

隆士「・・・」

隆士は声をかけず、鳴滝荘に戻った。

沙夜子「うくっ・・・ひくっ・・・!!」

公園に沙夜子の泣き声が静かに響いていた。









恵「た、大変よ〜〜〜〜〜〜〜!!」

梢「どうしたんです?」

恵「さささ・・・沙夜ちゃんが!!」

その次の日の夕方、恵は慌てた様子で学校から帰ってきた四人の所にやってきた。

朝美「お母さんがどうしたの?」

恵「サボらずに内職やってるのよ!!」

珠実「それはおかしいです〜内職嫌いの沙夜子さんが・・・」

隆士「ん〜・・・やっぱり。」

梢「何がやっぱり何です?」

隆士「昨日の夜中・・・沙夜子さん泣いていたんだ。」

恵「沙夜ちゃんが泣くって普通じゃない。」

隆士「いいえ・・・あの泣き方は・・・寂しさが漂ってました。」

梢「沙夜子さんどうしたのでしょう・・・朝美ちゃんは何か?」

朝美「ううん。私には・・・」

沙夜子「あら・・・お帰り・・・」

ちょうどその時沙夜子がやって来た。

朝美「あ、お母さんただいま。内職やってってほんと?」

沙夜子「ええ・・・明日までの分全部終わらせたわ。」

朝美「お、お母さん明日までのって結構あったよね・・・?」

沙夜子「ええ・・・」

朝美「ほ、本当に全部?」

沙夜子「・・・」

沙夜子は無言で頷いた。

珠実「一体どうなってるんでしょう〜・・・」

恵「な〜んかあるわよね・・・」

梢「はい・・・」

隆士「やっぱり何かあるんだ・・・」

四人は沙夜子に聞こえないように話をした。

沙夜子「それで朝美・・・」

朝美「な、何?」

沙夜子「今回の分だけ・・・私に頂戴・・・」

朝美「え?」

沙夜子「お願い・・・」

朝美「う、うん・・・いいよ・・・」

沙夜子「ありがとう・・・朝美・・・」

朝美「・・・?」

隆士「何だろう・・・」









恵「絶対沙夜ちゃんは何か隠してるわ。」

隆士「だから昨日言ってたのに・・・」

その日の夜、再び沙夜子以外の住人は炊事場で話し合っていた。

珠実「昨日は確証するすべが無かったから分からなかっただけです〜」

灰原「だがこれであいつが何かを考えてるって事は分かったナ。」

梢「一体どうしたのでしょう沙夜子さん・・・」

恵「気になるワードとして白鳥クンが目撃した泣いてる所。一体どうしたのか・・・」

朝美「う〜ん・・・」

珠実「何か心当たり無いですか?」

朝美「ううん・・・」

隆士「どうして泣いていたのか・・・それだけでも分かればな〜・・・」

梢「そうですね・・・」

灰原「そして自分の家計がどうなってるか知ってるはずなのに金を持ち出す事。これも気になるゾ。」

隆士「それはそれほど重要な事だと思うんですが・・・」

恵「ふむ、それは確かに・・・たまにはいいとこに目をつけるじゃない!!」

珠実「ですがその重要な事とは一体です〜・・・」

隆士「そこなんだよね・・・」

梢「私達に話してくださればいいんですが・・・」

灰原「他人に話せるような事じゃないんだろう。それかもしくは自分だけの問題か。」

朝美「お母さん・・・」









隆士「明日自分のご飯はいい?」

梢「はい・・・先ほどそう・・・」

あくる金曜日、三度沙夜子以外の住人が炊事場で話し合っていた。

恵「これはいよいよもって何かあるわね〜・・・」

珠実「あの沙夜子がご飯はいい何て・・・明日は本当に台風でも直撃ですか?」

朝美「う〜ん・・・」

梢「朝美ちゃん。今沙夜子さんは?」

朝美「内職をある程度終わらせてもう寝ちゃった。」

隆士「明日何かあるのかな・・・?」

灰原「んじゃあ内職分の金もそれにか?」

隆士「そこまでは・・・」

恵「そう言えばさっき何処かに電話してる沙夜ちゃんを見たけど・・・」

梢「沙夜子さんがですか?」

恵「そうなのよ。こっそり見てたけど何だか深刻そうな雰囲気だったわ。」

灰原「何がどうなっているやら・・・」

隆士「朝美ちゃんは本当に心当たり無いの?」

朝美「うん・・・」

灰原「・・・ん?待てよ・・・なぁ梢。」

梢「何です?」

灰原「黒崎家がやって来て数年の間、あいつ確かこの時期になったら一人で出かけてたよな?」

梢「あ、そう言えば・・・」

朝美「そうだったような・・・」

珠実「となると・・・明日沙夜子さんは何処かに出かけますね。」

隆士「ここ最近の様子からして・・・それが理由でしょうね。」

恵「よ〜し、こうなったら明日沙夜ちゃんの後をつけるわよ。」

隆士「それは流石に・・・」

恵「白鳥クンは気にならないの?」

隆士「そ、そりゃあなりますけど・・・」

恵「だったら決定よ。明日はみんなで沙夜ちゃんの秘密を探るわよ!!」

珠実「お〜です!!」

灰原「俺も賛成だ。」

梢「はい。」

朝美「私も・・・お母さんが何を考えてるのか知りたい・・・」

隆士「・・・分かった、僕も行く。元々言い出したのは僕なんですし。」

恵「そうと決まったら明日は早く起きるわよ!!」

隆士「別に早起きする必要は無いんじゃ・・・」









沙夜子「それじゃちょっと出かけてくるわね・・・」

梢「はい、行ってらっしゃい。」

次の日の朝、沙夜子は朝早くに鳴滝荘を出た。

隆士「沙夜子さんもう行った?」

梢「はい。」

隆士「それじゃあ後は僕らが出る番だけど・・・」

梢「どうかしました?」

隆士「桃乃さん・・・まだ寝ぼけてて・・・」

恵「うにゃぁーーーーーーーー!!」

その瞬間、遠くから恵の悲鳴が聞こえた。

隆士「珠実ちゃんに気付け頼んだんだ・・・」

梢「は、はぁ・・・」

そんな事があったが十分もせずに簡素な変装を済まし住人達は鳴滝荘を出た。

恵「さてと・・・沙夜ちゃんはどこに向かったのやら・・・」

灰原「誰かさんのおかげで物の見事に遅れたからな。」

隆士「昨日早く起きるって言ったのは誰でしたっけ・・・」

恵「と、とりあえずこの状況を打破しなければならない!!珠実隊員よ術はあるか!?」

珠実「こんな事になると思いまして沙夜子さんにこっそり発信機をつけましたです〜」

朝美「発信機って・・・どこで買ったの?」

珠実「ネットオークションです〜」

隆士「流石珠実ちゃんだ・・・それで沙夜子さんは?」

珠実「どうやら駅に向かったようです〜」

恵「よ〜し、遅れを取り戻す為走るわよ!!突撃〜〜〜〜〜!!」

そう叫んで恵は駅の方に向かい走り出した。

隆士「誰のせいで遅れたのか・・・はぁ・・・」

梢「まぁ白鳥さん・・・」

灰原「愚痴なら帰った後にしろよナ。行くぞ。」

隆士「は〜い・・・」

少し遅れで隆士達も駅へ向かった。









沙夜子「・・・」

梢「いました・・・沙夜子さんです・・・」

駅の中でバスの時間を確認している沙夜子を隆士達は発見した。

隆士「あの沙夜子さんが普通に街中を歩けるなんて・・・」

恵「まぁ・・・出かける事は出来るけど一人でって事がなかったからね。」

梢「どうやらバスを使うようですね。」

朝美「どこに行くのかな・・・?」

珠実「ついていくしかないです〜」

朝美「そうだね。」

そうしてるうちに沙夜子はバス停に向かった。

隆士「移動した。行こう。」

梢「はい。」

そして隆士達は沙夜子の後を追い、バスに乗り込んだ。

隆士「一体どこに行くのかな・・・」

灰原「そうだな・・・」

隆士達は沙夜子に気づかれぬようにバスの一番後ろに座り沙夜子をつけた。

隆士「気づかれてないのかな・・・?」

梢「さぁ・・・」

朝美「お母さん・・・」









隆士「遠くまで来たな〜・・・」

バスに揺られる事数時間、沙夜子は都心から少し離れた街で降りた。

梢「降りましたね。」

隆士「行こう。」

そして隆士達も後を追って降りた。

隆士「沙夜子さんは・・・」

梢「あ。あっちです。」

梢は街から離れようとする沙夜子の姿を発見した。

恵「行くわよ。」

そのまま隆士達は沙夜子の後を再び追った。

珠実「にしても沙夜子さんはどうしてこの街に来たのでしょう・・・」

灰原「さぁナ。」

朝美「あ、お母さんがお店に入っていくよ?」

前方にいる沙夜子が何かの店に入っていくのを朝美が目撃した。

梢「お花屋さん・・・?」

その店は花屋だった。

珠実「何を買うの・・・出て来たです!!」

恵「隠れるわよ!!」

沙夜子が店から出てくるのを確認し、隆士達は見つからないように隠れた。

沙夜子「・・・?」

沙夜子は沢山の花を持って店から出てきて辺りを見回していた。

恵「危ない危ない・・・」

沙夜子「・・・」

少し見回して沙夜子は再び歩き出した。

恵「何を買ったのかしら・・・」

梢「入ってみます?」

隆士「そうだね。」

隆士達はその花屋に入った。

店主「あいらっしゃ〜い。」

隆士「あ、あのう・・・お聞きしたい事があるのですが・・・」

店主「なんだい?」

梢「あの・・・先ほど来た女性の人・・・」

店主「あ〜あんたら知り合いかい?」

朝美「は、はい・・・」

梢「それで何をここで・・・」

店主「花を買ったに決まってるだろ。他に花屋で何買うってんだ。」

灰原「ま、まぁそうだけどよ・・・」

店主「とりあえず買ってったのは花梨、桔梗、鶏頭、鷺草、胡蝶蘭、勿忘草、梔子、麦藁菊、千日紅だ。」

梢「え・・・えっと〜・・・」

珠実「何だかバラバラですね。それを一まとめにですか?」

店主「おうよ。ここ数年来てなかったらその分も多めにな。」

梢「ここ数年ですか?」

店主「ああ。あの子は大体この時期にあの花を買ってたんだが・・・ここ数年は来なくてよ・・・」

隆士「でもこの時期に咲く花じゃないのもあるような・・・」

店主「ああそれなら心配ないさ。ちゃんとした温室で育てたからよ。」

隆士「なるほど・・・ん?」

朝美「どうしたのお兄ちゃん?」

隆士「さっき言った花って・・・」

珠実「花梨、桔梗、鶏頭、鷺草、胡蝶蘭、勿忘草、梔子、麦藁菊、千日紅です。」

隆士「その花・・・あ、そうか。」

梢「どうしたんです?」

隆士「なんとなく分かりましたよ。沙夜子さんの目的。」

朝美「本当お兄ちゃん?」

隆士「うん。みんなは先に追ってて。僕もすぐ向かうから。」

梢「分かりました。」

恵「先行ってるわね。」

そう言って梢達は沙夜子の後を追い始めた。

隆士「さてと・・・何がいいか。」

店主「何がいいんだい?ありとあらゆる花があるぜ。」

隆士「そうですね・・・じゃあ花水木あります?」

店主「花水木な。ちょっと待ちな。」

店主はそう言って花水木を探し始めた。

隆士「僕の考えが外れてなかったら・・・花水木も必要だと思うな。」

店主「あいよ。花水木だ。」

店主は淡桃色の花水木を一輪持ってきた。

隆士「すいません・・・えっといくら・・・」

店主「そうだな・・・大奮発で五百万!!」

隆士「はい!?」

店主「な〜んて冗談だ。五百円でいいぜ。」

隆士「い、いいんですか?」

店主「いいって事よ。持ってけ持ってけ。」

隆士「あ、ありがとうございます。」

隆士は店主から花水木を受け取った。

店主「んじゃあな。たまには来てくれよ若いの。」

隆士「はい。それでは!!」

そして隆士は梢達の後を追った。









珠実「ここは・・・」

梢「霊園・・・」

灰原「だな。」

その頃梢達は沙夜子を追って霊園に到着していた。

朝美「どうしてここに・・・」

恵「行ってみないと分かんないわよ。」

梢「そうですね・・・」

梢達は沙夜子を探しに霊園の中を歩き回った。

朝美「あ、いたよ。」

沙夜子「・・・」

ある墓の前に沙夜子が立っているのを発見した。

恵「隠れるわよ。」

梢達は見つからないように隠れて沙夜子を監視した。

沙夜子「・・・」

沙夜子は何も言わずに花束をその墓に添えた。

朝美「お母さん・・・?」

沙夜子「・・・ごめんね・・・」

朝美「?」

沙夜子「あまり来る事が出来なくて・・・ごめんね・・・」

灰原「もしかしたらあの墓は・・・」

梢「朝美ちゃんの・・・」

朝美「お父さんの・・・お墓・・・?」

沙夜子「この前ね・・・あなたが死んじゃった日の夢を見たの・・・悲しくて悲しくて・・・近くの公園で泣いたわ・・・」

珠実「泣いていた理由はそれですか・・・」

沙夜子「どうして死んじゃったの・・・私と朝美を置いて・・・いなくなったの・・・ってね・・・」

梢「沙夜子さん・・・」

沙夜子「私は・・・あなたがいて当たり前だったのに・・・気づいたらいなくなってるんだもの・・・悲しくなるわよ・・・」

灰原「・・・」

沙夜子「ねぇ・・・どうしてあなたは死んじゃったの・・・答えてよ・・・暁・・・」

朝美「あかつき・・・お父さんの名前だ・・・」

沙夜子「答えてよ暁・・・答えってたら・・・」

沙夜子の声が段々と涙交じりになっていた。

梢「沙夜子さん・・・あら・・・?」

恵「どうしたの?」

梢「あれ・・・」

朝美「あ・・・」

沙夜子「・・・あ・・・」

隆士「ここだったんですね。」

隆士が沙夜子の所に来ていた。

珠実「何やってるですか白鳥さんは〜〜〜!!」

梢「待って珠実ちゃん。白鳥さん何か持ってる・・・」

隆士「・・・今日・・・命日だったんですね。」

沙夜子「分かってたの・・・」

隆士「いいえ、ただ花屋で買った花でなんとなく・・・」

灰原「花・・・?」

隆士「花梨は唯一の恋、桔梗は変わらぬ愛、鶏頭は色あせぬ恋、胡蝶蘭はあなたを愛します。」

沙夜子「そう・・・勿忘草は私を忘れないでください、梔子は私はあまりにも幸せです、麦藁菊は永遠の記憶、そして千日紅は・・・」

隆士「変わらぬ愛情。ですね。」

沙夜子「その花言葉・・・私好きなの・・・」

隆士「その・・・暁さんとの思い出を模した花言葉の花達を・・・買っていたんですね。」

沙夜子「よく分かったわね・・・花言葉を・・・」

隆士「偶然ですって。所で、僕が来た事に驚いてないんですね。」

沙夜子「知ってたわ。みんなついてきてるって。」

恵「え・・・?」

朝美「そうだったの・・・?」

隆士「だそうですよ皆さん。」

梢「は〜い・・・」

結局ばれていて、梢達も沙夜子の所に来た。

朝美「お母さん・・・今日だったんだっけ。」

沙夜子「あなたは幼かったからね・・・覚えてないのは無理ないわ・・・」

朝美「教えてくれたっていいのに・・・」

沙夜子「・・・ごめんね・・・いつかは話そうって思ってたけど・・・」

隆士「そうだ沙夜子さん。」

何かを思い出した隆士は持っていた花水木を沙夜子に渡した。

沙夜子「花水木・・・?」

隆士「その花言葉、今の沙夜子さんに必要かと思いまして。」

沙夜子「・・・私の想いを・・・受けてください・・・」

隆士「届くかどうかなんて分からないですけど・・・いいかなって。」

沙夜子「・・・」

沙夜子は何も言わずに花水木を墓に添えた。

沙夜子「暁・・・見てる・・・?今私はとても幸せよ。」

朝美「お母さん・・・」

沙夜子「朝美も強く育っている・・・それに私の周りにいる人もみんないい人ばかりよ・・・」

珠実「沙夜子さん・・・」

沙夜子「あなたがこの中にいないのがちょっと・・・ううん、とても悲しいけど・・・」

灰原「・・・」

沙夜子「それでも・・・私は今幸せよ・・・辛い事もあったけど・・・それでも今とても幸せよ・・・」

恵「沙夜ちゃん・・・」

沙夜子「ねぇ・・・私の声届いてる・・・?届いてるなら・・・一つだけ願いを叶えて・・・」

梢「・・・」

沙夜子「もう一度・・・もう一度あなたに会えるなら・・・伝えたいの・・・ありがとう・・・って。」

隆士「沙夜子さん・・・」

沙夜子「あなたに会えて・・・朝美に出会えて・・・色々な事を知る事が出来て・・・ありがとう・・・」

隆士「・・・みんな。」

梢「はい。」

恵「ええ。」

灰原「おう。」

隆士の一言を期に全員が手を合わせた。

沙夜子「・・・ありがとう・・・」

朝美「お父さん・・・朝美、頑張るから・・・見守っててね。」

灰原「俺に何が出来るか何か分からんが、安心してくれナ。」

恵「あたしらが一緒だから沙夜ちゃんをもう悲しませないよ。」

珠実「私達は・・・家族ですから・・・」

梢「ですから・・・悲しまないで・・・そして自分を責めないでくださいね・・・」

隆士「僕らがいますから。沙夜子さんを悲しませるような事は起こさせませんから・・・」

沙夜子「・・・ね?みんないい人でしょ・・・時々辛くなるけど・・・私は大丈夫から・・・」

話しかけている沙夜子の赤い瞳に涙が滲んでいた。

沙夜子「だから・・・ありがとう・・・ずっと愛してるわ・・・暁・・・」













あなたはここにはもういない

それはもうまぎれもない現実

だから私は受け入れたの

あなたはもういないけど

私はあなた以外好きになれない

だから決めたの

私は朝美と一緒に生きていく

どんなに辛い事が起こっても

私はあの子と生き続ける

あなたが愛した娘と一緒に

これからもずっと

だから・・・ね

ありがとう・・・





あ と が き
まほらば初の短編作品です
これはKOKIAのありがとう・・・を聴いて思いついた作品です
正直、俺はこの曲が流れてるフラッシュを見て泣きましたからね・・・
それに合うキャラって事で沙夜子さんを選んだんです
ちなみに暁ってのは俺が思いついた名前なので実際どう言う名前なのかは不明です
そして花言葉、これはそれなりにこだわったんですよね。
調べるの、大変やったなぁ・・・
↓のはチャット仲間のAYAさんこと急流さんに描いてもらった泣いている沙夜子さんのイメージ画です

イメージ画



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