それから月日は流れた








状況はどうだい? なんて自分に聞いてみる
この物語の始まりを、今も僕は思いだせる
これまで選んだ道の正しさを、僕はただ祈る






神那「美乃、時雨。今日もいい天気だな。」

神那は二人の墓に花を添えていた。

神那「さてと、そろそろ行かないとまた・・・」

花梨「神那さ〜〜〜ん。急がないとみんなを待たせますよ〜〜〜!!」

遠くから花梨が神那を呼ぶ。

神那「分かってるって!! んじゃ、行くわ。」

墓を離れ、花梨の元へ走る神那。

花梨「毎日墓参りするの『だけ』は関心しますけど、もう少ししっかりしてくださいよ。」

神那「へへっわりぃな。」

花梨「全く・・・時雨さんの苦労が浮かびますよ。美乃さんもあなたそっくりでしたからね。」

神那「まぁな。でも花梨は花梨だろ? それでいいだろ?」

花梨「もう。そうやってはぐらかすんだから・・・私はビシビシ行くから覚悟してくださいね。」

神那「了解〜」

話を終え、二人は歩き出す。

神那(美乃、時雨。俺はこいつと歩んでいくよ。だから、見守っててくれ。)

そう思い、空を見上げた。





栗崎神那 地元沖縄で漁師となる。その傍らで学んでいた槍術の師範を受け持つ。

空元花梨 卒業後栗崎神那を追い沖縄へ。『誰かを守れる強い女になりたい』と婦警を目指し勉強中。


備考 決着後二人は交際を始めた。花梨は密かに神那へ想いを寄せていたらしく、美乃を失った彼の心を癒したいと言う事で告白。
    そして神那は自分を想ってくれる人の為にと告白を受け、二人で未来へと歩むと決めたと言う。







色んな種類の足音を聴いた
沢山の足音が重なって、そしてまた離れて行った






虎丈「このペースならまだ間に合うな。」

虎丈は一人長く続く道路を歩いていた。
そこに通りかかった一台のバイクが止まる。

夏樹「そこの藍川虎丈さん。乗るかい?」

バイクを運転していたのは夏樹だった。

虎丈「いや、俺は俺の足で行くよ。」

夏樹「物好きねぇ・・・別に相乗りはOKだよ。」

虎丈「充分。」

夏樹「そうですか。ま、久々だし少し休んでこう。」

虎丈「ったく。まぁいいか。」

そのまま二人は近くの自販機の前に止まり、休憩する。

夏樹「みんなと会うの、久しぶりだね。」

虎丈「だな。ま、あいつらなら相変わらずなんだろうがな。」

夏樹「人は変わるものだけど、変わらないのも人なんだよ。」

虎丈「言えてるな。」

夏樹「アンタも相変わらずだけどね。」

虎丈「お前が言える事かっつぅの。」

夏樹「違いない。」

他愛無い話に二人は笑いだす。





藍川虎丈 藍川流野生技格闘術の継承者となり、地元北海道で門下生達へ受け継がせている。昔よりも笑顔を見せるようになった。

肌岡夏樹 バイクで世界各地を旅している。旅を終えるまで定職に就かないと豪語する。


備考 特に二人は交際しているわけではない。
    だが周りは結ばれる可能性が極めて高いと思っている。







寂しさなら忘れれる。いつだってそうしてきたんだ
どんな風に夜を過ごしたって、昇る日は同じなんだから






朱雀「さてと、燕。そろそろ行くわよ。」

燕「は〜い。」

朱雀は燕を呼び、出かける準備をしていた。

隼「しかし朱雀よ。やはり考えは変えぬのか?」

朱雀「はい。私が愛する殿方は白鳥隆士様ただ一人。それ以外に愛する事が出来る人はいません。」

隼「早くひ孫の顔が見たいのじゃがなぁ。」

朱雀「燕に期待してくださいね。おじい様。」

楓「ですが燕お嬢様も隆士様に憧れてましたし。簡単ではないでしょうね。」

渚「これは旦那様が曾おじいさんになる日はまだまだですね。」

要「まぁ人生何が起こるか分からないですし、もしかしたら朱雀お嬢様が心変わりしたりとか。」

葵「それはあまり無いと思えますよ? お嬢様の隆士様への愛情は深いですから。」

梓「そうよねぇ。やっぱりここは燕お嬢様に期待しましょうか。」

尊「それが一番ですね。ですって旦那様。」

隼「ほほ。ま、ゆっくり気長に待つとするかの。」

燕「お待たせしました〜」

準備を終えた燕がやってきた。

朱雀「ではおじい様。みんな。行ってまいります。」

隼「うむ。気をつけての。」

楓「行ってらっしゃいませお嬢様。」

渚&要&葵&梓&尊「行ってらっしゃいませ。」

見送られ、朱雀と燕は出発した。





橙条院朱雀 橙条院家の跡継ぎを燕に託す。最近ピアニストとして有名になった。

橙条院燕 朱雀より跡継ぎを託される。しかし相手はまだ不在。

橙条院隼 ひ孫が出来るのを心待ちにし、少々隠居生活をしている。丑三、菫里、山吹とは今では麻雀しあう友人となった。

楓 渚 要 葵 梓 尊 変わらずに橙条院家に仕えている。六人協力し合い頑張っている。


備考 楓達六人は影であまり出番が無かった事を少々気にしているらしい。
    それと最近の話題はこの中で誰が一番先に結婚するかと言う事。(全員未婚)







破り損なっていた手造りの僕の地図
辿ってみた途中の現在地
動かなくなった僕のコンパス、ふと霞んだ目を凝らした






恵「おっ珠実ちゃん久しぶり。」

珠実「お久しぶりですぅ桃乃さん。それに紫羽さんに。」

空港、そこで珠実と恵、竜太郎夫妻。
そして二人の間にいる少女が会っていた。

珠実「瑠璃ちゃんも、元気にしてたですか?」

瑠璃「う、うん。」

少女は瑠璃。
恵と竜太郎の間に産まれた一人娘である。

竜太郎「何回か会ってるだろ瑠璃。タマお姉ちゃんだよ。」

瑠璃「うん。」

珠実「しかし桃乃さんとは全く似てないですぅ。」

恵「にゃにょ〜〜〜!?」

竜太郎「そんな事はないさ。本来の恵の性格に似てるのさ。それより遅れるぞ?」

恵「っと、そうだったそうだった。」

珠実「みんなと会うのも久しぶりですね。」

恵「そうね。」

四人は空港を出立した。





桃乃(紫羽)恵 第一子の瑠璃を出産。育児に追われる毎日を送っている。

茶ノ畑珠実 卒業後カメラマンとなり世界を回る。鳴滝荘へはあまり帰っていないとの事。

紫羽竜太郎 映画監督を目指し勉強の日々を送る。夫婦仲は最高によろしい。


備考 珠実はあまり成長はしていない。
    瑠璃は少々引っ込み思案な性格で、両親からは猫可愛がりの様子。







君を失ったこの世界で、僕は何を求め続けるのだろう
迷子なんだって気付いたって、気付かないフリをしていた






サクラ「タチバナせんぱ〜い。お時間ですよ〜」

タチバナ「ん、そうか。」

浩子「あ、またDVD見てたんですか?」

水無月家のタチバナの部屋。
タチバナを訪ねた浩子とサクラが来た。
そしてタチバナは熊の特集のDVDを見ていた。

サクラ「先輩とっても熊が好きなんですね〜」

タチバナ「話をしている暇があるならお嬢様と旦那様、奥様を呼んでくるんだ。」

浩子「ひあぁ〜」

サクラ「ふえぇ〜」

まひる「何やってる、お前達。」

ちょうどタチバナの部屋へまひるが来た。

タチバナ「あぁお嬢様。準備は出来ましたか?」

まひる「うむ。後は父様と母様だ。」

タチバナ「分かりました。サクラ、浩子。」

浩子&サクラ「は〜い。」

そして二人は夫妻を呼びに向かい、まひるとタチバナは先に玄関へ向かった。





水無月まひる 春から大学生になる。少しは成長をしているらしい。

タチバナ 完璧メイドっぷりと熊好きと乙女趣味はあいも変わらず。願望である背が小さくなるは叶っておらず。

紅花浩子 水無月家のメイドとして働き始める。だが駄目っ子は変わっていない。

紅花桜 ドジぶりは全く変わっていない。最近は妹と二人力合わせて頑張っている。


備考 未だにまひるのスリーサイズは秘密のまま。
    そして誰も知らない事だが、水無月家の運転手が浩子に一目惚れしたらしい。







状況はどうだい? ここにいない君に尋ねてみる
僕らのこの距離を、声は泳ぎきれるかい
忘れてしまったのは温もりなんだ。少しずつ冷えていってしまった
どんな風に夜を過ごしたら、思いだせるのかな






夕「これでよしっと。」

丑三「今日も似合っとるの夕ちゃん。」

夕「うふ♪ ありがとうございます。」

夕の部屋、そこに夕と丑三はいた。

夕は切る前ほどではないが、再び伸ばした髪を前のようなポニーテールにしていた。
そしてそこにはあのリボンがあった。

夕「まだ前くらいに長くないかぁ。」

丑三「いいじゃないか。夕ちゃんは夕ちゃんなんじゃから。」

夕「そうですね。ありがとうございます丑三さん。」

丑三「では行くとしようかの。」

夕「はい♪」

そして二人も玄関へと向かった。





水無月夕 髪は少し伸びたが、身体は全く変わらず。そしてリボンもずっと大切にしている。

水無月丑三 多少老いたが強靭な肉体は健在。ただ時折ぎっくり腰を起こすようになったとか。


備考 熟年夫婦ながら新婚さながらに仲は良い。
    さりげなく三人目を狙っているらしいが真相は不明。







強く手を振って、君の背中にサヨナラを叫んだよ
そして現在地。この設計図。開く時は一体どんな顔なんだろう






翼「ちょっと遅くなっちまったか? 少し急ぐか。」

三千代「もう、少しは時間に余裕を持って欲しいですわ。」

翼「わりぃわりぃ。」

翼が住むアパートで翼と三千代は少々慌てながら出発した。

三千代「何度も何度も待ち合わせに遅れそうになっているのですから学習して欲しいですわ。」

翼「説教は後で聞くからとりあえずバス停まで走ろうぜ。」

三千代「もう・・・」

呆れながらも三千代は翼と走り、一番近いバス停に着く。
バスに乗って向かうようだが、幸いバスはまだだった。

翼「間に合ったな。ごめんなみっちゃん。」

三千代「ほんとですわ。私に走らせるだなんて。」

翼「ま、運動すれば少しはスタイル良くなるだろ? 知らないけどよ。」

三千代「むぅ・・・」

三千代をからかう翼。
ふとズボンのポケットに手を入れ、中にある小さな箱を握る。

翼「なぁ、みっちゃん。」

三千代「なんですの?」

翼「ちょいと、受け取って欲しい物があるんだ。」

三千代「え?」

そう言い翼は箱を出そうとした。
その時。

菫里「お。こんな所で会うとはの。」

山吹「奇遇じゃな。」

偶然にも菫里と山吹が来た。

三千代「お久しぶりですわ。」

翼「じいさん方タイミング悪いんだよ・・・」

菫里「ぬ?」

山吹「何か問題でもあったか?」

翼「いや・・・」

タイミングを逃した翼は箱をポケットの中に入れなおした。

三千代「で、受け取って欲しい物ってなんなんですの?」

翼「あぁ〜・・・また今度でいいや。」

三千代「なんなんですのそれ〜〜〜!! 今すぐ渡しなさい!!」

翼「ちょっ!! みっちゃん待てって!!」

翼の身体をあさりだす三千代。

山吹「若いのぉ。」

菫里「そうじゃな。」

そんな二人を老人二人は暖かく見ていた。





瑠璃岸翼 漫画家としてデビューする。作品はそこそこ人気がある模様。

碧峰三千代 翼と交際しながら彼のアシスタントをする。まだムチプリってはない。

菫里省吾 全ての研究を捨て去り隠居の生活を始める。最近遂に足腰に来だした。

山吹修三 今もなお九星流を教える為に全国を回っている。爺さん'Sの中では一番若々しい。


備考 翼と三千代は同棲をしている。
    そして翼が渡しそびれた箱の中には銀色のリングが入っていたが、まだ三千代はそれを知らない。







これが僕の望んだ道だ。そして今も、歩き続けている
不器用な旅路の果てに、正しさを祈りながら






理想奈「それじゃあ沙耶ちゃんは今その人と付き合ってるのね。」

沙耶「えぇまぁ。」

沙夜子「おめでとう。」

部長「末永クお幸せニ。」

駅前、沙夜子に理想奈、沙耶に部長と言う今までに無いメンバーが集まっていた。

沙耶「まだ話早いですって。所で朝美は?」

沙夜子「あの子の所に行ったわ。」

理想奈「そっかぁ。でも一人で大丈夫なの?」

沙夜子「・・・」

沙耶「ちょ、そこは肯定してあげてぇな・・・」

部長「皇帝が校庭デ肯定すル工程を考エる・・・クククッ・・・」

理想奈&沙耶(うあぁ〜・・・)

沙夜子「朝美なら・・・笑ったでしょうね・・・」

部長のダジャレに引く理想奈と沙耶、そして空を見上げる沙夜子だった。





黒崎沙夜子 木彫りの才能を開花させる。そして最近あの少女に付きっ切りの朝美に母として嬉しくもあり、寂しくもある。

朱桜理想奈 絵本作家と言うよりは同人誌作家として精を出している。コスプレ趣向も健在。

茜沢沙耶 図書館で出会ったと言う年上の恋人と交際をしている。最近ディクショナリーアタックはしていないそうだ。

部長 占いの館を経営し始め、若い女性に人気があると言う。『エリカ・バーミリオン』と名乗っているらしいが、本当は『肌岡冬美』である。


備考 オタク街道まっしぐらの理想奈はたびたび銀先生に折檻喰らってるらしいが懲りる気配は無し。
    そして沙夜子の元へ最近木彫りの女性が訪問しているとの事。







時間はあの日から、止まってしまったままなんだ
遠ざかって、消えたあの背中
なぁ、気付いただろう?
僕らが丁寧に切り取った、その名は『オモイデ』






馬邨「そう。あの子は本当の自分を取り戻したのね。」

虎焔「あぁ。後はお前だけだな。」

蛇蒼「どうだ、記憶は取り戻せそうか?」

馬邨「ううん。」

馬邨が収容されてる収容所。
気付かれずに虎焔と蛇蒼が訪問していた。

馬邨「にしても、ここは退屈よ。あなた達も来てみたら?」

虎焔「退屈と知って誘うのはどうなんだよ。」

蛇蒼「全くだ。」

馬邨「でも警察関係は生き残ってる十二支の残りのあなた達を捜してるわよ?」

虎焔「ま、俺達は影で生きていく。もう表には出れないからな。」

蛇蒼「その方が俺のような男にはいい。」

馬邨「そうね。それじゃそろそろ帰ったら?」

虎焔「あぁ。じゃあな。」

蛇蒼「達者でな。」

虎焔と蛇蒼は気付かれない内に去っていった。

馬邨「さて・・・どうしようかしら。」

馬邨は一人、身体を伸ばしてこれからの事を考えた。





鳶田昴 十二支馬邨としての罪を償う為に収容所に入る。記憶はまだ戻っていない。

浅葱和人 十二支虎焔の名は捨て去る。表舞台には出る事無く、裏の世界で生きている。

鈍宮忍 十二支蛇蒼の名を捨て、虎焔と二人旅をする。強さへの探究心は変わってない。


備考 馬邨は収容所生活を満喫している。
    共に収容されてる他の十二支とも上手くやっている。







強く、強く手を振った
あの日の背中に、サヨナラを告げるこの現在地
そして動き出した僕のコンパス
さぁ、また歩きだろうか








鳥汐「なぁ、本当に私も行っていいのか?」

朝美「勿論だよ。」

朝美は鳥汐を迎えに行っていた。
鳥汐は今水無月家と橙条院家の支援もあるが、迷惑をかけたくないと一人で暮らしている。

鳥汐「だって私は十二支だったんだぞ? 本当はこうして暮らしてちゃいけないんだ・・・」

朝美「そんな事は無いよ。鳥汐ちゃんにだって幸せになる権利はあるよ。」

鳥汐「朝美・・・」

朝美「だからさ、行こうよ。鳥汐ちゃん。」

そう言い、鳥汐へ手を差し出す朝美。

鳥汐「朝美。私はもう鳥汐じゃないよ。」

朝美「あ。ごめんね。」

鳥汐「今の私は、藤林美月だよ。」

そう言い鳥汐、もとい美月は朝美の手を握る。

朝美「行こう。美月ちゃん。」

美月「あぁ。」

そして二人は走り出した。





黒崎朝美 受験勉強の傍らアルバイトに精を出す日々を送る。左肩の傷は痕は残ったものの、後遺症は無い。

藤林美月 タチバナが入手した情報で本名が判明した。そして今は藤林美月として生きている。


備考 朝美は少し身長が伸びた。
    美月は朝美の一個下と分かったが、スタイルは朝見はおろか、珠実以上にいい。







破りそこなっていた手作りの僕の地図
証をつけてみた、今の現在地
そう、ここが新たなスタートライン
歩き出せば、それが第一歩になる








灰原「あぁ終わった・・・」

瑞穂「お疲れ様でした。」

鳴滝荘から少し離れた場所、灰原と瑞穂が二人でいた。

灰原「ったく、お前はちょっと厳しすぎるんだよ。少しはゆっくりとやったっていいだロ?」

瑞穂「駄目です。」

灰原「なんだなんだ? 白鳥と結ばれなかった腹いせか?」

瑞穂「さぁ〜ってと、頭冷やしましょうか?」

瑞穂は笑顔でどこからかお馴染みのνXカリパーを取り出した。

灰原「そ、それは真面目に勘弁してくれ・・・」

瑞穂「はいはい。」

そのまま瑞穂はνXカリパーをしまう。

瑞穂「今度言ったら本当に叩き込みますよ?」

灰原「真面目にやめてくれ・・・」

「あら、土神瑞穂さん。お久しぶりです。」

瑞穂「あ。先生。」

偶然にも銀が通りかかった。

瑞穂「どうしたんですか?」

銀「白鳥隆士君に会いに行こうと思いまして。」

瑞穂「隆士君は鳴滝荘にいますよ。ただもうすぐ出かけるのであまり長くは会えないと思いますが。」

銀「そうですか。」

瑞穂「私達も同じ場所へ行くんですが、隆士君少し遅れるって言ってましたから。」

灰原「とりあえず先に向かってるってわけだ。まぁ場所が遠いもんだから結局はほとんど全員一緒だがナ。」

銀「どちらへ行くんですか?」

瑞穂「お墓参りです。隆士君の大切な人の。」

灰原「そう言う事なんでナ。まぁゆっくりは出来ねぇだろうが。」

銀「分かりました。」

瑞穂「ではまた。」

そして瑞穂と灰原は歩き出した。

銀「さて、私も急ぎましょう。一目でも見ておきたいですから。」

そして銀は鳴滝荘へ向かった。





灰原由紀夫&流星ジョニー 小説家としてとりあえずはやっていっている。ただ最近は瑞穂のせいで締め切り地獄を体験している。

土神瑞穂 作家を諦め灰原の編集者を担当している。隆士の事はすっぱりと諦めた様子だが恋愛願望はまだ健在。

銀雅 今も皇デザイン専門学校の講師をしている。隆士達とは卒業後も度々会っている。


備考 最近瑞穂は新たに鉈の『レーBANテイン』を入手したとの事。
    使用方法は明らかにされてない。







君がいなくなったこの世界を愛せた時。その時は会いに行くよ
望まなかったこの旅が正しかったと祈りながら
いつかまた会える日を、祈りながら








隆士「ふぅ・・・出来た。」

梢「隆士さん。そろそろ行きましょうか。」

隆士「あ、うん。」

鳴滝荘、二人は変わらずにいた。
一つ変わった事と言えば。

「おと〜さ〜ん!!」

隆士「うわっ!?」

一人の梢に似た女の子が隆士に飛びついた。
見ると梢の後ろには更に三人の梢似の女の子がいた。

女の子1「あっこらぁっ!! 独り占めすんなぁ〜!!」

女の子2「えへへ〜」

女の子3「二人とも。お父様が困ってるわよ。」

女の子4「でも、羨ましい・・・かも。」

女の子はそれぞれ、早紀、魚子、千百合、棗の面影があった。
そう、この子達は皆、隆士と梢の間に産まれた娘達だ。

梢「こらっお父さんは疲れてるのよ?」

隆士「大丈夫だよこのくらい。正直右腕を掴まれるのは痛いけど。」

苦笑いで飛びついてきた魚子に似た少女と引き離そうとする早紀に似た少女の頭を撫でる隆士。

隆士「さて、こうしてちゃ動けないから。もう出かけるよ。」

娘'S「は〜〜い。」

元気いっぱいの娘達は先に玄関へ向かった。

隆士「ねぇ梢ちゃん。みんな、元気にしてるかな。」

梢「勿論ですよ。」

隆士「そうだね。さてとっと。」

隆士は部屋にかけてあったあのコートを手に取る。

梢「あの。新しいの買いませんか? 直してもボロボロですし。」

隆士のコートはあの後修繕したが、何分あの日々をずっと過ごしただけあって相当ボロボロになってしまった。

隆士「気に入ってるからちょっと買い替えは考えてないな。特に、あの戦いの全てを共に過ごした唯一の相棒みたいなものだし。」

梢「そう言えばそうでしたね。ずっとそのコートを着てましたからね。」

隆士「うん。じゃ、行こうか。」

梢「はい。」

そして二人も玄関に向かった。
ちょうど出た所で、銀がきた。

隆士「あれ? 先生お久しぶりです。」

梢「こんにちわ。」

銀「こんにちわ。おでかけすると聞いたのですが、せめて行く前に一度と思いまして。」

隆士「はぁ。」

銀「この子達がそうなんですか?」

隆士「はい。みんな、この人は僕の先生だよ。ちゃんとご挨拶して。」

女の子1「あたしは早紀だ。」

女の子2「魚子だよ〜」

女の子3「千百合と申します。」

女の子4「棗・・・かも。」

銀「こんにちわ。話は聞いてましたが、四つ子のお父さんは大変ですね。」

隆士「大丈夫ですよ。あ、そうだ。」

隆士は一冊のノートを銀に差し出した。

隆士「ちょっと書いてみたんです。見てくれませんか?」

銀「えぇ。ですが感想はまた後日になりますよ?」

隆士「えぇ。きっと出版する事は無い、幻の作品となるでしょうから。」

銀「そうですか。では。」

銀はそのノートを受け取った。

隆士「では、行ってきますね。」

梢「またいらしてください。」

そして隆士と梢、娘達も鳴滝荘を出発した。
残った銀はそのノートを見る。

銀「『迷子の天使』。さてさて。」

銀は読む。
内容は大切な人を失い、明るさを忘れた天使が世界を旅し続け、様々な人と出会う中でもう一度明るさを取り戻していく話だった。

銀「やっぱりメ〜ルヘンなお話しですよ。天使さん。」

銀は悟っていた。
これは隆士その物の事だと言う事を。





白鳥隆士 梢と結婚し、四人の子供に恵まれる。同時に絵本作家としてもデビューしている。

蒼葉(白鳥)梢 卒業後隆士と結婚。共にずっと鳴滝荘で暮らしている。


備考 隆士の右腕に九星流を扱っていた後遺症は残らなかったが、二度と振るう事はなくなった。
    日輪雫は鳴滝荘にあるが、子供達が触れないように隠している。




皆が未来へ新たな道を歩んでいる。
だが、ただ一人行方を知らない者がいる。
青島竜也。事件後捜索したが、死体は見つかっていない。
生きているのか死んだのか、それは誰も分かっていない。









隆士「これで全員が揃ったね。」

皆が向かっていた場所。
それは梨音の墓がある霊園だった。
この日は七月二十六日、梨音の命日だ。

珠実「お久しぶりです梢ちゃん。」

梢「元気にしてた? 珠実ちゃん。」

夏樹「冬美、評判いいらしいね。」

部長「姉さンモ相変ワラずで。」

棗「棗です。あなたは?」

瑠璃「る、瑠璃です。」

早紀「よろしくなっ」

再会を喜ぶ者に初めて会う子供達。
皆が賑わう中、隆士が仕切る。

隆士「じゃあ皆。行こうよ。」

梢「はい。」

全員が目的の場である梨音の墓まで来た。
そして一番前にいる隆士が墓に花を添える。

隆士「梨音。やっと、花を添えられるよ。ごめんね、ちょっと色々あって遅れちゃって。」

合掌する隆士。
そして皆も合掌した。

隆士「僕は夢を叶えられた。そして大切なモノも手に入れれた。君や梢ちゃんが、みんながいてくれたから。」

梢「違いますよ。隆士さんが叶えようと努力をしたからです。」

夕「その通りです。」

隆士「ありがとう。」

神那「んじゃ、お前らはとんぼ返りになるけど。」

虎丈「行くか。皆でな。」

恵「そうね。行こうか。」

隆士「えぇ。鳴滝荘へ。」

全員「あぁ。」「えぇ。」「うん。」「はい。」

墓参りを終え、皆帰路へつく。
その時隆士が。

隆士「っ!」

何かに気付き一人後ろを振り向いた。
だがその先には一本の樹があるだけだった。

千百合「お父様?」

隆士「いや、なんでもないや。さ、行こう。」

再び歩き出す隆士。
そして隆士が見たその樹の影に、一人の男が経っていた。
腰に二振りの小太刀を携えたあの男が。

「ふっ・・・心配はいらないな・・・」

そう呟き、男はその場から立ち去った。









隆士「ふぅ・・・ちょっと疲れたかな。」

夜を迎えた。
だが鳴滝荘は前のように賑わい、皆盛り上がっていた。
隆士は一人屋根に上がって夜空を見ていた。

隆士「ま、これが本来の鳴滝荘なんだろうな。」

賑わう中庭を見下ろして呟く隆士。
ふと、あの時からずっと巻いている右手首のリボンに触れる。

隆士「ここに君がいないのは一つの心残りだけどね。でも。」

もう一度中庭を見る隆士。

浩子「でも花梨に男の人が出来るなんてね。」

花梨「ど〜だ参ったか。」

灰原「珠実よぉ。お前朝美より低くないか?」

珠実「ほっとけですぅ!!」

神那「虎丈。お前夏樹ちゃんと結局どうなんだ?」

虎丈「俺らはそんなんじゃねっつぅの。」

瑞穂「アンタら最近はそれなりに評判いいらしいわねぇ。私は結局ね・・・」

翼「まぁな。」

理想奈「私だってそう言う趣向の人にしか評判良くないよ。」

美月「あの・・・」

夕「何かしら?」

美月「・・・なんでそんな成長してないんですか? 特に・・・胸・・・」

夕「ガーーーン・・・」

燕「こうやって小さい子達といれば私も少しはお姉さんっぽいかな?」

朱雀「さ、沙夜子様立ったまま寝ないで・・・きゃあっ!!」

三千代「全く。騒がしいったらありませんわ。」

山吹「まぁいいじゃないか。」

菫里「全くじゃ。」

隆士「みんながいる。それだけで僕は幸せかもしれないよ。」

梢「何しているんですか?」

隆士のもとへ梢が来た。

隆士「ん、ちょっとね。」

梢はそのまま隆士の隣に座った。

梢「綺麗な月ですね。」

隆士「そうだね。」

二人が見上げたその先に、あの日のような下弦の月が輝いていた。

梢「隆士さん。」

隆士「何?」

梢「私、とっても幸せです。」

隆士「梢ちゃん・・・」

梢「隆士さんがいて、子供達がいて、皆さんがいて・・・とってもとっても幸せです。」

隆士「梢ちゃん・・・」

隆士は腕を梢の肩に回そうとする。
と。

恵「お二人さ〜ん。いちゃつくのもほどほどにね〜」

竜太郎「いいだろ恵、夫婦なんだから。そっとしとけって。」

中庭から目撃した恵の一言で全員が屋根にいる二人に視線を集中させた。

瑞穂「もう、どのくらい見せびらかすの〜?」

朱雀「梢さん・・・羨ましいです・・・」

夏樹「ちぇっ・・・ま、いいけどね。」

隆士「あ、あははは・・・」

皆からの声に隆士はただ笑い、梢は照れて顔をそむけた。

虎丈「そろそろ、アレやるか?」

神那「そだな。つ〜わけだ。ラブるのは一時中断しろ〜」

隆士「分かったよ。さ、降りよう。」

梢「はい。」

梢を抱き上げ、隆士は屋根から降りる。
そして梢を降ろすと自分の部屋に向かった。
同時に虎丈、神那、朱雀、も何かの準備を始めた。

丑三「おっなんじゃなんじゃ?」

サクラ「何が始まるのかしら?」

先に来たのは朱雀。
だが手ぶらで、代わりに。

橙条院家メイド'S「お待たせしましたお嬢様。」

どこから来たのか、そしてどこから持ってきたのか分からないピアノを楓達が突如現れて運んできた。

朱雀「お疲れ様。」

沙耶「どっからそんなもんを・・・」

楓「気にしては駄目です。では旦那様が寂しがるのでこれで。」

ピアノを運び終えた楓達はすぐさま立ち去った。

まひる「なんだ今の。」

神那「ま、気にする事はねぇよ。」

次に来たのは神那。
だが後ろには巨大な風呂敷を背負って、両手にも風呂敷を持っていた。

花梨「神那さんそれって。」

神那「おうよ。」

神那は風呂敷を全て置く。
中にはドラムのセット一式があった。

翼「ドラム、って事は。」

神那のドラムで何が行われるのか気付き始めた。
そして予想通り、虎丈がベースを持ってやってきた。

虎丈「まぁそう言うわけだ。」

夏樹「あぁ〜そう言えばあんたも隆もそうだったんだっけ。」

瑞穂「そうよ。ほら。」

最後に隆士がギターを持ってきた。
これによりバンド、四神が再結成となった。

隆士「お待たせ。」

千百合「お父様、何をするんですか?」

隆士「みんなに歌を披露するんだ。」

魚子「お父さんお歌歌うの? 聴きたい聴きたい!!」

早紀「こら魚子落ち着けって!!」

棗「でも、聴きたい・・・かも。」

瑠璃「先生、歌えるの?」

恵「ん? そうよ。」

竜太郎「そう言えば俺はまだ聴いた事無かったな。」

珠実「と言うか、打ち合わせとかはしたんですか?」

灰原「そういやそうだナ。白鳥だってずっとここにいたんだし。」

朱雀「いえ、曲を皆さんに送っただけで。」

隆士「後は個人で練習するだけ。」

理想奈「それってぶっつけ本番じゃ・・・」

隆士「そうだよ。」

部長「今晩ガ本番・・・ダジャレでモ何デモ無いでスネ。」

燕「全部ダジャレにしなくてもいいんじゃ・・・?」

夕「大丈夫なんですか?」

隆士「ご心配なく。今でも息は合ってると思いますから。」

そうこうしている内に全員スタンバイした。

美月「隆士お兄ちゃん達の歌か。」

朝美「またあのダンデライオンを歌うの?」

隆士「いや。今度は新しい曲だよ。」

瑞穂「へぇ〜新曲?」

珠実「どんな歌なんです?」

隆士「今日の為に、仕事の傍ら書き綴った歌。挫けそうになった僕を支えてくれた、みんなへの歌だよ。」

夕「みんなへの歌ですか。」

隆士「えぇ。みんながいたからやってこれた事がある。夢への道が途切れかかった時も。もう一度歩ける力をくれた、みんなへの歌です。」

梢「タイトルは、なんなんですか?」

隆士「タイトルはね・・・」

タイトルを訪ねる梢に、隆士は一呼吸置いて、発表する。

隆士「『僕のスピードで』」

そして四人は演奏を始めた。











いつの日か・・・ キャンバスにめいっぱい七色の夢描いた。
気がつけば少し大人になって 何を見つけたんだろう
行くあてのない毎日の中で いちばん大切なことに気づいた
どんな時でも そうさ 大丈夫―仲間がいるから―
忘れない この想い抱きしめて
もう一度 途切れた夢の轍 歩いてみよう



僕のスピードで






下弦の月の調

終演







二十八の調
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