二十五の調
月下の誓い
隆士「話し・・・って・・・?」
二人きりの中庭、隆士は梢を見て問いかける。
梢「私の事、迷惑だと思ってますか・・・?」
隆士「え・・・?」
梢の言葉に隆士は耳を疑った。
隆士「どうしてそんな事を・・・」
梢「私は、隆士さんが悩んで苦しんでいても何も出来ません。そしてあなたの過去を知らずにいました。」
隆士「・・・」
梢「一番大切な人の事を何も知らないなんて、恋人失格もいい所ですよね。」
隆士「そんな事。」
隆士が話続けようとしたが、先に梢が話しだした。
梢「って、考えていたら怒られました。」
隆士「怒られたって・・・一体誰に?」
梢「隆士さんはよく知っている人達ですよ。」
隆士「僕が知ってる?」
梢「赤坂早紀、金沢魚子、緑川千百合、紺野棗。この名に覚えありますよね。」
隆士「っ!?」
梢が知る筈も無い四人の名前を出した事に隆士は驚いた。
隆士「どうして・・・その名前を・・・」
梢「今日のお昼に夢の中でです。私の中にいる、私であって私でない子達。」
隆士「・・・」
梢「知っていたんですよね。私が多重人格と言う事を。」
隆士「・・・ここに来た最初の夜に、桃乃さんから・・・」
隆士は正直に梢に打ち明けた。
梢「花梨ちゃんや、朝美ちゃんの友達、皆さんも知っているんですね?」
隆士「少なくとも、この事件が起きるまでは、鳴滝荘の住人だけだったよ。今は事件に関わったみんなが知ってる。」
梢「そうですか。でしたら知らなかったのは私だけなんですね。」
隆士「梢ちゃん・・・」
梢「自分が多重人格だと知らずに、皆さんにとても迷惑をかけたんでしょうね。」
隆士「そんな事無い!! 誰も迷惑だなんて思ってなんか無いよ!!」
梢「どうしてです? 私は自分の知らない所で本当は何があったのかさえ知らないんですよ。」
隆士「だからって誰も君を、君達を迷惑になんか思う人はいない。そんな人がここにいるわけが無い。」
梢「隆士さん・・・」
隆士「それに僕だって、君の過去を、君が多重人格になってしまった理由を知らない。今日、灰原さんに聞くまでは。」
梢「・・・」
隆士「僕らが初めて会った曾おじいさんの葬式から数日経ったある日、灰原さんはボロボロになっていた君を見つけた。恐らく親から暴力を受け、そして二人ともいなくなっていたから。」
梢「きっとそうだと思います。私にはその時の記憶があまり無いですから分かりませんが。」
隆士「その事から、早紀ちゃん達は生まれた。そして生まれたきっかけの一人が、僕にもある。」
梢「・・・思い出してくれたんですね。あの時の事を。」
隆士「うん。泣いている君に、お話を聞かせてあげた事。そして灰原さんが教えてくれた絵。」
梢「この絵の事ですね。」
梢の手には、クレヨンで描かれた一枚の絵があり、そこには四人の少女が描かれていた。
梢「力持ちで正義感の強いみんなを守ってくれる優しい子。当時の私と同い年くらいのとても明るくて人なつこく、いろんなことに興味津々な子。みんなに可愛い服を配って歩くおしゃれな洋服屋の女の子。虹や星を出すことの出来る、照れ屋な魔法使いの女の子。私が考えた物語のキャラクター達。」
隆士「それぞれ早紀ちゃん、魚子ちゃん、千百合ちゃん、棗ちゃんだね。」
梢「そうですね。」
隆士「この事を聞いた時は自分を恨んだよ。僕のせいで梢ちゃんが多重人格になったって。でも灰原さんは、『お前がいたから梢は今の梢でいられるんだ』って言ってくれた。」
梢「私もあの時隆士さんに会えたからこそ、私自身を保ってこれたと思います。」
隆士「だけどさ、本当にそれでいいのかな。結果として今の君になったけど、もしもあの時何か違っていたら、君は。」
梢「『If』なんてよしましょうよ。考えたらきりが無いですから。」
隆士「・・・それもそうか。」
梢「あ。早紀ちゃんが代わって欲しいって。」
隆士「声聞けるの?」
梢「もう互いを知っていますから。代わりますね。」
梢は一度目を閉じた。
次に開いた時、その瞳は赤色だった。
早紀「久しぶりだな。隆士。」
隆士「早紀ちゃん。」
早紀「この間はお前眠っていたからな。」
隆士「ごめん・・・」
早紀「仕方ねぇだろ。こんな事じゃ。」
隆士「そうだけどさ・・・」
早紀「それに謝りたいのはこっちだよ。」
隆士「え?」
早紀「梢と同じでお前が苦しんでるのに何も出来ないでいたからな。」
隆士「いいってもう。」
早紀「しっかし、お前強かったんだな。人は見かけによらずって言うけどよ。」
隆士「強い、のかな?」
早紀「あたしが保証する。お前は誰よりも強いぜ。」
隆士「ありがとう早紀ちゃん。」
早紀「んじゃ、魚子に代わるな。」
早紀も目を閉じ、開いた時に瞳は金色に代わり、頭に魚子の証であるアホ毛が生えた。
魚子「お兄ちゃ〜ん!!」
隆士「うぉっとぉ!!」
いつも通りの突然タックルを隆士はしっかりと受け止めた。
隆士「ごめんね、心配かけちゃって。」
魚子「ううん。魚子大丈夫だよ。だから謝らないで、お兄ちゃん。」
隆士「ありがとう、魚子ちゃん。」
魚子「魚子、お兄ちゃんの恋人だもん♪」
隆士「そうだったね。」
魚子「千百ちゃんに代わるね。」
魚子はすぐに目を閉じる。
次のアイカラーは緑だった。
千百合「隆ちゃん。」
隆士「やぁ。っと、そうだアレを。」
隆士は千百合が出てきた時に被っていたカツラを取りに行こうとした。
しかし千百合は隆士を引き止めた。
千百合「もう大丈夫ですわ。」
隆士「そう?」
千百合「隆ちゃんは大切な恋人ですから。いつまでも甘えるわけにいきませんわ。」
隆士「そっか。」
千百合「それに、これが最後になるでしょうし。」
隆士「え?」
千百合「後は棗さんからお聞きして。」
そう言い、棗に代わった。
棗「隆士くん。」
隆士「棗ちゃん。最後って一体?」
棗「私達が、一つになる事。梢さんが梢さんだけになる事・・・かも。」
隆士「そ、そんな・・・じゃあ・・・」
棗「私達は、いなくなる・・・かも。」
隆士「棗ちゃん・・・」
棗「でもいいの。これで梢さんの病気が治るんだから。」
隆士「でもその代償が君達の消滅だなんて・・・」
千百合「仕方ありませんわ。」
早紀「あたしらは梢が生み出した存在だ。本当は存在なんかしねぇのさ。」
隆士「だけど・・・」
魚子「大丈夫だよ。魚子もみんなも、お兄ちゃんに会えてと〜っても楽しかったんだから。」
隆士「魚子ちゃん・・・」
梢「みんな、隆士さんの事が好きだから、悲しい顔をして欲しくないんですよ。」
隆士「うん・・・」
千百合「いずれこうなる事は、分かっていたはずじゃありませんか?」
隆士「そうだけど・・・でも僕はそんなのは・・・」
棗「優しい隆士くん・・・だけど、仕方ないかも・・・」
早紀「あたしらだって消えたくないさ。でもそれじゃ梢やお前に迷惑がかかるからな。」
千百合「それなら我慢して、私達は梢さんと一つに戻るべきです。」
魚子「でも一つになれたら、お姉ちゃんの中で魚子達もずっと一緒だよ。」
隆士「そうか。そう言う考え方があったか。」
棗「でもそれは、本当は辛い考えかも・・・」
隆士「え?」
棗「一つになったら、梢さんと一緒なのは事実。だけどそれは『蒼葉梢』であって、本当の意味で私達じゃない。」
隆士「あ・・・」
棗「どんな考えをしたとしても、私達四人は存在などしない。いずれは忘れ去られるだけ・・・」
隆士「それは違うと思うよ。」
棗「え・・・?」
隆士「誰かが覚えている限り、忘れ去られる事にはならない。そして、僕は君達がいた事を、決して忘れたりしない。」
棗「隆士くん・・・」
隆士「優しい所がある赤坂早紀を、元気イッパイな金沢魚子を、オシャレな緑川千百合を、手品が上手な紺野棗を、僕は絶対に忘れたりしない。」
早紀「隆士・・・」
隆士「今ので、決心がついたよ。」
梢「決心、ですか?」
隆士「僕はこの事件が終わったら、ここを出ていくつもりだった。」
梢「・・・やっぱり、殺人者だから・・・ですか・・・」
隆士「うん。過去の罪から今まで逃げて来たけど、向き合わなくちゃいけないって、今頃になって気付いたからね。」
梢「・・・」
隆士「もしそうなった場合、どうする?」
梢「・・・隆士さんの・・・決めた事でしたら・・・」
隆士「それ、本心じゃないよね。梢ちゃん達の本当の答えを聞きたい。」
梢「・・・離れたく・・・ないです・・・みんなも・・・そう・・・」
梢は涙をこらえながら、自分の本心を打ち明けた。
梢「わがままなのは分かってますが・・・やっと会えたんですから・・・離れたくは・・・」
隆士「分かっているよ。だから『だった』って言ったでしょ。」
梢「え・・・?」
隆士「灰原さんに言われて思ったんだ。もしこのまま出て行ったら梢ちゃんは間違いなく悲しむ。一番大切な人を悲しませると言う『罪』を犯す事になるってね。」
梢「それでは・・・」
隆士「君が良ければでいいけど、ずっとここにいる。君から離れたりしないよ。」
梢「隆士さん・・・!!」
隆士のその言葉に、梢は隆士に抱きついた。
隆士「いい、のかな?」
梢「勿論です・・・ずっと・・・ずっと一緒にいたいです・・・!!」
涙を流しながら隆士を強く抱く梢。
隆士「ありがとう。」
そして隆士も梢を優しく抱き締めた。
隆士「もう絶対離れない。死を迎えるいつかまで、決して。」
梢「はい・・・!!」
隆士「そして、みんな。僕は絶対に忘れない。」
早紀「・・・あぁ。」
隆士「君達はここに確かにいた。この世界に、この鳴滝荘に。」
魚子「うん♪ 魚子達ここにいたよ♪」
隆士「それはここにいるみんなが、僕が証明出来る。」
千百合「そうですわね。」
隆士「僕が愛する恋人達。赤坂早紀ちゃん、金沢魚子ちゃん、緑川千百合ちゃん、紺野棗ちゃん。」
棗「うん。」
隆士「そして、蒼葉梢ちゃん。」
梢「はい。」
隆士「・・・またね・・・そしてよろしくね。」
五人への想いを告げ、隆士は梢『達』と口付けを交わす。
ユラユラと揺れる朧月が、優しく照らしていた。
隆士「じゃあ、行って来るよ。」
梢「はい。」
夜が明け、隆士は愛用のコートを羽織り、日輪雫を携えて鳴滝荘の玄関前で出発する仕度をしていた。
虎丈「後はお前だけだな。」
神那「しっかりケリつけてこいよ。」
隆士「勿論。」
瑞穂「でも確か、約束の時間は夜でしょ? 歩いて行くったって、隆士君ならすぐに着けるんじゃ?」
隆士「ちょっと寄り道をしようと思ってね。」
理想奈「寄り道?」
夏樹「梨音の墓ね。」
隆士「流石なっき。ご名答。」
花梨「どうしてそこへ?」
隆士「竜汪、いや。竜也さんと戦う事になるし、一応と思ってね。」
灰原「負けんじゃねぇゾ。」
隆士「勿論です。必ず生きてここへ帰って来ますよ。大切な約束もありますし。」
三千代「約束ですか?」
隆士「どんなかは、秘密ですけど。」
恵「何よぉ。教えてくれたっていいじゃない。」
珠実「全部吐いていかないと行かせませんですぅ。」
隆士「ハハ、参ったなぁ。」
笑いながら隆士は梢を見た。
分かっているのか梢は微笑み返した。
隆士「じゃあ教えますよ。この事件が終わったら。」
沙夜子「終わったら・・・?」
隆士「梢ちゃんと結婚します。」
ほぼ全員「は・・・?」
隆士の告白にほぼ全員が目を丸くした。
翼「あ、あのよ白鳥。今なんつった?」
浩子「わ、ワンモア〜・・・・」
隆士「だから梢ちゃんと結婚します。ね。」
梢「はい♪」
ほぼ全員「何だってぇーーーーー!?」
まさにガラスが割れんばかりの大絶叫の中、隆士と梢は幸せそうな笑顔だった。
隆士「まぁ実際には婚約ですね。僕と梢ちゃんが卒業したらですから。」
朱雀「た、確かに予想はしていましたが・・・これ程早くとは・・・」
沙耶「ま、まぁえぇんやない・・・? 知らんけど・・・」
朝美「け、結婚って・・・大人だなぁ・・・」
珠実「ちょっと白鳥さん、早すぎじゃないですか? ちゃんと梢ちゃんを幸せに出来るんですか?」
隆士「して見せるさ。梢ちゃんの為にも、僕自身の為にもね。」
珠実「梢ちゃんはいいのですか?」
梢「うん。隆士さんの妻になって、ずっと一緒にいるって決めたから。」
珠実「そうですか・・・なら私は何も言いません。」
部長「オめでとうゴサいマス。」
夏樹「ま、仕方ないか。梢、隆をよろしく。」
隆士「なっき・・・普通逆じゃない?」
夏樹「さぁ?」
理想奈「でも瑞穂も朱雀も夏樹もいいの?」
瑞穂「いいわよ、分かりきってた事だから。」
朱雀「後継ぎの事は燕に任せてますし。」
夏樹「第一、隆が決めた事だしね。」
隆士「何かごめんね。やっぱり僕は梢ちゃんが一番大切なんだ。」
朱雀「いいです。隆士様が幸せであれば私も幸せですから。」
夏樹「ま、そゆ事だよ。」
瑞穂「ちゃんと梢ちゃんを幸せにしなさいね。」
竜太郎「それよりも先に決着つける事だろ。」
灰原「だな。梢との事はそれが終わったらだ。」
隆士「はい。」
梢「待っていますから。あなたが帰るのを、この鳴滝荘で。」
隆士「うん。」
朝美「頑張ってね。お兄ちゃん。」
沙夜子「ファイト〜」
珠実「何かあったらただじゃおかないですぅ。」
恵「さよならにはならないでね。」
灰原「何度も言うが、梢を悲しませるような事にはなんなよ。」
隆士「えぇ。それじゃ、行ってきます。」
梢「行ってらっしゃい。」
朝日の中、隆士は鳴滝荘を発ち、皆は隆士を見送った。
竜汪「・・・いよいよだな・・・」
その頃、竜汪は決戦の場所に指定された鳴滝荘から遠く離れたり山間の採掘場跡に既に来ていた。
竜汪「梨音、もしお前がいたら、今頃どうなっていたのだろうな。」
竜汪は首からかけていたペンダントを手に取った。
その中には梨音の写真が入っていた。
竜汪「あいつとも、こんな形で刃を交えなかった。そんな気がしてならない。今となっては仕方ないのかも知れないが、未練でな・・・」
写真の梨音に話しかける竜汪。
その表情は寂しさが漂っていた。
竜汪「こんな兄を許してくれとは言わない。ただ、この戦いの行く末を見守ってくれ。」
竜汪の言葉に一瞬、風が優しく通り過ぎた。
隆士「梨音・・・」
正午に差し掛かる頃、隆士は梨音の墓に着いた。
隆士「僕はこれからお兄さんと戦うよ。僕の過去に決着をつける為に。」
梨音の墓に話しかける隆士の顔には一切の迷いも躊躇いも無かった。
隆士「あの日、君を守れなかった僕の罪を、お兄さんが裁いてくれるか分からないけど、この戦いの後で何か答えが見つかる気がするんだ。」
返事が無くても、隆士は話し続ける。
隆士「そうそう。僕に大切な人が出来たよ。蒼葉梢ちゃんって言って、梨音そっくりなんだ。全部終わったら結婚するって約束したから、梨音の代わりってわけじゃないけど、必ず幸せにしてみせる。その内紹介するね。」
話し続ける隆士に反応したのか、それともただの偶然か。
一陣のそよ風が通り、供えられていた花が揺れた。
まるで梨音が返事をしたかのように。
隆士「今のは『頑張って』って言ってくれたのかな? それともただの風のいたずら?」
微笑んで問いかける隆士、花は風と共に揺れていた。
うなずくように。
隆士「ありがとう。梨音。」
「おや? 隆士君かい?」
隆士「え?」
隆士は墓参りに来たと思われる夫婦に話しかけられた。
隆士「おじさん、おばさん。久しぶりです。」
面識があるらしい隆士。
それもそのはず、この夫婦こそ梨音の両親だ。
梨音母「大きくなったわねぇ。」
隆士「それなりには。それにしても、奇遇ですね。」
梨音父「あぁ。何となく墓参りに行こうと思ったんだ。隆士君もかい?」
隆士「まぁ、そんな所です。」
梨音母「隆士君は今何をしているの?」
隆士「相変わらず絵本作家目指してますよ。専門学校にも通ってます。」
梨音母「まぁ。」
梨音父「それは凄いな。梨音もきっと喜んでいるだろう。」
隆士「そうでしょうか。」
梨音母「喜んでいるわよ。あ、そうそう。」
何かを思い出したのか、梨音の母は隆士に何かを渡した。
隆士「これ・・・は・・・」
梨音母「受け取って。梨音のだから。」
それは虹色の小さなリボンだった。
隆士「いいんですか?」
梨音父「いいとも。それに忘れたのかい? これは君がくれた物だよ。」
隆士「あ・・・」
隆士は手の中のリボンを見て、封じていた過去を思い出した。
それは梨音の十歳の誕生日。
通っていた小学校の屋上での事。
隆士&夏樹「誕生日おめでとう梨音。」
梨音「ありがとう隆、なっちゃん。」
夏樹「はい、ボクからのプレゼント。手作りクッキーだよ。」
梨音「わぁ〜」
夏樹「さ、隆も早く早く。」
隆士「うん。僕はこれ。」
隆士は照れながら小さな箱を渡した。
梨音「何だろう。開けていい?」
隆士「うん。」
梨音は箱を開けた。
中にはそのリボンが二つあった。
梨音「素敵〜 ねぇ、つけていい?」
隆士「うん。」
梨音はリボンで左右の髪を結んだ。
梨音「似合う?」
隆士「とっても似合うよ。ね?」
夏樹「うんうん。隆、やるじゃない。」
梨音「ありがとう、隆♪」
喜んだ梨音は満面の笑みを浮かべた。
隆士「あの笑顔すら、閉じ込めてたなんてな・・・僕って奴は・・・」
自責の念にかられそうになったが、すぐに迷いを捨てさり、リボンを右手首に巻いた。
隆士「でも確か二つだったはずじゃ?」
梨音母「もう一つは分からないのよ。多分竜也が持っていったのだと思うけど。」
隆士「そう・・・ですか・・・」
梨音父「それにしても、竜也も今何をしているんだか。」
隆士「そうですね・・・それじゃ僕はそろそろ行きますね。」
梨音母「頑張って夢を叶えてね。」
隆士「はい。では。」
一礼をし、隆士は墓地を去った。
梨音父「あの眼差し。何か大きな事に向かうと言う感じだったな。」
梨音母「そうね。無事でいてね。隆士君。」
梢「えっと、後買うのは・・・」
その頃梢は双葉銀座で一人買物に来ていた。
ちょうど八百長の前を通り過ぎた時に八百長のおじさんが話しかけて来た。
八百長「おう梢ちゃん。買物かい? 今日もいい野菜が入ってるよ。」
梢「では〜・・・」
梢は立ち寄った八百長でいくらか野菜を購入した。
八百長「毎度あり!! 所で、何かいい事あったのかい?」
梢「はい♪ 隆士さんと婚約しました♪」
八百長「おぉ結婚か!! ついに梢ちゃんもそう言う事を考えるようになったんだなぁ〜・・・式はいつだい?」
梢「まだまだですよ。私達が学校を卒業したらです。」
八百長「となると半年って所か。待ち遠しいねぇ。」
梢「えぇ。でもこれからもずっと隆士さんと一緒ですから。」
八百長「あの兄ちゃんなら任せられるぜ。よし、こいつはサービスだ!!」
そう言い八百長のおじさんは大量の野菜を袋に入れて梢に渡した。
八百長「旦那さんに美味い飯作ってあげなよ。」
梢「ありがとうございます。」
野菜を購入した梢は鳴滝荘に向かい歩き出した。
梢「それにしても、ちょっと多かったかな・・・?」
八百長のサービスの量が多く、足取りは遅かった。
梢「早く帰ってくるといいな、隆士さん。」
「悪いが、帰ってくる頃にお前はいない。」
梢「え?」
突然話しかけられ、梢は振り返った。
梢「あなたは?」
「悪いが来てもらうぞ。蒼葉梢。」
竜汪「・・・」
夜を迎え、竜汪はペンダントを握りしめたままただ立っていた。
竜汪「・・・来たか。」
隆士が来た事を察知した竜汪はペンダントを首にかけ、その先を見た。
隆士「お待たせ。」
竜汪の視線の先には確かに隆士が着いていた。
隆士「とうとう来たね。この時が。」
竜汪「あぁ。」
言葉少ない二人の間を風が通り過ぎた。
竜汪「今更話す事もあるまい。」
隆士「そうだね。」
二人は互いの刀を抜き、構えを取る。
竜汪「日輪雫か、先生から譲り受けたのだな。」
隆士「僕にはちょうどいい刀だからね。誰も殺したくない。かと言って君に対して手加減なんか出来やしないし。」
竜汪「それもそうだな。」
隆士「九星流奥義伝承者白鳥隆士。我が過去の過ちに見向かう為、我が最愛の友青島梨音の為、そして愛すべき蒼葉梢の為に。今、青島竜也と戦う。」
竜汪「九星流奥義伝承者竜汪。その宣告を受け、白鳥隆士との決戦に挑む。参れ!!」
隆士「あぁ!!」
先に踏み込んだ隆士、一気に竜汪へ斬りかかった。
竜汪「ふん!!」
風の音以外聞こえないその場に、刃のぶつかる音が響き渡った。
竜の激突の如く強く、そして激しく。
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