二十三の調


二つの決着








朝美「・・・」

沙耶「朝美・・・」

朝美達は重傷を負って今も意識が戻らない鳥汐を見守っていた。

まひる「朝美、お前も怪我している。安静にしていろ。」

朝美「大丈夫だよ・・・このくらい・・・鳥汐ちゃんの怪我に比べたら・・・」

三千代「そうは申されても・・・」

朝美「大丈夫だから・・・」

タチバナ「・・・」







理想奈「それで、朝美ちゃんは大丈夫なの?」

隆士「うん。でも鳥汐ちゃんはまだ・・・」

梢「そうですか・・・」

その頃他の者は鳴滝荘にいた。

神那「釈迦の野郎、ふざけた事しやがって・・・」

虎丈「使い物にならなくなったら捨てるか・・・」

花梨「人の命を何だと思っているの・・・」

朱雀「昨日言ってたように実験の材料と道具でしか無いのね・・・」

梢「そんなの・・・間違っています。絶対に。」

隆士「もうこんな悲しみを作るわけにはいかない。早く釈迦を捕まえないと。」

朱雀「はい。しかし、夕様はどうしたのでしょうか。」

夏樹「昨日あんたらが逃した後知らない間にいなくなったって聞いたからね。」

恵「あの釈迦ってのと因縁あるっぽいし、どうしたんだか。」

珠実「さぁですぅ。」

瑞穂「で、次は誰が来ると思うの?」

隆士「残るは五強だからね・・・」

朱雀「昴ちゃんなら多分兎連と来るでしょうね。」

虎丈「だが来るとは限ら無い。」

神那「だな。忍の野郎だってそうだし。」

浩子「やっぱり襲って来る人で誰が相手するか決まってるの?」

隆士「そりゃあ、竜汪は僕だよ。虎焔は虎丈、蛇蒼は神那、そして馬邨は朱雀さんさ。」

灰原「因縁ある奴同士か。」

朱雀「始めから決めていた事ですしね。」

部長「マず誰が来ルか、そこデスね。」

神那「言えるぜ・・・果たして誰か・・・」







兎連「あの子は病院に運ばれたってさ。」

馬邨「そう・・・」

その頃五強の五人はアジトに集まっていた。

兎連「ホントに酷いよね。使えないって決めた途端排除だなんて。」

虎焔「始めから分かっていたはずだ。俺達は消耗品のような物だと言う事を。」

兎連「ま、分かっていてもさ・・・嫌なのは嫌だよ・・・」

竜汪「確かにな・・・」

蛇蒼「お前達は十字架を背負っているからな、悲しみの十字架を。」

馬邨「あなたはどうなの?」

兎連「蛇蒼はただ単に強い奴と戦えればいいんでしょ?」

蛇蒼「あぁ。強さを極めた先に何があるのか、それを知りたい。その為には多くの強者と戦わなければな。」

兎連「変なの。で、次誰が行く?」

虎焔「なら俺が行く。そろそろ虎丈と拳を交えたくなった。」

蛇蒼「共に行く。今なら神那とは良い戦いが出来そうだからな。」

兎連「二人同時にか。それなら釈迦も文句は言わないでしょうね。竜汪は?」

竜汪「俺はまだいかない。時を待つ。」

兎連「なら私もまだいいわ。いいでしょ? 馬邨。」

馬邨「ご自由に。」

兎連「多分これが最後でしょうね。」

蛇蒼「だろうな」

兎連「どう? 最後の一杯って事で。」

そう言って兎連は他の四人に缶コーヒーを投げ渡した。

馬邨「どっから持って来たの?」

兎連「いいじゃん。」

竜汪「悪くは無いな。」

虎焔「そうだな。」

兎連「じゃ、乾杯。」

蛇蒼「乾杯。」

五人は一口だけコーヒーを口にし、缶を床に置いた。

虎焔「じゃあな。」

蛇蒼「縁があれば何処かで。」

竜汪「あぁ。」

馬邨「またね。」

兎連「ガンバ。」

一言だけ言葉を交わし、虎焔と蛇蒼はその場を去った。







夕「痛た〜・・・」

隆士「無理し過ぎですって。」

夜が明ける少し前に夕は鳴滝荘に戻って来たが怪我をしていた。

丑三「話し聞いた時は驚いたぞ。」

サクラ「まさかこんな時間に出掛けるとは思いませんでした。」

夕「すいません・・・」

朱雀「この傷から兎連ね。」

夕「えぇ。」

虎丈「本当は釈迦を追ったんじゃないのか?」

夕「そうなんですが、途端に現れまして。」

神那「で、釈迦は逃がしたと。」

夕「彼は私がこの手で止めて見せます。絶対に・・・」

丑三「なぁ夕ちゃん。あ奴と何かあったのか? よければ話してくれぬかの。」

夕「はい・・・私と高次は・・・昔交際をしていました・・・」

丑三「なっ!?」

サクラ「奥様の・・・恋人・・・?」

夕「はい・・・」

隆士「驚いたな・・・夕さんにそう言う人がいただなんて。」

菫里「昔、ワシと高次が研究をしておったのは前に言ったろ。それで視力向上の実験を、夕で行ったのじゃ。」

隆士「でもそれで夕さんの体は・・・」

菫里「あぁ。」

夕「命には関わらないとは分かりましたが・・・それから光を浴びれなく・・・」

菫里「じゃが奴はその事を気にせず、研究を続けようとした。」

夕「そして彼は・・・」







菫里「高次!! 何処へ行く!?」

高次(釈迦)「決まってる。自由に研究出来る場所へだ。」

あの雨の日、高次は出て行こうとして、兄さんともめていました。

菫里「何だと!? お前夕があのようになってまだ!!」

高次「関係無いな。」

菫里「貴様!!」

夕「こ、高次・・・」

菫里「夕!!」

夕「高次・・・行かないで・・・お願い・・・」

高次「なら来るか。お前がいれば研究もはかどるからな。」

夕「やっぱり続けるの・・・?」

高次「あぁ。嫌なら来るな。」

夕「もう・・・やめましょうよ・・・」

高次「断る。そのようなら来るな。邪魔になる。」

夕「邪魔・・・」

菫里「貴様それでも夕の恋人か!?」

高次「知らないな。そうでも俺は続ける。」

夕「高次・・・」

高次「・・・」







夕「何も言わず彼は去って行きました。体に当たる雨が痛く、冷たかった・・・ただ頬を伝う涙が熱かった・・・」

丑三「夕ちゃん・・・」

夕「丑三さんに会ったのはその後です。」

竜太郎「かつての恋人が相手か・・・ひでぇな・・・」

夕「ですが私は迷いません。皆さんが頑張っているのに躊躇う事など出来ませんからね。」

朱雀「夕様・・・」

虎丈「確かに。迷いがあれば戦いに支障が生じる。」

神那「俺らの戦いは死と常に隣合わせのようなモンだからな。」

花梨「そうですけど、そんな言い方は・・・」

夕「いいんです。」

梢「皆さんが辛い思いを背負っているのですね・・・」

珠実「梢ちゃん・・・」

隆士「人は誰しも傷を背負って生きているんだ。大きな事小さな事、問わずにね。」

虎丈「そうだな・・・」

神那「ま、暗いのはこの辺で終いにしようや。」

夏樹「そうね。」

隆士「それじゃあ寝ようか。昨日からずっと起きっぱなしだしさ。」

梢「そうですね。」

珠実「生活リズム崩れそうですぅ〜」

恵「飲み会だった時はほぼ毎日だったじゃない。」

灰原「あのなぁ・・・」

瑞穂「ついでだし、また泊まる?」

理想奈「いいけど、朝美ちゃんいないからなぁ・・・」

翼「俺は病院行って来る。みっちゃんも一緒にいるだろうからな。お姉さんは?」

沙夜子「行くわ・・・」

灰原「でもよ。そうなるとまた部屋がな。」

竜太郎「俺は恵とだな。な?」

恵「変な事は駄目よ?」

竜太郎「ったりめぇだろ・・・」

瑞穂「私は隆士くんと寝ようかな?」

隆士「いい!?」

梢「だ、駄目です!!」

朱雀「そうです!! 隆士様は私と・・・」

梢「朱雀さんも!!」

夏樹「ボクだよ!! 隆と寝るのは!!」

理想奈「一人は寂しいからなぁ〜私もちょっと白鳥君と寝てみたいかな?」

隆士「理想奈さんまで!?」

夕「若いっていいですねぇ〜ね? 丑三さん?」

丑三「ね? って・・・ゆ、夕ちゃん・・・?」

夕「うふ♪」

花梨「もうえぇわ・・・寝よ寝よ。」

浩子「うん・・・」

部長「デは珠実部長、一緒に。」

珠実「死んでも嫌ですぅ!! この根暗ド変態マゾ魔王!!」

部長「ハァ〜〜〜!!」

虎丈「何だよこの状況・・・」

神那「知るか・・・」

この光景に呆れた虎丈と神那は外に出た。

神那「さてと、別に眠くないからどうするか。」

虎丈「そうだな・・・って。大体何が来るか、もう予想はついてるだろ。」

神那「だな・・・場所は遠いっぽいな。乗れよ。」

虎丈「いや、いい。」

神那「あのな、疲れるだろ?」

虎丈「大丈夫だ。」

神那「そっかい。」

そう言って二人は何処かへ向かった。







虎焔&蛇蒼「・・・」

正午に差し掛かる頃、鳴滝荘から遠く離れたとある町の神社に虎焔と蛇蒼がいた。

虎焔「・・・来たな。」

蛇蒼「あぁ。」

神那「どりゃあっ!!」

虎丈「っと。」

神社に虎丈と神那がやって来た。

神那「ふぅ・・・俺は何処ぞの改造人間じゃねぇっての。」

虎丈「こんなバカ長い階段をバイクで登る奴がいるかって話だろうが。」

神那「まぁ言うな。」

虎丈「ったく。」

虎焔「よくここだと分かったな。」

和哉「よく言うぜ。気配を丸出しだったのはそっちだろうが。」

虎丈「ま、感じ取れた俺達も異常だがな。」

蛇蒼「話しはそれまだでにしろ。」

虎焔「そうだな。」

虎丈「虎焔・・・いや、和人さん。」

虎焔「その名は止めろ。浅葱和人はもういない。」

虎丈「それ、カッコつけですよ・・・」

神那「お前はどうなんだ? 鈍宮忍は。」

蛇蒼「それはお前次第だ。」

神那「あそ。」

蛇蒼「聞くまでも無いが、ここに来たと言う事は決着をつける為に来たのだな。」

虎丈「あぁ。」

虎焔「ついにこの時が来たな。」

神那「楽しみにしていたか?」

蛇蒼「どうなんだろうな。考えた事など無かったからな。」

神那「そうか。俺は楽しみだったぜ。お前と決着つけれるから。」

蛇蒼「敵討ちと言い事か。」

神那「違ぇな。俺自身の男としてのケジメだ。」

蛇蒼「そうか。」

神那「今日は久々に、本気で行くぜ!!」

神那は持って来ていた槍を取り出して構えた。

虎丈「全力で行く・・・アンタに復讐の道を歩ませない為に!!」

そして虎丈も戦う構えを取った。

虎焔「いいだろう。止められるなら、止めてみろ!!」

蛇蒼「行くぞ!!」

四人は同時に駆け出した。

虎丈「たぁーーー!!」

神那「どりゃーーー!!」

虎焔「うぉーーー!!」

蛇蒼「はぁーーー!!」

それぞれ虎丈と虎焔、神那と蛇蒼とぶつかった。







隆士「! 今の・・・」

隆士は四人が戦いを始めた事に気付いて起きた。

隆士「ここはあの二人に任せて、もう一度寝直・・・そ・・・」

寝直そうとした隆士はある事に気付き止まった。

隆士「な、何故・・・?」

理想奈「ん〜・・・」

何故か隆士の布団に理想奈が寝ていた。

隆士「な、何かしたか僕・・・いや、そんなわけ無いはずだ・・・」

隆士はそっと部屋を出ようとした。
しかし。

理想奈「う〜ん・・・白鳥く〜ん・・・」

隆士「うぇっ!!」

寝ぼけた理想奈が隆士を引き止め押し倒した。

隆士「ちょちょちょちょっ!! 理想奈さん止めっ!!」

そもそも何故理想奈が隆士と寝ていたか。
虎丈と神那が鳴滝荘を出た直後に話は遡る。



朱雀「いいじゃないですか!! 隆士様と共に眠る事くらい!!」

梢「隆士さんは私の恋人なんです!! それに私は前に一度だけ・・・」

夏樹「あら、それならボクは何度も隆と寝てるよ?」

瑞穂「んなの子供の頃でしょ? ノーカンに決まってるでしょ。」

このように誰が隆士と寝るかで争いが起きていた。

隆士「先寝てます・・・」

呆れた隆士は先に部屋に行った為この後の事を知らなかったのだ。

恵「にゃらくじ引きでいいんじゃない?」

梢&瑞穂&朱雀&夏樹「え?」

珠実「ちょっと桃さん〜?」

恵「ちょうどいい具合に割り箸が四本あるわ。先が赤いの引いたのが白鳥クンと一緒におネンネ出来るって事で。」

そう言って恵は手早く準備をした。

恵「さぁどぞ!!」

梢&瑞穂&朱雀&朱雀「・・・」

四人はこれまでになく集中した。
しかしそこで。

灰原「オイ、ちょっといいか。」

恵「どしたのバラさん?」

灰原「朱桜の奴がいないが。」

梢&恵&珠実&瑞穂&朱雀&夏樹「え?」

部長「彼女ナら玉無しさんノ所へ向カイましたヨ。」

梢&瑞穂&朱雀&夏樹「えぇ〜〜〜!?」

恵「ありゃあ〜抜け駆けね。」

瑞穂「そんなの許されるわけ無いでしょ!! 理想奈〜〜〜!!」

朱雀「そう言うあなただってそのつもりでしょう!!」

夏樹「待ちなさいアンタら!!」

梢「えっ!? ちょっとぉ〜〜〜!!」

四人はすぐに隆士の部屋に向かった。

恵「ホントもてるねぇ。五人目?」

灰原「面白半分ダロ、絶対。」

珠実「その内闇討ちで殺すですぅ!!」

龍太郎「闇討ちかよ・・・」



朱雀「うぅ〜・・・鍵がかかってます・・・」

瑞穂「梢ちゃん。合い鍵とか無い?」

夏樹「いらないわよ。ボクがぶちやぶるから。」

梢「よしましょうよ。隆士さんも疲れてますし。」

瑞穂「それもそうね・・・ただ何かあったら・・・」

夏樹「だからボクがぶちやぶるから。」

梢「それも出来ればやめてください。ここを壊さないで欲しいです。」

夏樹「はいはい。」



と、言う事があったのだ。

隆士(本当に何もしてないよね・・・それに何もされてないよね・・・?)

理想奈「ん〜・・・」

隆士(理想奈さんって眼鏡外したら可愛いな・・・やっぱり俗に言う眼鏡っ子と言うのかな・・・って何考えんだ僕は!!)

隆士は必死になって雑念を振り払おうとした。
その時。

理想奈「う・・・ん・・・」

理想奈が目覚めた。

隆士「げっ・・・」

理想奈「ん・・・あ、白鳥くんおはよう・・・」

隆士「お、おはよう・・・じゃなくて何でここにいるんですか!?」

理想奈「だって朝美ちゃんいないし一人も寂しいでしょ? 白鳥くんとならいいかなって。」

隆士「全然よくないですって!!」

理想奈「大丈夫よ〜何もしてないから。」

隆士「そ、それなら安心・・・じゃなくて!!」

理想奈「まだ何か?」

隆士「そ、それはその・・・何で僕ならいいの?」

理想奈「だって、白鳥くん可愛いから。」

隆士「可愛いって・・・男なんだから格好いいって言って欲しいよ・・・」

理想奈「ふふっ・・・そう言う所が可愛いの。」

そう言って理想奈は隆士に迫った。

理想奈「瑞穂や大家さん達が好きになるの、分かるな・・・」

隆士「り、理想奈さん寝ぼけてますよね・・・絶対そうですよね!?」

理想奈「どうかな・・・?」

隆士「ひぃ〜〜〜!!」

隆士は色んな意味で身の危険を感じた。
その時。

夏樹「隆ぅーーー!!」

隆士「ほへぁ!?」

突然夏樹がドアを破壊した。
それに続けて。

瑞穂「こら理想奈!! アンタって子はぁーーー!!」

理想奈「きゃうっ!!」

瑞穂が乱入し、隆士と理想奈を引き離した。

瑞穂「嫌な予感がして来て見たら!! 誘惑したのはこの口かぁ!?」

理想奈「ひはひっへひふほぉ〜〜〜!!(訳 痛いって瑞穂ぉ〜〜〜!!)」

梢「隆士さん!!」

朱雀「隆士様!!」

そして梢と朱雀も来て、二人は隆士に寄った。

梢「隆士さん大丈夫ですか!?」

朱雀「彼女に何かされませんでしたか!?」

隆士「大丈夫だよ・・・そう理想奈さんは言ってたし。」

梢「そうですか・・・良かったです。」

夏樹「安心するのは早いよ。」

朱雀「そうですね。もしそれが嘘だとしたら。」

理想奈「ふへっ?」

瑞穂「理想奈、本当に何もしてないよね?」

理想奈「してないしてない!!」

瑞穂「そぉ? 被告はこう言ってるけど。」

夏樹「まぁいいわ。でもボク達から隆を奪う何て、いい度胸だね。」

理想奈「ひぇ?」

朱雀「お仕置きが必要ですね。」

梢「私も手伝います!!」

理想奈「えぇ〜〜〜!?」

隆士「ちょ、ちょっとみんな・・・」

夏樹「どっかに拉致する?」

瑞穂「時間が惜しいわ。ここでしましょう。」

朱雀「そうですね。」

梢「隆士さん。しばらく部屋を貸してください。」

隆士「う、うん・・・出た方がいいよね?」

瑞穂「別にいてもいいよ。」

隆士「や、理想奈さんに聞いたんだけど。」

理想奈「な、内容によるかな?」

瑞穂「じゃ。始めるよ。」

梢&朱雀&夏樹「うん。」

そして四人は理想奈に迫った。

理想奈「ちょ、何々!? 何で脱がそうとするの!?」

梢&瑞穂&朱雀&夏樹「勿論お仕置き。」

理想奈「や、やめてって!! 白鳥くんいるのよ!?」

隆士「ご、ごめん!!」

隆士は流石にお仕置きの内容に気付き部屋を出た。

隆士「はぁ〜・・・」

理想奈「待って待って!! あ、そんな所!!」

隆士「ふぅ・・・虎丈、神那。頑張れよな。」

隆士は空を見て戦っている二人に呼びかけた。

理想奈「ぴぇ〜〜〜〜〜!!」

隆士「・・・」

隆士は部屋の中で行わているお仕置きに耳を傾けず、その場を去った。







虎焔「熊拳!!」

虎丈「狼牙!!」

舞台を森の中に移した虎丈と虎焔は木の上を飛び、互いに技を放つも受けられていた。

虎丈「くっ・・・やっぱ強い・・・」

虎焔「どうした。その程度では俺には勝てないぞ。」

虎丈「ちっ!!」

虎丈は鮭跳で急降下し、虎焔から離れた。

虎丈「このままじゃやられる・・・何か考えねぇとな。」

虎丈は大木の影に隠れた。

虎焔「それで隠れたつもりか!!」

虎焔は気付いており、一気に迫った。

虎焔「蛇掘!!」

虎丈「いっ!?」

虎焔の蛇掘は大木を貫いた。

虎丈「どあっ!!」

虎丈は何とかかわすも、大きく隙が生じた。

虎焔「そこだっ!!」

その大木を虎焔は蹴り折り、折った木を虎丈に向けて蹴った。

虎丈「マジかよっ!! このっ!!」

虎丈は体制を持ち直し、すぐに攻撃の構えをとった。

虎丈「蜂針!!」

両手指先の連続突きで虎丈は木を粉砕した。

虎丈「この後来るのは恐らく!!」

虎焔の次の攻撃を予測した虎丈は犀撃の構えを取った。

虎焔「鷹爪!!」

虎丈「やっぱりな!!」

虎焔は鷹爪を仕掛けてきたが、それは虎丈の予測通りだった。

虎丈「おりゃあっ!!」

虎焔「ぐっ!?」

虎丈の犀撃は鷹爪で仕掛けた虎焔の足を受け止め、同時に吹っ飛ばした。

虎丈「とことんやってやる!! 蛇掘!!」

そのまま虎焔に向かい虎丈は蛇掘を仕掛けた。

虎焔「なめるなっ!! ふんっ!!」

虎焔は亀鋼で虎丈の蛇掘を防御した。

虎丈(俺以上に堅い・・・だが!!)

虎焔「ぬっ!?」

虎丈は立て続けに狐閃を仕掛けた。

虎丈「亀鋼の防御も無限じゃない!! いつかは必ず!!」

虎丈は続けて蜂針を放ち。

虎丈「でりゃっ!!」

虎焔「ぐおっ!!」

最後に熊拳を放つと虎焔の亀鋼が崩れて虎焔は上空へ上げられた。

虎焔「亀鋼を崩すとは・・・やるようになったな!!」

虎焔は鮭跳で虎丈に向かった。

虎焔「だが隙が出来てるぞ!!」

虎焔は両腕を引き、左右同時に熊拳の構えを取った。

虎焔「熊拳!!」

虎丈「ヤバイ!! くっ!!」

虎丈は咄嗟に亀鋼で防御を図った。

虎丈「どあぁっ!!」

亀鋼で防御したとは言え二発同時の熊拳は強く、虎丈は地面に叩き落されてしまった。

虎丈「ったた・・・きっつぅ〜・・・」

虎焔「しかし中々だな。強くなった。俺の亀鋼を破れるようになったとは。」

虎丈「アンタがいなくなった後も一人でやってたからな。アンタを止める為に。」

虎焔「そうか。」

虎丈「まだまだ・・・これからだ!!」

そして虎丈は飛燕で一気に虎焔に迫っていった。




蛇蒼「はぁっ!!」

神那「おっとっと!!」

その頃同じ森の別の場所で蛇蒼と神那も戦っていた。
蛇蒼は両袖の中から鎖分銅を投げ出し、神那は槍で弾いていた。

神那「あんなのに絡まれちまったら即アウトだからな・・・かと言って懐に飛び込めるほど簡単な奴でもねぇ・・・」

蛇蒼「どうした。その程度か?」

神那「うっせぇなこんなろ!!」

神那は一気に蛇蒼に向かい走り出した。

蛇蒼「この程度で乗るとは、まだまだ甘い!!」

神那の接近に蛇蒼は左袖の鎖分銅を一つ飛ばした。

神那「毎度毎度同じ手に食うかよ!!」

鎖分銅を紙一重でかわしてそのまま走り続けた。

蛇蒼「同じとは、限らん!!」

神那「何っ!?」

蛇蒼が腕を振るうと分銅が神那の後ろを回り、鎖がその体を巻きつけるように曲がった。

神那「やべっ!!」

鎖が巻きつく直前に神那はジャンプし、そのまま蛇蒼へ斬りかかった。

蛇蒼「ふっ!!」

蛇蒼も神那が斬りかかると同時に後ろへジャンプし、空中から右袖の鎖分銅を一つ飛ばした。

神那「おっと!!」

神那はそれを槍の柄で弾き、蛇蒼に向かってジャンプした。

神那「おんどりゃあぁーーー!!」

蛇蒼「まだまだ!!」

神那の一閃を蛇蒼は足で払った。

蛇蒼「分銅だけが手段ではない!!」

神那「だろうな!! だが空中なら避けれ無いだろ!!」

蛇蒼「どうかな!!」

蛇蒼は左袖の分銅を近くの木の枝に飛ばして巻きつかせ、その木の所まで移動した。

神那「んなのありかっての・・・」

若干呆れながら神那は着地し、蛇蒼も下に降りた。

神那「第一、今更言う事じゃないが鎖分銅って何だよ。どう言う原理でやってんだっつぅの。」

蛇蒼「わざわざ戦法を敵に言うと思うか。自分で考えろ。」

神那「そうかいそうかい。」

蛇蒼「さて、再開だ!!」

蛇蒼はすぐに右袖の鎖分銅を一つ神那に飛ばした。

神那「一見ワンパターンだが、その鎖が厄介な動きをするからな。そんならやるべきは一つ!!」

蛇蒼「何っ!?」

神那はその鎖分銅を右の槍で巻き取った。

神那「おらよっ!!」

蛇蒼「くっ!!」

そのまま左の槍でその鎖を切断した。

神那「一本取ったぜ。」

蛇蒼「やられたな。まさか鎖を斬るとは。」

神那「こいつを使っての馬鹿力は俺の十八番なんでな。牛凱のだってこれでやったんだぜ?」

蛇蒼「そうだったな。だがまだ一本だ。」

そう言うと蛇蒼は腕を振るい、袖の中から斬れた鎖を出した。

神那「一隊どう言う原理で・・・まぁいいか。気にしたってはじまんねぇんだ。」

蛇蒼「そう言う事だ。戦いの時は戦いに集中しろ。」

神那「そうかいそうかい。ったく・・・面倒な奴だなっ!!」

蛇蒼「はぁーーー!!」







理想奈「うぅ・・・酷いよぉ〜・・・」

瑞穂「隆士君に手を出したアンタが悪い。」

梢&朱雀&夏樹「うんうん。」

その頃鳴滝荘ではおしおきが終わったらしく、隆士と梢達四人、元気の無い理想奈が中庭に集まってた。

夏樹「別にちょっと上着をめくってこちょばしただけだってのに、隆も何考えてんだか。」

隆士「悪かったね・・・」

隆士は何を思ったのか、僅かだが鼻血が出ていた。

梢「所で、虎丈さんと神那さんがいないみたいですが。」

隆士「あの二人なら、今戦ってるよ。」

朱雀「え?」

瑞穂「何で分かるの?」

隆士「遠くからだけど、何となく分かるんだ。虎丈が虎焔と、神那が蛇蒼と戦っているのが。」

朱雀「お二人も遂に決戦・・・そう言う事ですね。」

瑞穂「大丈夫なの?」

隆士「大丈夫さ、あの二人なら。そう信じようよ。」

梢「そうですね。」

隆士「それに、そろそろ僕の出番も近いだろうからね・・・」

朱雀「私もです・・・」

夏樹「終わりが近い・・・そう言う事なのかな。」

隆士「そうなるね。でも今は二人の帰りを待つ、出来る事はそれくらいさ。」

瑞穂「隆士君がそう言うなら、待っていましょ。」

理想奈「うん。」

隆士「信じてるからね・・・虎丈、神那。」







神那「はぁはぁ・・・これで・・・三本目だ・・・」

蛇蒼「はぁはぁ・・・やはりやるな・・・流石だ。」

太陽が西に傾き、辺りが茜色に染まる頃になっても戦いは終わっていなかった。


虎丈「ぜぇぜぇ・・・やっぱ・・・強ぇよ・・・」

虎焔「くっ・・・お前も強くなった・・・」


神那「負けるわけにいかねぇからな・・・時雨の為に・・・美乃の為に・・・!!」


虎丈「決めてるんだよ・・・虎焔を名乗りだしたアンタを・・・浅葱和人へ戻すってな・・・!!」

虎焔「ならやってみろ・・・やれるならな!!」

虎丈「ったりめぇよ!!」


蛇蒼「ならばその意志、貫いてみせよ!!」

神那「言われなくっても!!」

強き決意を胸にそれぞれの場所で二人は相手に立ち向かった。

神那「おらおらおらぁーーー!!」

神那は我武者羅に双槍を振るい、蛇蒼に仕掛け続けた。

蛇蒼「一見ただ力任せに振るってるかのように見えるが・・・的確に突いてきてるな・・・!!」

神那の槍を蛇蒼は捌き続け、反撃のタイミングを見計らっていた。

蛇蒼「しかし・・・この連激は中々・・・だが必ず・・・そこだっ!!」

神那「ぐほっ!?」

槍を捌き続けた末に見つけた隙を突き、蛇蒼の放った鎖分銅が神那の腹部に見事命中した。

神那「こんの・・・肉を切らせて!!」

蛇蒼「ぬぐっ!!」

鎖分銅の直撃を喰らいながら神那は右の槍を振り下ろし、蛇蒼の左肩へ落とした。

蛇蒼「こう来たか・・・!!」

左肩を押さえながら蛇蒼は神那から距離を置いた。

神那「あぁ〜・・・今のは効いたぜ・・・」

蛇蒼「お互い様だ・・・」

神那「あばら、一本逝っただろうな・・・つぅ・・・」

蛇蒼「こっちは外れただろうな・・・ぐっ!!」

蛇蒼は外れた肩を無理矢理つけなおした。

神那「おめぇ・・・見かけによらず無理するんだな。」

蛇蒼「こうでもしないと、戦えないからな。」

神那「その覚悟にゃ頭が下がりますぜ。全く。」

蛇蒼「褒め言葉として、受け取らせてもらう!!」

肩をつけなおした直後にも関わらず蛇蒼は左手の鎖分銅を神那に飛ばした。

神那「そうかい!!」

神那は槍で分銅を弾き、同時に蛇蒼に向けて突き出した。

蛇蒼「はっ!!」

蛇蒼はそれをギリギリで避け、同時に右手の鎖分銅を飛ばした。

神那「おぉっと!!」

ほぼ零距離だったその攻撃を神那もギリギリでかわした。

蛇蒼「ちっ!!」

即座に蛇蒼は神那から距離を置く為に後ろにジャンプした。

神那「俺らは互いに中距離戦法だからな。近すぎたらそれはそれで厄介なんだよなぁ。」

蛇蒼「そうだな。」

神那「だがお前は地味にリーチが長いからな。そこはお前が有利だ。」

蛇蒼「その分外した隙はある。お前はただ大降りで隙が生じるがな。」

神那「言ってくれるじゃねぇの。隙が出るかは、実際に確認してみな!!」

蛇蒼「あぁ!!」




虎丈「熊!!」

虎焔「拳!!」

虎丈と虎焔は互いに熊拳を放ち、互いに拳で受け止めた。

虎丈「くぅ・・・!!」

虎焔「うぉーーー!!」

虎焔は開いている右腕で蛇掘を放った。

虎丈「何の!!」

虎丈は開いている左腕で虎焔の蛇掘を弾いた。

虎丈「どりゃあっ!!」

続けて虎丈は狼牙を仕掛けた。

虎焔「ふんっ!!」

しかし虎焔は亀鋼で狼牙を受け止めた。

虎丈「ちっ!!」

互いに何度も技を放ちあった二人は一度離れ、距離を置いた。

虎焔「ふぅ・・・ここまでやるとはな。」

虎丈「昔とは違うんだ。俺だって、日々強くなれるように・・・色々やってんだよ!!」

虎焔「ぬっ!?」

虎丈「どりゃあっ!!」

一気に踏み込んだ虎丈は全力の犀撃を出して虎焔を吹っ飛ばした。

虎丈「そこだぁっ!!」

更に虎丈は追撃をする為、虎焔に飛び掛った。

虎丈「おらおらおらぁっ!!」

虎丈は技を放たず、普通の拳と蹴りを何度も放ち続け、虎焔はそれを亀鋼で防御した。

虎焔「くっ・・・技で無い分の連撃が速い・・・威力よりも隙を与えないつもりか!!」

虎丈「そうかなっ!!」

虎焔「むっ!?」

その連撃の最中に虎丈は時折熊拳と狼牙も放っていた。

虎焔「やるな・・・このままではまた破られるな・・・だったら!!」

虎丈「何っ!?」

虎焔「うぐっ!?」

虎焔は一時わざと亀鋼を解き、熊拳をモロに喰らった。

虎焔「隙を見せたな・・・はぁっ!!」

虎丈「ぐほっ!!」

虎焔の熊拳が虎丈の左頬を直撃し、そのまま虎丈は下に落ちた。

虎丈「いってぇ・・・ぶっ!!」

虎丈は折れた奥歯を吐き出した。

虎丈「ちきしょ・・・死ぬまで歯ぁ全部残してこうって決めてたのによ・・・」

虎焔「残念だったな。」

虎丈「ま、無傷で帰れるとは最初っから思っちゃいねぇし。こうなりゃガチに死ぬ気でやるしか無いな。」

虎焔「いいだろう。」

虎丈「はぁ・・・!!」

虎丈は呼吸を整え、今までよりも集中した。

虎丈「いっくぜぇ!!」

そして虎丈は一気に虎焔へ走り出した。




蛇蒼「てやぁっ!!」

神那「おあっと!! そらっ!!」

蛇蒼が飛び蹴りを仕掛けて来たが、神那は後ろに飛んでそれを避け、右手に持った槍を投げつけた。

蛇蒼「はっ!!」

蛇蒼は飛んできた槍を後ろにジャンプして避けた。

神那「どりゃあっ!!」

しかし神那もすぐに左手の槍で蛇蒼に斬りかかった。

蛇蒼「その程度、何てことは無い!!」

斬りかかった神那の槍を支えに蛇蒼は神那へ飛び掛り膝蹴りを仕掛けた。

神那「うおっ!!」

蛇蒼の膝蹴りを神那は寸前で伏せてかわし、同時に先ほど投げた槍を持ち直した。

神那「っと・・・どうするか・・・」

蛇蒼「どうした。まだこちらの武器はまだあるぞ。」

神那「だったら、やるだけやってやらぁ!!」

蛇蒼「そうか!!」

蛇蒼は左の鎖分銅を飛ばしてきた。

神那「あらよっ!!」

神那は今まで通りに槍で弾いた。
しかし。

蛇蒼「甘い!!」

同時に蛇蒼が右の鎖分銅を飛ばし、左の弾かれた鎖を操りもう一度飛ばしてきた。

神那「くっ!!」

神那は弾けずに右の槍で鎖を絡め取った。

神那「この・・・!!」

蛇蒼「一本、取らせてもらう!!」

神那「くあっ!!」

蛇蒼が力を入れて鎖を振るい、神那の槍を折った。

神那「群雲・・・!!」

蛇蒼「すまないな。お前の愛槍だったのだろ。」

神那「構わねぇよ・・・だが、時雨を折ってたら、その瞬間てめぇを殺してただろうがな!!」

神那は両手で左の槍、時雨を握り締めて一気に振り下ろした。
しかし蛇蒼はすぐに後ろに飛んでかわした。

神那「俺は元々一槍だったんでな、こっちの方がやり易いんだよ!!」

神那は二本を持っていた時よりも速く、そして鋭く蛇蒼に突き出した。

蛇蒼「確かにそうだが、捌けない程ではない!!」

蛇蒼は何度も突きかかる槍をその手で捌き続けた。

神那(このままじゃ埒が開かねぇ・・・何とか・・・お。)

その時神那の目に先ほど折られた群雲の穂の部分が入った。

神那(一か八か・・・行くか!!)

何かを思いついた神那は大降りで蛇蒼に斬りかかった。

蛇蒼「ぬっ?」

明らかに隙が生じるその攻撃に蛇蒼は一瞬疑問を抱いたが、考える余裕も無くジャンプしてかわした。

神那「今だ!!」

蛇蒼「何っ!?」

蛇蒼が飛んだ隙に神那は折られた群雲の穂先を左手で取り、逆手で構えを取った。

神那「行くぜぇ!!」

神那は右の槍で大降りの攻撃を、左の穂先で大降りの隙を埋める素早い攻撃という戦法を取り出した。

蛇蒼「そう来たか!! だが!!」

蛇蒼は今までと同じように神那の攻撃を捌き続けた。

蛇蒼「基本は同じだ!! そのような手に。」

神那「同じじゃねぇんだな!!」

蛇蒼「何っ!?」

神那はバックステップで後ろに飛び、同時に左の穂先を蛇蒼に投げつけた。

蛇蒼「甘いっ!!」

蛇蒼はすぐに鎖を出して弾こうとした。
しかしそこへ。

神那「その一瞬を貰う!!」

神那はすぐに蛇蒼に飛び掛った。

蛇蒼「隙があるとでも思ったか!!」

蛇蒼は穂先に向けようとした鎖分銅を神那に向けて飛ばした。

神那「ぬぉりゃーーー!!」

蛇蒼「なっ!?」

神那は鎖分銅を避けずに一直線に向かった。
それが幸いしたのか、鎖分銅は神那の頬をかすっただけになった。

蛇蒼「くっ!!」

神那が投げつけた穂先を蛇蒼はかわし、それにより本当に隙が生じた。

神那「そこが本命!! でりゃ!!」

神那はまず右からの横薙ぎで蛇蒼の腹部に槍を叩きつけ。

神那「はっ!!」

その回転を生かし左足による回し蹴りを。

神那「だりゃーーーーー!!」

蛇蒼「ぐはぁっ!!」

最後に蛇蒼のわき腹に槍を突き刺した。

蛇蒼「ぐっ・・・」

神那「急所は外してある・・・命に別状はねぇよ・・・」

蛇蒼「強くなったな・・・」

神那「おめぇに勝たないと・・・時雨が悲しむだろうからな・・・」

蛇蒼「そうか・・・」

患部を押さえ、蛇蒼はゆっくりと歩き出した。

神那「どこに行くんだよ。」

蛇蒼「決まっている。更に強くなる為に・・・」

神那「そうか・・・」

蛇蒼「・・・再び戦える日を、待っているぞ。」

そう言い、蛇蒼は神那の前からいなくなった。

神那「・・・再び、か・・・」




虎丈「どりゃあっ!!」

虎焔「ふっ!!」

虎丈は全力を込めた熊拳を放つも虎焔はかわし、虎焔が立っていた場所の後ろにあった大木を貫いた。

虎焔「たぁっ!!」

虎丈「んなろっ!!」

虎丈は迫ってきた虎焔に対し、大木に刺さったままの右腕を軸にドロップキックを仕掛けた。

虎焔「ふんっ!!」

虎焔は亀鋼で受け、蛇掘の構えを取った。

虎焔「蛇掘!!」

虎丈「させるかっ!!」

虎丈はすぐに右腕を抜き、蛇掘を放って虎焔の蛇掘をさばいた。

虎丈「もいっちょ!!」

そして続けて左手で蛇掘を放った。

虎焔「甘い!!」

虎焔はさばくのでも、亀鋼で受け止めるのでもなく、寸前で虎丈の手首を掴んで止めた。

虎丈「まだまだぁっ!!」

腕を掴まれたまま虎丈は右膝で虎焔に蹴りかかった。

虎焔「ぐっ!!」

亀鋼が間に合わず、膝蹴りは虎焔の腹部に直撃した。

虎丈「うぉりゃあっ!!」

続けて頭突き、腹部への熊拳を放ち、最後に狼牙で虎焔を蹴り飛ばした。

虎焔「まだやられん!!」

すぐに体制を整えた虎焔は虎丈に突進し、犀撃で吹っ飛ばした。

虎焔「はぁっ!!」

続けてそのまま熊拳を虎丈に仕掛けた。
しかし。

虎丈「やられっかぁ!!」

虎丈も負けじと鮭跳で虎焔に向かい、同時に熊拳の構えを取った。

虎丈「おりゃっ!!」

二人の拳がぶつかり、その強さに辺りに衝撃が走った。

虎丈「つっ!!」

虎焔「くっ・・・!!」

拳をぶつけ合った二人は一度距離を置いた。

虎丈「こ、こりゃいい加減そろそろ決めなきゃきついな・・・」

虎焔「そうだな・・・」

虎丈(にしたって・・・和人さんを倒せれるような一撃をかませる隙があるとは思えねぇし・・・となるとイチバチでアレか・・・!!)

意を決した虎丈は今まで以上に集中した。

虎焔「次が最後の一撃になるだろうな・・・ならばこちらも。」

そして虎焔も虎丈同様に集中し始めた。

虎丈「俺の全てを・・・これにっ!! はぁーーーーー!!」

虎丈は最後の攻撃に打って出た。

虎焔「来るか!!」

そして立ち向かう為に虎焔も走り出した。

虎焔「喰らえっ!!」

先手を取ったのは虎焔。
熊拳を放ってきた。

虎丈「うぉりゃっ!!」

虎焔「なっ!?」

虎丈はどの技にも無い右脚のハイキックで熊拳を弾いた。
しかし虎丈の攻撃はここからだった。

虎丈「はっ!! とぁっ!! でりゃあっ!!」

右脚を地面につけたと同時に左足による後ろ回し蹴り、右フック、左アッパーと連続で攻撃を続けた。

虎焔「ま、まさかこれはっ!!」

虎焔はその技に気付いたが亀鋼での防御しか出来ず。

虎丈「おらおらぁっ!!」

虎丈は右膝でのニーキック、左足でのサマーソルトキックを連続で放った。
それにより虎焔に一瞬の隙が生じ、虎丈は一時的に虎焔と距離を置いた。

虎丈「これぞ奥義!!」

そして虎丈は右腕にありったけの力を込め、一気に踏み込んだ。

虎丈「獅皇豪烈破ぁっ!!」

虎焔「ぐはぁっ!!」

虎丈の全身全霊の正拳が虎焔の亀鋼を崩し、何mも後方にあった大木までふっ飛ばした。

虎焔「ぐっ・・・奥義を会得していたとはな・・・」

虎丈「あぁ・・・だがこっちもこれやったら・・・たたっ・・・」

虎焔「ん・・・?」

虎丈「隆士と同じでよ・・・一回使ったら相当腕に堪えんだよ・・・」

虎焔「なるほどな・・・つつっ・・・」

虎焔は痛みを堪え歩き出した。

虎丈「ど、何処に行くんだよ・・・」

虎焔「さぁな・・・ただ、もう十二支には戻らないさ・・・」

虎丈「そうか・・・」

虎焔「強くなったな・・・虎丈・・・またな・・・」

そして虎焔はその場から去った。

虎丈「・・・はぁ・・・」

戦闘を終えた途端に疲労が襲い、虎丈はその場に寝転がった。

虎丈「ま・・・和人さんを救えたって事でいいよな・・・」

「それでいいんじゃねぇか?」

虎丈「ん?」

声がしてその方を見ると神那がいた。

虎丈「そっちも終わったか。」

神那「おうよ。」

神那も虎丈の近くに来て寝転がった。

神那「ふぅ・・・しばらくゆっくりしていてぇな・・・」

虎丈「同感だ・・・にしても。」

神那「あぁ・・・」

虎丈&神那「いい、月夜だな・・・」





二人とも見上げたその先には月が輝いていた。





二十二の調
二十四の調
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