二十二の調


因縁と友情と








銀「なるほど、分かりました。」

隆士「すみません・・・」

犬斗を倒した翌日、隆士は銀と会っていた。

銀「しかし、あなたが自ら学校をしばらく休みたいと言いだすなんて、思いもしませんでしたわ。それもまだ夏休み中なのに。」

隆士「はい・・・」

隆士は銀にしばらく学校を休むと言いに来たのであった。

隆士「多分夏休み中では終わりきらない事なので・・・休んだ分は自分で何とかします。ですから・・・」

銀「私は構わないですよ。決めるのはあなたなのですから。」

隆士「ありがとうございます。」

銀「あなたが何故このような事を言い出したのかは聞きはしません。ですけど。」

隆士「え?」

銀はそっと隆士の右手を握った。

銀「あなたのこの手が何の為にあるのか、それを忘れてはいけまんよ。」

隆士「先生・・・」

銀「頑張ってくださいね。」

隆士「はい。」









梢「花梨ちゃん、大丈夫?」

花梨「大丈夫だって。あいたた・・・」

珠実「無理に目立とうとするからですぅ。」

花梨「うっさい・・・」

三千代「所でこれで残る十二支は6人ですのよね?」

理想奈「えっと、竜汪、虎焔、蛇蒼、兎連、馬邨、それに朝美ちゃんの友達の鳥汐ちゃんね。」

朝美「・・・」

恵「お約束なのか分からないけど、厄介なのが残ったわねぇ。」

虎丈「虎焔の相手は俺がする。邪魔はしないでくれよ。」

神那「大丈夫だって。俺だって蛇蒼と決着つけなきゃいけぇねからな。」

朱雀「私は馬邨を・・・」

灰原「何だ? それぞれ何かあんのか?」

夏樹「聞きたいわね。どう言う因縁があるのか。」

虎丈「そうだな。虎焔は・・・俺の同門だ・・・」

珠実「つまりあいつもあなたと同じ格闘術を?」

虎丈「あぁ。しかも俺より先にやっていた、言わば先輩だ。腕も俺より相当上だったな。」

浩子「そ、それってもしかして相当ヤバい?」

虎丈「どうだかな・・・今のあいつがどの位か分からないから」

神那「確かお前やったの、虎焔だったよな。」

沙夜子「それじゃあ一度負けてるのね・・・」

虎丈「だから俺より上って言っただろうが・・・」

神那「ま、古い馴染みっつぅこたぁアイツの本当の名前も知ってんだろ?」

虎丈「あぁ。浅葱和人。それがアイツの本名だ。和人は俺より先に学んでいた。あの頃俺は未熟だったからアイツに色々厄介になっていたな・・・」

翼「それが何でまた十二支なんかに?」

虎丈「・・・あれは五年前だ・・・」







虎丈「悪いッスな。また厄介になって。」

和人(虎焔)「いいって事。」

あの日、俺は和人の家に向かおうとしていた。
俺は和人の家の人達とも関わりがあって、何度か厄介になっていた。

虎丈「しかし、いつになったら俺も奥義覚えれるだろうかねぇ。」

和人「焦ったってしょうがないさ。ま、今は帰ろうぜ。」

虎丈「あいよ。」

そして俺らは和人の家に向かった。
だけど・・・

和人「何だ?」

虎丈「騒ぎか?」

和人の家のある方で何か騒ぎが起きていた。
気になった俺らはその場所へ急いだ。
そこには・・・

和人「な、何だよこれ・・・?」

和人の家に警察や消防の人間がいた。
そして家の中から出てきたモノは・・・

和人「か、香澄!?」

血塗れの和人の妹の香澄だった。
そして気づいたのが、家の中から異臭が漂っていたって事。

和人「う、嘘だろ・・・嘘だよな・・・」

警察官「この家の方・・・ですね・・・」

和人「何があったんだ!! 一体何が!?」

警察官「・・・強盗です。通報があって来た時には・・・皆・・・」

和人「そ、そんな・・・それでその犯人は!?」

警察官「既にここから逃亡しています・・・今懸命に探してはいますが・・・」

和人「そんなのって・・・ふざけんじゃねぇよ!!」

和人は怒りに警察の胸倉を掴んだ。
その怒りは今まで見た事が無かった・・・

和人「手がかりとかは何か無いのか!?」

警察官「それはまだ・・・ただ近くの人が服に血がついている男が逃げ去っていくのを見たとしか。」

和人「そんだけか・・・くそっ!!」

その情報を聞いた途端、和人は走り出した。

虎丈「和人さん、何処へ!?」

和人「決まってる!! 犯人を追うんだよ!! ぜってぇ捕まえてぶっ殺してやる!!」

虎丈「駄目だそんなの!! 復讐なんか!!」

和人「黙れ!! 家族を殺されて黙っていられるか!!」

そう言って和人はそこから走り去った。

虎丈「和人さん!!」







虎丈「俺が知る限りの和人さんはここまでだ・・・」

花梨「で、次会った時には十二支の一人になってたって訳ね。」

虎丈「大方その強盗を捕まえる手助けと引換にだろうな・・・俺からは以上だ。」

神那「次は俺がいいか?」

梢「はい。」

神那「俺の方は、兎連と蛇蒼についてだな。」

浩子「兎連って人とは恋人だったんだっけ?」

神那「過去形じゃねぇ・・・今もだよ・・・」

恵「何があったのよ?」

神那「・・・ありゃあ高一の時だ・・・」







「神那〜またサボるつもり?」

神那「もち〜・・・」

その日も俺は町外れでゴロ寝していた。

美乃(兎連)「まぁいいじゃない。」

神那「そうそう。たまには時雨も休めよ。」

時雨「もう・・・」

美乃には時雨って双子の妹がいた。
詳しくは言ってなかったが俺は地元に伝わっていた槍術を渋々学んでいたんだ。
美乃と時雨と一緒に。

神那「別にちょっとくれぇ休んだって悪か無いだろ?」

時雨「それじゃあ駄目なの。日々鍛える事が大切なんだから。姉さんもだからね。」

美乃「お厳しい事。」

神那「しゃあねぇ。分かったよ。」

仕方なく俺はその日の稽古をやる事にした。それで稽古場に行ったら・・・

練習生A(男)「おぉ来たかお前ら。」

神那「あ? どうかしたんか?」

練習生B(女)「それがねぇ。さっき変な人が来たのよ。」

美乃「変な人?」

練習生C(女)「ほら、あそこの袖がやけにデカイ服着てる彼。」

神那「あ?」

そいつが指差した先に蛇蒼がいやがった。
確か本名は・・・

神那「誰だお前?」

蛇蒼「鈍宮忍。強さを求めて旅をしている。」

神那「変な奴・・・で、それで何しに来た?」

忍「ここで一番強い戦士と戦いたい。ただそれだけだ。」

美乃「また変な事を言うのねぇ・・・一番強いのって言われても。」

時雨「それじゃ、私がやるわ。」

そう言って時雨は自分の槍を持ち出して前に出た。

神那「おいおい時雨。いくらなんでも。」

練習生A「仕方無いんじゃないか? ここで強い言ったらお前らだし。」

練習生B「かと言っても栗崎君に美乃ちゃんはさぼり気味だし。」

練習生C「時雨ちゃんに任せたら?」

神那「おいおい・・・」

時雨「それじゃ、いいわね? 女だからってなめないでね。」

忍「分かっている。俺はそう言うのは問わない。」

時雨「そう。」

忍「行くぞ!!」

時雨「えぇ!!」

そして二人は戦い出した。
その結果は・・・

時雨「くっ・・・」

忍「俺の勝ちだな。」

忍の勝利だった。

神那「時雨、大丈夫か?」

時雨「あたたぁ・・・悔しい〜・・・」

美乃「アンタ相当強いのね。」

忍「俺はただ強さを求めている。それだけだ。」

神那「ホント変わった奴だな。」

忍「お前はどうなのだ? 何故槍術を習う?」

神那「俺か? まぁ何となくだな。」

忍「そうか。そのような意思では戦う気も起きないな。」

神那「そうですけぇ〜」

それだけを言って、忍は帰った。

時雨「神那、あんな事言われて悔しくないの?」

神那「別に?」

時雨「そう・・・」

その時俺らは気づいて無かったんだ。
時雨のある変化に・・・
そしてその夜・・・

美乃「神那ぁーーー!!」

神那「どうした?」

美乃「時雨が・・・時雨が!!」

神那「え・・・?」

俺はすぐに二人の家に向かった。
そこで俺が見たのは苦しそうにベットで寝ている時雨の姿だった。

神那「どうしたんだよ時雨!?」

時雨「あ・・・神那・・・ごめんね・・・私、激しい動きしたら・・・命に関わるって・・・言われてたの・・・」

神那「嘘・・・だよな・・・?」

時雨「・・・」

神那「だ、だってよ!! お前今まで・・・」

時雨「ばれないように・・・あまり動いて無かったんだ・・・」

神那「お前・・・」

時雨「神那・・・一つだけ、お願いしたいの・・・」

神那「何だ?」

時雨「やれば出来るんだから・・・あの忍って人と戦って・・・そして勝って・・・」

神那「あ、あぁ。分かった。」

時雨「頑張って・・・」

神那「くっ・・・美乃、あいつまだこの辺にいるよな!?」

美乃「多分・・・って神那!!」

俺はすぐに槍を持って駆け出した。
あいつと戦う為に。

神那「おい!!」

忍「お前か、何のようだ?」

神那「今すぐ俺と戦え!!」

忍「どう言う心境の変化だ?」

神那「大切な奴との約束だ!! お前に勝ったって事をあいつに教えるんだよ!!」

忍「そうか。いいだろう。来い。」

神那「うおぉぉぉーーー!!」

俺は忍に立ち向かった。
だが・・・

神那「く・・・くっそぉ・・・」

結果は惨敗だった・・・

忍「腕は悪くないが、まだまだ未熟だ。」

神那「絶対・・・勝ってみせる・・・」

忍「いつかまた来い。今のお前となら、楽しめそうだからな。」

そう言って忍は去って行った。
俺は仕方なく二人の所に戻った。
だが・・・

美乃「うっ・・・うっ・・・」

神那「美乃・・・?」

何故か美乃が泣いていた。
そしてベットの上の時雨は・・・

神那「嘘だろ・・・時雨・・・」

既に止まっていたんだ・・・
ただ眠っている見たいに、時雨はもう動いていなかった・・・

神那「・・・美乃・・・悪かった・・・」

美乃「謝る必要・・・無い・・・よ・・・」

神那「・・・」







神那「俺が真面目にやっていたら、時雨は死ぬ事は無かった・・・今でも俺は・・・」

花梨「そんな事があったんだ・・・それじゃあ前に言ってた『時雨の形見』って・・・」

神那「俺の槍の一つは時雨が使っていた奴だ。アイツ、自分の槍に自分の名前をつけてたからな・・・」

沙耶「それで、兎連。美乃さんはその後は?」

神那「しばらくしていなくなったよ。妹の死を認めれずにな・・・もしかしたら誰かが治してくれるんじゃないかって言ってたからよ。」

梢「それで、十二支に?」

神那「再開した時は驚いたよ・・・何せ忍と一緒にいたんだからな・・・」

理想奈「普通はそう思うよね。」

神那「だから、美乃は俺が止める。そして忍は俺が倒す。手出ししないで欲しいんだ。」

虎丈「お互い様だ。」

神那「俺からはこんだけだ。後は朱雀だな。」

朱雀「はい。私は馬邨、昴ちゃんの事を話します。」

翼「それがあの子の本名か。」

朱雀「鳶田昴。私の親戚で、幼馴染です。」

恵「それはまた辛いわね。」

朱雀「私と昴ちゃんは仲良しでした。ですがあの日・・・」







昴(馬邨)「今日は家に泊まるんよね?」

朱雀「うん。」

その日、私は昴ちゃんの家に泊まりに行きました。
鳶田家の家も少しは名の知れた屋敷で、私は小さい頃から何度も泊まっていたんです。

昴「それで朱雀、ちょっとは婚約者の事について考えたん?」

朱雀「まだ早いよ。私まだ中三だよ?」

昴「早いに超した事無いってぇ。」

朱雀「もう〜・・・」

そんな事を話しながらその日の夜を迎えました・・・

昴「ねぇ、好きな人。いるん?」

朱雀「その事ばっかり・・・そう言う昴ちゃんはどうなの?」

昴「私は別に興味無いし〜それよりもどうなの?」

朱雀「いないわよぉ・・・もう・・・」

昴「ふぅん。」

朱雀「ちょっと散歩してくる。」

昴「私も行く〜」

朱雀「はいはい。」

私達は屋敷を出て散歩に出かけた。

朱雀「結婚かぁ・・・正直私にはまだ分からないわ。」

昴「そっかぁ。でも朱雀ならいいお嫁さんになれると思うよ?」

朱雀「ふふ、ありがと。」

昴「で、朱雀はどんな人が好みなの?」

朱雀「そうねぇ・・・優しくて、温かい人かなぁ?」

昴「ほ〜って、優しいはともかく温かいって何なん?」

朱雀「それは、私にとって温かいって感じるって事。」

昴「変なの。」

朱雀「いいでしょ? 別に。」

昴「まぁねぇ。そろそろ帰ろっか。」

朱雀「えぇ。」

そんな事を話しながら私達は帰る事にした。
でも・・・

昴「あれ? 電気消えてる?」

朱雀「そうね。」

屋敷は何故かもう電気が消えてました。

昴「どうしたんだろう?」

私達は疑問を抱きながら屋敷の中に入りました。

昴「変なの・・・私そっちの方見てくるね。」

朱雀「うん。じゃあ私はこっちを。」

私達は別れて屋敷の中を見た。

朱雀「おかしいわ・・・どうしたんだろう・・・あら?」

昴ちゃんと別れた私は不振な物音が聞こえてその場所に向かいました。

朱雀「誰かいるの?」

暗くて何も見えませんでしたが、私が覗いたその部屋に誰かがいるのは分かりました。

朱雀「あの、誰で・・・」

話しかけようとした時でした。

朱雀「っ!?」

突然その人が瓶と思われる物で私を叩いてきました。
それにより私は意識が朦朧としてその場に倒れました。

?A「おい、どうする?」

?B「見られちまったら消すしか無いだろ。」

?C「だな。」

薄れ行く意識の中でそんな会話が聞こえてきました。
そして一人が私に近づいて来て・・・

?A「嬢ちゃん、悪いが死んでもらうぜ。」

朱雀「うっ・・・」

私は死ぬって思いました。
その時です。

昴「朱雀ぅーーー!!」

?A「な、何だ!?」

朱雀「え・・・?」

はっきりとは見えてませんでしたが、昴ちゃんがやってきて私に近づいてきてた人を抑えているのが声で分かりました。

昴「朱雀しっかりして!!」

?A「何だこのガキ!?」

昴「あなた達ね!? みんなを・・・みんなを殺したの!!」

朱雀「え・・・?」

?B「ちっばれちまったか。どうする?」

?A「早く始末つけるか。」

?C「いや、こうなったらさっさと逃げるしかない。ただその小娘は連れてくしかない。そっちはほっとけば死ぬだろ。」

?A「そうだな。」

昴「え? ちょっと何するのよ!?」

朱雀「すば・・・る・・・ちゃ・・・」

昴「朱雀!! 朱雀ぅーーー!!」







朱雀「そのまま昴ちゃんは連れ去られました・・・私は残った力で何とか警察を呼んで助かりましたが・・・」

花梨「家の人は全員、ってわけね。」

朱雀「はい・・・そしてその傷は今もこうして・・・」

朱雀が前髪を上げると、左目の上に傷があった。

灰原「藍川の事もそうだが、誰がやったんだかナ・・・」

梢「ですがその話で聞く馬邨、昴さんとは印象が違うような気がするんですが。」

朱雀「恐らく記憶を失っているんだと思います。再開した時私の事も覚えてなかったので・・・」

浩子「嫌な話し・・・」

沙夜子「そう言うモノなのよ・・・」

部長「デすね。」

朝美「どうなるんだろう・・・これから・・・」

三千代「クロスケさん・・・」

朝美「お兄ちゃん達だけじゃない・・・鳥汐ちゃんの事だって・・・」

梢「朝美ちゃん・・・」

虎丈「何とかしてみせる。いや、何とかするしかないんだ。」

神那「あぁ。絶対にな・・・」

夏樹「そうね。」







鳥汐「・・・」

兎連「どうかした?」

どこか分からない場所、十二支のアジトと思われし場所に鳥汐と兎連がいた。

鳥汐「これ以上ヘマをしたら捨てるって・・・」

兎連「そっか・・・」

鳥汐「分かっている・・・おじい様に逆らったらあたしに行く場所は無いって・・・でも・・・」

兎連「いいのよ。あなたはあなたで。それに、いざとなったら鳴滝荘にでも行ったらいいじゃない。」

鳥汐「でも・・・ん?」

話をしていると鳥汐の携帯電話にメールが来た。

鳥汐「えっと・・・え・・・?」

兎連「何だって?」

鳥汐「こ、これ・・・」

鳥汐はそのメールを兎連に見せた。

兎連「・・・ひど・・・」

鳥汐「でも・・・やらなきゃ・・・」

兎連「・・・」







神那「んじゃ、ちょいと辺り見てくるか。」

虎丈「だな。」

それからしばらく、鳴滝荘の者は入り口に出ていた。

朱雀「気をつけてくださいね。」

虎丈&神那「あぁ。」

恵「で、そのバイクなんなの?」

何故か鳴滝荘には大型のバイクが一台あった。

神那「俺の愛車。あっちから持ってきてもらったんだ。」

朱雀「そう言えば神那さんは私達の中で唯一免許持ってましたね。」

神那「そゆ事。」

虎丈「したら俺と神那で辺りを見てくる。隆士が戻ってきたら手伝えって言っといてくれ。」

梢「はい。」

神那「じゃ、行って来るぜ。」

そして虎丈は歩行術で建物の屋根や電柱の上を渡り、神那はバイクで出発した。

朱雀「私もちょっと出かけますね。」

理想奈「武器は持ってかないの?」

朱雀「リボルバーだけ持っていきます。他は大きいので。」

翼「元々銃ってのが無理だろうが。」

朱雀「そうですね。それでは。」

そう言って朱雀も出かけた。

灰原「で、俺らはどうする?」

梢「隆士さんが帰ってくるのを待ちましょう。」

恵「そうね。」

竜太郎「所でよ恵。体大丈夫か?」

恵「まだ大丈夫よ。そんな無理はしてないしさ。」

竜太郎「お前は身重なんだからな。」

恵「はいはい。」

瑞穂「じゃあ私達は帰りますね。」

花梨「もし何かあったら来るとは思うけど。」

珠実「別に来なくてもいいんですけどぉ?」

花梨「出たっていいじゃないのよ・・・」

浩子「まぁまぁ。」

理想奈「それじゃ。」

そしてほとんどの人間が帰っていった。

珠実「あれ? 全員帰りましたか?」

梢「えっと・・・朝美ちゃんの友達のさっちゃんとみっちゃん、まひるちゃんにタチバナさんがまだのはずです。」

恵「どうしたんだろ?」

沙耶「何か言いましたか?」

話をしていると朝美と沙耶、三千代にまひる、タチバナの五人が来た。

梢「どこか出かけるの?」

朝美「うん。一人じゃ危ないし、お母さんと一緒だったら・・・ちょっとぉ・・・」

竜太郎「言えるな・・・どうだ? 男の俺がいた方がいいだろ?」

朝美「ううん。大丈夫です。」

恵「浮気する気・・・?」

竜太郎「なわけねぇだろ。俺が愛する奴は生涯お前一人だけだよ。」

恵「もう、よくそんな台詞さらって言えるわね。」

竜太郎「相手がお前だからさ。」

珠実「お惚気はその辺で終わらせてです〜」

朝美「そ、それじゃあ行って来るね。」

梢「行ってらっしゃい。」

そして朝美達は出かけた。

梢「・・・大丈夫かな・・・?」

灰原「どうかしたのか?」

梢「何か胸騒ぎがするんです・・・」

珠実「思い過ごしでは?」

梢「だといいんだけど・・・」









朝美「えっと・・・必要な物は買ったよね。」

沙耶「そやな。」

三千代「後は帰るだけですわ。」

まひる「そうだな。」

朝美「・・・」

タチバナ「朝美お嬢様、どうかしましたか?」

朝美「え?」

三千代「あの鳥汐って子の事を考えていたのですか?」

朝美「うん・・・どうしてあの子はこんなに辛い思いをしてるんだろうって・・・」

タチバナ「前に聞いたのですが。十二支、釈迦に拾われたと。」

沙耶「拾われたって事は、家族がいないっちゅうわけか。嫌な話やな・・・」

朝美「鳥汐ちゃん・・・」

五人は鳥汐の事を考えながら歩いていた。
その時だった。

「きゃぁーーーーー!!」

朝美「何っ!?」

突然悲鳴が聞こえ、少し離れた場所で騒ぎが起きだした。

朝美「まさか・・・!!」

朝美はその騒ぎの起きた場所へ向かい走り出した。

三千代「ちょっとクロスケさん!!」

そして残る四人も朝美の後を追った。

朝美「こ、これ・・・」

まひる「うっ・・・」

五人がその現場で見た物。
それは・・・

男「うぐっ・・・」

血まみれで倒れている男だった。

沙耶「酷い・・・誰がこんなん・・・」

三千代「ちょっと待ってください。この男、見覚えありませんか?」

まひる「何?」

タチバナ「この男は・・・かつて朝美お嬢様を誘拐した輩が引き連れていた男の一人では。」

その男はかつて鼠条が朝美を誘拐した時に用意していた兵士の一人だった。

沙耶「よく覚えとったな・・・でも確かにいたような・・・」

まひる「でも何でこんな事になってる?」

通行人A「ねぇ、さっき見た服に血がべったりついていた子がやったんじゃない?」

通行人B「でもまだ子供だよ? 中学校上がったばっかりくらいの。」

朝美「え・・・? ちょっとすいません!!」

通行人A「はい?」

朝美「あの、その子どこに行ったか分かりませんか?」

通行人B「えっと、確かあっちに・・・」

朝美「ありがとうございます!!」

話を聞いた朝美はすぐにその方向へ走り出した。

沙耶「あ、朝美待ちぃな!!」

タチバナ「もしや・・・この犯人は・・・」

三千代「あの子・・・?」

まひる「それより、朝美追う。」

タチバナ「はっ」

そして四人は朝美の後を追った。

「・・・そろそろ奴も無理だな・・・」

その光景を見ていた男が謎めいた事を呟き、その場を去って行った。




朱雀「っ! 今の・・・」




神那「まさか・・・」




虎丈「来てる・・・」




隆士「アイツが・・・いる・・・!!」

そしてその事を隆士達は何故か気づいていた。









鳥汐「・・・」

その頃鳥汐は人ごみから離れた場所を一人で歩いていた。
その手に血のついたナイフを持ち、服にも返り血が染み付いていた。

鳥汐「これでいいんだ・・・これで・・・」

何かを呟きながら鳥汐はポケットの中から何かが書かれてるメモ帳を取り出した。

鳥汐「後は・・・っ!?」

メモに書かれている事を読もうとした時、鳥汐は走って近づいてくる足音に気づいた。

鳥汐「誰か・・・来る・・・」

足音は徐々に鳥汐に近づいてきた。
鳥汐はメモとナイフをしまい、背負っていた弓と矢を一本取り出した。

鳥汐「・・・」

「はぁはぁ・・・!!」

鳥汐「つっ!!」

足音の主と思われる声が後ろに聞こえ、鳥汐はその人物に振り向き様に矢を射る構えを取った。

鳥汐「っ!?」

鳥汐はその人物を見て驚いた。

朝美「鳥汐ちゃん・・・」

その人物は朝美だった。

鳥汐「朝美・・・どうしてここに・・・?」

朝美「鳥汐ちゃんだって言う子がこっちに来たって聞いて・・・」

鳥汐「そう・・・」

朝美「嘘だよね・・・鳥汐ちゃんがあんな酷い事をするわけが・・・無いよね・・・」

鳥汐「・・・」

朝美「ねぇ・・・」

鳥汐「気づいているんだろ・・・? 流石にさ・・・」

朝美「・・・」

鳥汐「あたしがやったんだ・・・十二支にかかわった奴を始末する為に・・・」

朝美「始末って・・・モノみないな言い方・・・」

鳥汐「だって・・・おじい様がそう言うから・・・」

朝美「おじい様?」

鳥汐「あたしを拾った・・・あたしを育ててくれた人だ・・・」

朝美「釈迦・・・?」

鳥汐「うん・・・」

朝美「でも・・・こんな事・・・」

鳥汐「分かってる・・・けど、おじい様に逆らったらあたしは・・・だから・・・」

朝美「鳥汐ちゃん・・・」

鳥汐「朝美・・・もうあたしに関わるな・・・頼むから・・・」

朝美「嫌だよ・・・そんなの・・・止めてよ鳥汐ちゃん・・・」

鳥汐「朝美・・・」

朝美「鳥汐ちゃんがそんな事しなくたっていいんだよ・・・鳥汐ちゃんは優しいいい子なんだから・・・」

鳥汐「言うな・・・」

朝美「だからもういいんだよ・・・鳥汐ちゃんは鳥汐ちゃんなんだから。」

鳥汐「言う・・・な・・・」

朝美「私の・・・大切な・・・」

鳥汐「やめろ・・・」

朝美「友達なんだから・・・」

鳥汐「言うなぁーーー!!」

朝美「っ!?」

朝美の優しい言葉が返って鳥汐の気に触れ、鳥汐は思わず矢を射てしまった。

朝美「ぐっ!!」

鳥汐「はっ!?」

鳥汐の放った矢は朝美の左肩に突き刺さっていた。

沙耶「あ、朝美!?」

三千代「クロスケさん!?」

ちょうどその時四人がその場に駆けつけた。

まひる「タチバナ。」

タチバナ「はっ!!」

タチバナはすぐに傷口を押さえて止血を施した。

鳥汐「朝美・・・」

沙耶「アンタ!! 朝美に何したんや!!」

三千代「そうですわ!! クロスケさんはあなたの事を友達だと・・・」

鳥汐「うるさい!!」

沙耶&三千代「!?」

鳥汐「お前達に何が分かるんだ・・・例え友達だって思っても・・・あたしは朝美とは一緒にはいられないんだ・・・!!」

三千代「あなた・・・」

鳥汐「あたしは十二支として育てられたんだ・・・この手で何人もの人を殺してきた・・・そんなあたしが・・・こんなに優しい朝美と・・・一緒にいれるわけが無いだろう!?」

沙耶「アンタ・・・」

鳥汐「来るなっ!!」

鳥汐は瞳に涙を浮かべながら再び矢を射る構えを取った。

鳥汐「あたしに・・・あたしにもう関わらないでくれ・・・頼む・・・!!」

タチバナ「・・・あなたは・・・」

鳥汐「?」

タチバナ「あなたは私と似ている。」

鳥汐「何・・・?」

タチバナ「私も幼き頃、ある施設で育てられた。そして幾人もの人をこの手で掛けて来た。」

三千代「あ、あなたも相当な過去をお持ちで・・・」

タチバナ「だがある日組織は壊滅し、路頭に迷い死に掛けた私を旦那様と奥様が助けてくださり、今に至る。」

鳥汐「・・・何を言いたいんだ・・・」

タチバナ「あなただってそれが出来るはずです。たとえその手が血で汚れていようとも、あなたを受け入れてくれる居場所が必ずあるはずです。」

鳥汐「でも・・・あたしの居場所なんて・・・」

朝美「だい・・・じょうぶ・・・だよ・・・」

タチバナ「朝美お嬢様!! 動いては・・・!!」

朝美「ううん・・・大丈夫・・・」

朝美は矢が刺さった場所を右手で抑えながら鳥汐に寄った。

鳥汐「朝美・・・」

朝美「鳥汐ちゃん・・・君の居場所は・・・」

沙耶「ちょっと朝美!! 危なっ!!」

三千代「お待ちになって!!」

沙耶「何すんねん!?」

三千代「・・・ここはクロスケさんを信じましょう。」

沙耶「アンタ・・・」

三千代「・・・」

朝美「君の居場所は・・・私がなるから・・・」

鳥汐「でも・・・あたしはお前を傷つけたんだぞ・・・あたしの手で・・・」

朝美「気にして・・・無いよ・・・このくらい・・・大丈夫・・・だから・・・」

鳥汐「・・・」

朝美「だから・・・さ・・・もう止めようよ・・・」

鳥汐「あさ・・・み・・・」

鳥汐はゆっくりと弓と矢を降ろし始めた。

朝美「おいでよ・・・私達の・・・所へ・・・」

鳥汐「いい・・・のか・・・本当に・・・」

朝美「勿論。」

そう言って朝美は痛みを堪え、左手を鳥汐に差し出した。

朝美「私達・・・友達でしょ・・・?」

鳥汐「朝美・・・!!」

鳥汐は弓と矢を捨て、左手を朝美に向けて差し出した。

鳥汐「友達で・・・いてくれるんだよな・・・あたしの居場所に・・・なって・・・」

鳥汐は朝美の手を握ろうとした。
その時。

「やはり、もう使えんか。」

鳥汐「っ!!」

朝美「え・・・?」

一発の乾いた音が、銃声が鳴り響いた。









朱雀「はぁはぁ・・・!!」

その頃朱雀はどこかを目指しひたすら走っていた。

朱雀「今のは間違いなく・・・急がなくちゃ・・・!!」

そして朱雀が走っている後方では。

神那「お、ありゃ朱雀だ。ん?」

神那が走っており、ふと見上げたその視点の先には。

虎丈「ちっ・・・嫌な事が起きてなきゃいいが・・・」

虎丈が建物の屋根の上を走っていた。

神那「いいタイミングだぜ。おい虎丈!!」

虎丈「ん?」

神那「これを朱雀に渡せぇ!!」

神那はバイクを走らせながら虎丈に予備のヘルメットを投げ渡した。

虎丈「おっと!!」

虎丈はそのヘルメットを何とか受け取る事が出来た。

虎丈「ったく・・・朱雀!!」

朱雀「え? 虎丈さん?」

虎丈「受け取れ!!」

朱雀「きゃっ!?」

先行した虎丈は朱雀へヘルメットを投げ渡した。

虎丈「後ろから神那が来てる!! 後は大体分かるだろ!!」

朱雀「えぇ!?」

驚いた朱雀は後ろを見て神那が来ている事を確認した。

朱雀「そんないきなり・・・」

神那「朱雀!! 乗れぇーーー!!」

朱雀「早っ!! それにまさか走りながら!?」

どうやら走りながらバイクに飛び乗ると言う思惑らしく、朱雀はすぐにヘルメットを被った。

朱雀「でもすぐにそんな・・・あぁどうしたら・・・」

虎丈「朱雀の奴・・・まぁ当たり前か。お。」

隆士「こっちだ・・・間違いない・・・!!」

ちょうどその時、虎丈は隆士も近くを走って来てる事に気づいた。

虎丈「いいとこにいたな。隆士!!」

隆士「え?」

虎丈「朱雀を神那のバイクに乗せてやれ!!」

隆士「いい!?」

虎丈「後は頼むな!!」

隆士に任せて虎丈は先に向かった。

隆士「そんないきなり・・・でも、やるしかないか!!」

隆士はぶつくさ言いながらも朱雀の近くまでジャンプした。

朱雀「あ、隆士様。」

隆士「僕がバイクに乗せてあげる。つかまって!!」

朱雀「は、はい!!」

朱雀は隆士につかまり、隆士は神那が来るのを確認してジャンプした。

隆士「お願い!!」

神那「おうよ!」

隆士は朱雀を神那の後ろに座らせて再びジャンプして道路から離れ、虎丈の後を追った。

神那「しっかりつかまってな!!」

朱雀「隆士様の方がよかったです・・・」

そして神那も朱雀を乗せて二人の後を走った。









朝美「ちょ・・・鳥汐ちゃん!?」

鳥汐「うぐっ・・・!!」

鳥汐は何者かに撃たれたらしく、腹部から大量の血が出ていた。
そしてその場に倒れてしまった。

鳥汐「あ・・・朝美・・・」

朝美「鳥汐ちゃん・・・死なないで鳥汐ちゃん!!」

朝美は鳥汐の体を起こし、患部に手を当てて出血を少しでも止めようとした。

まひる「朝美!!」

三千代「何ですの・・・今何が起こったんですの!?」

タチバナ「っ!? 誰だ!!」

タチバナは咄嗟にダーツをある場所に投げつけた。

?「その程度ではワシはやれんよ。」

タチバナがダーツを投げた先には先ほどの男がいた。
男はダーツを手で受け止めて下に投げ捨てていた。

タチバナ「何者だ貴様!?」

男「釈迦、と言えば分かるだろう。」

沙耶「釈迦やて!?」

三千代「それって・・・十二支を作り出した・・・?」

朝美「どうして・・・どうして鳥汐ちゃんを撃ったんですか!!」

釈迦「決まっておる。処分だ。」

朝美「!?」

まひる「処分・・・?」

釈迦「そうだ。使えなくなったモノを処分した。それだけの事だ。」

沙耶「何やそれ・・・人の命をなんやと思ってんや!!」

釈迦「ただの実験の材料。そして道具に過ぎん。」

三千代「材料・・・道具・・・?」

釈迦「命なぞ、肉体と言う名の器に組み込まれたただの思考回路のようなものに過ぎん。違うか?」

沙耶「いかれてる・・・アンタおかしいって・・・!!」

釈迦「ふん。到底理解出来るようでは無いな。なら、ここで消すしかない。」

そう言って釈迦は銃を朝美達に向けた。

三千代「ひっ!!」

タチバナ「くっ!! 皆さん逃げてください!!」

朝美「でも鳥汐ちゃんが!!」

釈迦「何故そいつの事をそんなに庇う。」

朝美「決まってるよ!! 大切な友達だもん!!」

釈迦「おろかな。そのような事で死ぬんだからな。」

そう言って釈迦は銃の引き金に指をかけた。

朝美(助けて・・・誰か・・・!!)

朝美が心の中で叫んだ。
その時だった。

釈迦「ぬっ!?」

朝美「え・・・?」

銃声が聞こえ、釈迦の持っていた銃が撃ち落された。
そして続けて二発の銃弾が釈迦をかすめた。

釈迦「・・・来たか。」

朝美「あ・・・!!」

遠くから神那のバイクが近づいてきていた。
朱雀は続けて残りの三発を全て撃ちつくした。

神那「当たってねぇぞ朱雀!!」

朱雀「こんな状態じゃ狙うに狙えません!!」

朱雀は後ろで立った状態で釈迦を撃ったが、なれない状態での射撃だった為当たらなかった。

神那「しゃあねぇ・・・しっかりつかまれよ!!」

朱雀「えぇ!? きゃわぁっ!!」

神那は一気にスピードを上げ、釈迦に接近した。
朱雀は落ちないように必死に神那にしがみついた。

神那「おどりゃあーーー!!」

神那は槍を一本取り出し、スピードを落とさずに釈迦へ槍を振るった。

釈迦「ふん。甘いわ。」

釈迦は年齢からは考えられない動きで神那の一閃をかわした。

神那「そんくらい予想してるっての!! 行けぇ!!」

隆士「あぁ!!」

虎丈「おう!!」

釈迦の頭上に隆士と虎丈が攻撃の構えを取っていた。

隆士「海!!」

虎丈「蛇掘!!」

釈迦「ふっ」

二人の攻撃を釈迦は難なく避け、距離をとった。

隆士「くそっ!!」

虎丈「ちっ!! やっぱ予想はしてたが・・・」

神那「あいつ、自分にも。」

朱雀「・・・強化・・・してる・・・うぷっ」

神那「おいおい・・・大丈夫かよ。」

朱雀「もう・・・あんな運転は・・・」

虎丈「最後がしまんねぇなぁ・・・」

隆士「それ所じゃないでしょ。」

虎丈「だな。」

釈迦「貴様ら。よくワシがいる事が分かったな。」

神那「ったりめぇだ。」

虎丈「てめぇのドス黒い雰囲気何ざ、街中にいりゃ一発で分かる。」

朱雀「その通りで・・・うぷっ・・・」

隆士「朱雀さん・・・」

釈迦「ふん。まぁいい。目的は達せられたんだ。ここにいる理由など無い。」

虎丈「逃げる気か!!」

釈迦「貴様らはいずれ死ぬ。ワシが今手を汚す時ではない。」

隆士「待て!!」

釈迦「さらばだ。」

釈迦は懐から取り出した瓶らしきモノを地面に投げた。
その瞬間炸裂音と光が広がった。

朱雀「きゃっ!!」

神那「くっ!! スタングレネードか!?」

隆士「釈迦!!」

光が収まった時、そこに釈迦はいなかった。

虎丈「ちっ・・・逃がしたか・・・」

隆士「それよりも二人を早く病院に!!」

朝美「お兄・・・ちゃん・・・」

鳥汐「うくっ・・・」

神那「どうする!? 二人とも乗せっか!?」

タチバナ「流石に二人とも乗せるのは危険では・・・」

隆士「僕が二人を病院まで運ぶ。三人は釈迦を、タチバナさん達は早く家へ!!」

虎丈「あぁ。」

神那「OK。」

朱雀「分かりました隆士様。」

三千代「クロスケさんをどうか・・・」

沙耶「それに鳥汐も・・・」

まひる「頼むぞ。」

タチバナ「お気をつけて。」

隆士「うん。」

隆士は朝美をおんぶし、鳥汐を抱きかかえて病院へ走った。









夕「・・・来てる・・・」

辺りが夕闇にそまりつつある時間、夕は自室で何かに気づいていた。
夕は後ろ髪を結っておらず、リボンをその手に握っていた。

夕「・・・けじめは・・・つけなくてはいけませんからね・・・」

そう言って夕はいつも通りに髪を結った。

夕「高次・・・」









釈迦「さて・・・すべき事はした。奴らも振り切った。去るか。」

夜を迎えた町を歩いていた釈迦はどこかへ向かっていた。

釈迦「・・・」

その時何かが釈迦に投げつけられたが、釈迦はそれを指先だけで挟むように受け取った。

釈迦「ふん・・・あいつか。」

釈迦は周りの通行人に気づかれない速さで跳び、そばのビルの屋上まで駆け上がった。

釈迦「ここなら邪魔は入らない。そうだろ、夕。」

夕「えぇ。」

釈迦がいるビルの道路向かいのビルの屋上に夕がいた。

高次「どうした、寄りでも戻すのか?」

夕「冗談。私には夫や娘達がいます。」

高次「そうか。なら、ワシを殺しに来た、と言う所だな。」

夕「えぇ・・・」

そう言って夕は袖の中から片手に三本、計六本のクナイを取り出した。

夕「あなたを止めるには、それしか・・・無いから!!」

夕はクナイを釈迦に向けて投げた。

釈迦「今は相手をする気は無い。やれ。」

夕「はっ!?」

突然釈迦の目の前に何かが突き刺さり、それによりクナイが全て弾かれた。

夕「それは・・・」

そこに刺さったのは兎連の大鎌だった。

夕「あなたが、相手をするのですか?」

「そゆ事。」

釈迦の隣に上から兎連が降りてきた。

兎連「悪いけど、殺させるわけにいかないの。ここは私が相手になるわ。」

夕「いいでしょう・・・」

釈迦「ワシは戻っておる。可能ならば、生きてつれて来い。無理なら、消して構わん。」

兎連「はいはい・・・」

そう言い残し釈迦は去った。

兎連「ホント人使いが荒い事。」

夕「それなら抜ければいいでは無いですか。」

兎連「それが出来たら苦労はしないの。」

夕「そうですか。」

兎連「てなわけで、そろそろ始めましょっか。」

夕「いいですよ。」

二人は互いの武器を手に取り、攻撃の構えを取った。

夕&兎連「・・・」

攻撃の姿勢のまま二人は動かず、ただ風に髪がなびいていた。

夕「・・・はぁっ!!」

兎連「たぁっ!!」

二人は同時に跳び、二つのビルの間、空中でぶつかった。

夕「力量は・・・」

兎連「互角のようね・・・!!」

二人は互いに相手がいたビルに跳んだ。

夕「ていっ!!」

着地と同時に夕は兎連に持っていたクナイを投げた。

兎連「そんくらい!!」

兎連は難なくクナイを叩き落とし、自身よりも大きなその鎌を夕に投げた。

夕「甘いです!!」

夕は鎌をかわし、丸腰の兎連の元に跳んだ。

夕「てぇーーーい!!」

兎連「引っかかったね!!」

夕「え? はっ!?」

兎連に向かっている夕に先ほど投げられた鎌が迫っていた。

兎連「ブーメランと同じってわけ!!」

夕「しまっ・・・つぁっ!!」

夕はかわすもバランスを崩してしまった。
そして兎連は鎌を取り、夕に斬りかかった。

兎連「いただき!!」

夕「あなたに獲られるモノなど・・・ありません!!」

夕はクナイを取り出し、兎連の鎌を受け止めた。
ぶつかった瞬間火花が散った。

夕「その力・・・あなたも彼に・・・!!」

兎連「悪い・・・!?」

夕「愚か・・・とだけ言いましょう!!」

兎連「そう・・・!!」

二人は離れては何度もぶつかり、その度火花が散った。

夕「いやぁーーー!!」

兎連「はぁーーー!!」

そして二人は闇夜の中、誰にも気づかれずに戦い続けた。





それを知るのは、天に浮かぶ月だけだった。





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