二十の調


梨音








虎丈「さてと・・・」

一人残った虎丈は先ほどの駐車場から離れた場所で猪玩とにらみ合っていた。

虎丈「ここなら思う存分暴れられるな。」

猪玩「なめやがって。余裕かましてる暇あるのかよ?」

虎丈「てめぇのような武器に頼った難弱者に負けるかっての・・・」

猪玩「御託はそこまでにしな!!」

虎丈の挑発に猪玩は小型のマシンガンを取り出した。

猪玩「死ねぇ!!」

猪玩は虎丈にマシンガンを掃射した。

虎丈「ちぃっ!!」

虎丈は持ち前の動体視力と歩行術で銃撃をかわし、猪玩の後ろに周った。

虎丈「犀撃!!」

猪玩「ぐおっ!?」

後ろに周ってすぐに犀撃を放ち猪玩を吹っ飛ばした。

猪玩「このっ!!」

猪玩は吹っ飛ばされながらも虎丈に向けて何かを投げた。

虎丈「グレネード!?くそっ!!」

投げてきた物がグレネードだと気付き、虎丈は上へ飛んだ。
刹那グレネードが爆発し、爆風が虎丈を襲った。

虎丈「うおっ!!この野郎!!」

爆発の風圧に押されつつも虎丈は跳鮭で猪玩に飛び掛った。

虎丈「喰らえ!!蛇掘!!」

猪玩「くっ!!」

虎丈の蛇掘が地面を砕いたが、猪玩はかわした。

虎丈「続けて!!」

虎丈は蛇掘で伸ばした右腕を軸に、足を上げ片腕で逆立ちした姿勢を一瞬取った。

虎丈「鷹爪!!」

その姿勢から足を強く下ろし鷹爪をしかけた。

猪玩「むぅっ!!」

猪玩は後ろに跳び、バランスを崩しながらも鷹爪をかわした。

猪玩「死ねぇ!!」

そして猪玩は回避したと同時にマシンガンを虎丈に掃射した。

虎丈「うわっ!!」

しかし虎丈も連続バク転で銃撃をかわすと同時に猪玩から距離を置いた。

虎丈「やるじゃねぇか。こりゃ本気でやらなきゃいけねぇようだな。」

猪玩「なめやがって、自惚れは自分を滅ぼす事になるんだぞ?」

虎丈「てめぇが人の事言える口か?そう言う事言うんなら、自分を見直してから言えっての。」

猪玩「減らず口はそこまでだ!!死ねぇ!!」

再び猪玩は虎丈に銃口を向けた。
しかし。

虎丈「させねぇ!!」

虎丈は素早く動き、猪玩のすぐ前まで来た。

虎丈「熊拳!!」

猪玩「うおっ!!」

虎丈の正拳が猪玩のマシンガンを破壊した。
その一撃は狼牙のように、威力のある重い一撃であった。

虎丈「どうだ?これでお前の武器は無くなったんじゃないか?」

猪玩「それは、どうかな?」

そう言って猪玩はずっと背負っていた大きな鞄を降ろし、中に手を入れた。

虎丈「ちっ!!まだあったか!!」

虎丈は鞄の中に武器があると見て、走り出した。

猪玩「かかったな!!死ねっ!!」

虎丈「何!?」

その時鞄の中から銃声が響き、銃弾が虎丈に向けて撃たれた。

虎丈「くぅっ!!」

虎丈は足を止め、銃弾をかわした。
しかしそれによって虎丈に隙が生まれた。

猪玩「そこだっ!!」

虎丈「ぐっ!!」

その隙を狙い、猪玩は鞄で虎丈の頭部を殴りつけた。

猪玩「おらぁっ!!」

虎丈「ぐほっ!!」

続けて猪玩は虎丈の鳩尾に蹴りを入れ、更に鞄を振り下ろして再び頭部を叩き付けた。

虎丈「がはっがはっ・・・」

猪玩「どうだ?てめぇが俺を見くびったその驕りがその様だ。」

虎丈「ぐっ・・・」

猪玩「それじゃ、死にな。」

そう言って猪玩は虎丈の頭部に銃を突きつけた。

猪玩「あばよ。」

虎丈「っ!!」

猪玩の指が銃の引き、銃口から弾が飛び出したが、そこに虎丈はいなかった。

猪玩「何!?」

慌てて猪玩が辺りを見渡すと、離れた場所に虎丈がいた。

虎丈「はぁはぁ・・・」

猪玩「ちっ・・・素早い奴だな。」

虎丈「へっ・・・飛燕ならちょろいさ・・・」

猪玩「そうかいそうかい。しかし、一人で戦おうなんざ、お前も相当バカだな。」

虎丈「確かにな・・・だが、前よりはバカじゃないさ・・・」

猪玩「何?」

虎丈「あの頃はずっと一人で、誰とも関わらないでいたからな・・・別にこんな事になっても気にはしなかったさ・・・あの日に、あいつらに会うまでは・・・」

話しながら虎丈は口元についていた血を腕で拭った。

虎丈「あいつらは一緒にいてくれた・・・俺がいくら振り払ったとしても、あいつらは俺と・・・」

猪玩「くだらねぇな。」

虎丈「確かにな・・・だが、あいつらがいたから俺は俺としていられるんだ。あいつらには、感謝してる・・・だからこそ。」

虎丈は鋭い眼光で猪玩を睨んだ。

虎丈「俺はここで負けられない・・・俺を信じれくれたあいつらの為に、負けるわけにはいかないんだよ!!」

猪玩「おぉっ?」

その瞬間、虎丈からとてつもない気が発せられた。
まるで動物が威嚇するかのように、まるで嫌な気配を振り払うかのように強い気が発せられた。

虎丈「手加減はしない・・・一気にお前を倒す!!」

猪玩「ほざけ!!てめぇはここで!!」

虎丈「飛燕!!」

猪玩が銃を向けるより早く、虎丈は飛燕で猪玩のすぐ前まで来た。

猪玩「何!?」

虎丈「鮫尾!!」

猪玩「うおっ!!」

虎丈はまず鮫尾を仕掛け、最後の蹴り上げで猪玩の顎を蹴り上げた。
それにより猪玩の巨体が一瞬宙に浮いた

虎丈「鷹爪!!」

猪玩「ぐっ!!」

続けて鷹爪で猪玩の腹部にカカト落としを入れた。
しかし虎丈の攻撃は終わらなかった。

虎丈「狼牙!!」

猪玩「がっ!!」

虎丈はすぐに猪玩の後ろに回り、狼牙で上に蹴り上げた。

虎丈「止めだ!!」

最後に虎丈は猪玩の上に高く飛んだ。

虎丈「喰らえぇ!!」

虎丈は下に向かって鮭跳で急降下した。
そして同時に右腕を引いた。

虎丈「熊拳!!」

猪玩「がああぁぁぁぁ!!」

虎丈の熊拳は猪玩の腹部に直撃した。
鮭跳での踏み込みと重力をも合わさり、その一撃は大きく猪玩の下のコンクリートが砕けるほどだった。

虎丈「言ったろ・・・手加減はしないって・・・それに俺には・・・待ってくれてる奴らがいるからな・・・」

そう言い残し虎丈はその場を去った。







梢「それで、白鳥さんの右腕は・・・?」

その頃隆士達は橙条院家に戻って来ていた。

楓「大丈夫ですが、しばらくは激しく動かさない方がいいかもしれません・・・」

隆士「そうですか・・・」

隆士は右腕を動かさないように三角巾で吊るしていた。

恵「にしても、一体何なの星の型って。あんなに凄い物を白鳥クンは全部マスターしちゃったわけなの?」

瑞穂「本当よ。信じられないわ。」

夏樹「ほんっとにそう言うイメージ無いって言うか、みんな隆を知らないって言うか・・・」

翼「だけどあんな戦い見せられちゃ信じるしかないよな。」

珠実「ですぅ・・・」

隆士「まぁね。話したい所だけど、まだ虎丈来て無いし・・・」

虎丈「その心配ならしなくていいぞ。」

その時丁度虎丈が帰ってきた。

神那「おう虎丈。大丈夫だったか?」

虎丈「当たり前だ。で、話始めるのか?」

隆士「そのつもり、それでどこから話したらいい?」

朱雀「それでは・・・まずは星の型とはどのような物なのかを。」

山吹「それならワシが話そう。星の型、九星流はワシの家計があみ出した剣技じゃ。それは肌岡から聞いたであろう。」

梢「はい。」

山吹「九星流の技は全部で九つ、それぞれ九つの星を模した名がある事から『星の型』と呼ばれるようになったのじゃ。」

朝美「そうなんだ。」

山吹「懐に飛び込み切り上げる一の型『水』、連続で九回突く二の型『金』、集中し居合いを放つ三の型『地』、素早さを生かし相手を切った事さえ気付かせない四の型『火』、上から相手の頭部を切り叩く五の型『木』、連続で何度も切りかかる六の型『土』、斬撃を飛ばす七の型『天』、集中し一撃の高い突きを一気に放つ八の型『海』、そして奥義の『冥』・・・これが九星流の全てだ。」

夏樹「この内ボクは海の型まで覚える事が出来たんだ。」

珠実「でも白鳥さんが覚えられるくらいなら、別に難しいイメージは無いんですが〜?」

夏樹「ほんっっっとに何も分かって無いのね。確かに隆は剣士の素質は全く無かったけど、隆は頑張ったのよ。」

恵「まぁ白鳥クンが努力家だってのは分かるけど、どうにも信じられないわよ。」

山吹「まぁの、運動神経なら肌岡の方が上じゃったからな。しかしそれでも肌岡は海の型までしか覚えれなかったのじゃ。」

部長「確カに姉さんノ運動神経は優レテいまシたカラね。」

虎丈「だが竜汪は隆士とは違った海の型を使ったように見えたが。」

隆士「アレは派生技だよ。マスターした後で自分なりに改良を加えるね。だからあの海の型は竜汪オリジナルだと思うんだ。先生なら知っていますよね?」

山吹「うむ、小太刀の海の型は自身も突撃する形じゃ。それを上に飛んでかわした場合に更に上に海の型をしかける海の型翔。アレがあいつの十八番じゃったな。」

神那「さっきのか。なぁじいさん。じゃあ竜汪の技全部知ってんだろ?」

山吹「勿論じゃ、後で白鳥に教えておく。」

朱雀「隆士様だけにですか?」

山吹「無論じゃ、奴と対等に戦えるのは白鳥だけじゃからの。」

沙夜子「でも、大丈夫なの・・・?」

隆士「何が?」

三千代「そうですわ。あなた勝てるのですの?」

隆士「正直難しいだろうね。腕も力もあいつの方が上だからね。オマケに僕はあいつの派生を知らないから先を読まなきゃいけないし。」

花梨「それじゃあ。」

隆士「大丈夫、あっちが派生を使うなら、こっちは連係で仕掛けるさ。連係は僕の十八番だからね。」

タチバナ「しかしそうだとしても先ほどの戦い、見た限り奥義を二回・・・それで腕を。」

隆士「うん・・・」

瑞穂「見た感じ普通だったけど・・・奥義ってどう言う物なの?」

山吹「奥義、冥の型は一瞬にて十二回切りかかり、最後に一番強力な一太刀を放つ連撃じゃ。」

灰原「一瞬に十二回?どう見たって一回しか見えなかったゾ?」

隆士「まぁ事前の連撃は一秒も無いですからね、相当動体視力のいい人じゃないと見切れないでしょうね。」

神那「おい虎丈、お前見切れたか?」

虎丈「いや、初めに何度か切ったのは分かったが・・・十二回とは予想はつかなかったな・・・」

夏樹「流石にボクでもあんなのは覚えれなかったよ。何てったって普通は教えてくれるような物でも無いし、それに元々星の型は全部見て覚えろだし。」

花梨「見て覚えろって、奥義のアレって見て覚えれる物なの?」

夏樹「だから教えてくれないって意味なのよ。先生も奥義を見せてくれたのは一回だけだし、普通は見れない物なのよ。」

梢「それを白鳥さんは・・・」

隆士「うん・・・」

理想奈「でもよく白鳥くん覚える事出来たよね。」

沙耶「それよりも、見切る事出来た方が凄いんちゃいます?」

隆士「まぁ・・・元来の僕なら見切れるわけ無いんだけどね・・・」

まひる「母さまの目か。」

隆士「うん。この左目が全部を見切ってね・・・それで僕は奥義を知る事が出来たんだ。」

浩子「じゃあどうして奥義の後右腕が?」

隆士「それは・・・」

山吹「見切れても、隆士の体は奥義を放つには耐え切れなかったのじゃ・・・」

梢「耐え切れない・・・?」

山吹「奥義を放つにはそれ相応の動体視力、運動神経が必要になる。白鳥は後者に問題があった。」

隆士「情け無いけど、僕は本当運動神経無かったからね。奥義を覚えれただけ奇跡に近い物があるさ。」

夏樹「隆は周りが止めろって言っても聞かないで・・・奥義を使えるようにはなったんだけど・・・」

サクラ「けど?」

山吹「言ったろう、耐え切れないと。白鳥は覚えはしたものの、放つ度に体、特に右腕が耐えれず白鳥の体を蝕む事になったのじゃ・・・」

梢「蝕むって・・・そ、それでは!!」

隆士「うん・・・言ったよね。多少のリスクを背負わなきゃ、守れる物も守れないって。」

夏樹「奥義を放てば放つほど隆の体はボロボロになって・・・特に右腕・・・後何度か使ったら二度と右腕は使えなくなるかもしれないって・・・」

ほぼ全員「!!」

その事実に、皆に衝撃が走った。

瑞穂「使えなくなるって・・・そんな・・・!!」

隆士「うん・・・八年前に初めて放った後病院で診てもらってね、後五回が限界だって言われたよ。」

朱雀「五回・・・ですか?」

隆士「うん。五回放てばそれで剣士として刀は二度と扱えなくなるって。そしてそれ以上使えば右腕は全く使えなくなるか・・・僕自身が死ぬか・・・」

梢「そ、そんな・・・」

隆士「今まで僕が放った回数・・・初めて放ったのを除くと、後二回しかない・・・」

瑞穂「二回・・・大丈夫なの・・・?」

隆士「分からないね・・・流石に・・・」

恵「ねぇ、どうしてなの?どうして自分の体を傷つけてまでそんな事を?」

隆士「・・・守りたかったんだ・・・梨音を・・・梨音を守れる力が欲しかったんだ・・・」

梢「・・・話してください。あなたの過去を・・・梨音の事を・・・」

隆士「うん・・・」







子供A「あっち行けぇ!!」

隆士(子供)「い、痛いっ!!」

子供B「こっちに来るんじゃねぇぞ!!」

あの頃の僕は左右で違う目が理由でみんなからいじめられていた。
仲間外れにされて、石投げられたりして、辛かった・・・

夏樹(子供)「こらぁ〜〜〜!!」

子供達「うわぁ〜!!逃げろ〜〜〜!!」

そんな僕を助けてくれたのが、怒りっぽいけど面倒見がよかったなっきと・・・

「大丈夫?痛い所無い?」

いつも優しかった梨音だった・・・

夏樹「今度こんな事したらただじゃおかないからね〜〜〜!!ったく・・・隆も隆だよ。」

隆士「うぅ・・・」

梨音「なっちゃん。なっちゃんが隆をいじめちゃ駄目だよ。」

夏樹「梨音は隆を甘やかしすぎなの。全く・・・」

梨音「なっちゃんは厳しすぎるの。」

隆士「あ、あの・・・止めてよ二人とも。ケンカは駄目だよ。」

夏樹「誰のせいかしら誰の!?」

隆士「ひうっ!!」

あの頃のなっきは本当に怖かったなぁ・・・

夏樹「もしもボクがいなかったらどうするつもりだったのかしら隆?」

隆士「え、えと・・・その・・・」

夏樹「さぁ言ってごらんなさい。さぁ。」

隆士「あ、あぅ・・・」

梨音「なっちゃん。」

夏樹「はいはい・・・」

だけどなっきが言っていた事も分かっていた。
彼女がいない時にいじめられたらって思うと怖くて・・・
そしてその不安はすぐに訪れた・・・

隆士「止めてよ!!痛いって!!」

子供A「うるさい!!黙ってろ!!」

子供B「気持ち悪いんだよ!!」

子供C「お前なんか死んじゃえ!!」

また僕はいじめられた。
それにその日はなっきは風邪で学校には来なかった。
だからいじめっ子達にとっても都合のいい日だったんだ・・・

子供D「今日はバカ夏樹がいねぇから、やりたい放題だ。」

子供E「だな。じゃあ今日はどうするか?」

子供A「殴ってばっかじゃこっちも疲れるし、どうする?」

子供B「そうだなぁ・・・」

隆士「あ・・・はぁあ!!」

僕は彼らが話してる隙に逃げ出した。

子供C「あ!!逃げた!!」

勿論彼らは僕を追いかけた。
体力の無かった僕はすぐに捕まって更に酷く暴行を受ける事になった・・・

隆士「あうぅ・・・」

子供D「この・・・疲れさせんじゃねぇよ!!」

隆士「ぐふっ!?」

僕はもう嫌になった。
もう逆らいたくも無くて抵抗するのを止めた。
その時だった。

梨音「隆ーーー!!」

隆士「うぇ・・・え・・・?」

梨音が僕の所に来てくれたんだ。

梨音「あなた達止めなさい!!」

子供A「青島かよ・・・お前には関係無いだろ?」

梨音「関係無いわけじゃないわ!!隆、行きましょう。」

隆士「う・・・うぅ・・・」

僕は梨音が差し出した手を握ろうと手を伸ばした。
だけど・・・

子供A「邪魔するな!!」

梨音「きゃっ!!」

隆士「!!」

いじめっ子の一人が梨音を突き飛ばした。
その光景を見た僕は・・・

隆士「うあぁーーー!!」

怒りに我を忘れて彼らに襲い掛かった。

子供A「にっ!?このぉっ!!」

隆士「あぁーーーー!!」

だけど敵うわけが無かった・・・
ケンカなんかした事も無かったし、何より五人もいた・・・
結局僕は返り討ちにあってその場に取り残された・・・

隆士「うっ・・・うく・・・」

痛みで倒れていると、その内雨が降り出した。
すぐに僕と梨音がずぶ濡れになった・・・

梨音「隆、大丈夫・・・?」

隆士「う、うん・・・」

梨音「あはは・・・ごめんね、やっぱりなっちゃんのように行かなかったよ・・・」

隆士「梨音・・・ごめん・・・ね・・・」

梨音「ううん、私もごめんね。隆を守れなくて。」

隆士「!!」

僕はショックだった。
梨音は僕を守ろうとしていた。
男なのに、僕は女の子に守られている事に気付いた・・・

梨音「あ、隆!?」

僕は走り出していた。
どうしようもなく自分が惨めで、情けなくて、嫌になった・・・
ただ我武者羅に雨の中を走り続けた・・・
走り続けていると・・・

山吹(当時)「おっと、危ないぞ?」

僕は偶然にも先生にぶつかった。
これが始まりだったんだと思う。

隆士「うくっ・・・しえ・・・くだ・・・い・・・」

山吹「む?」

隆士「教えてください・・・どうしたら・・・強くなれるんですか・・・?」

山吹「強く?話を聞こうでは無いか。」

隆士「ひくっ・・・はい・・・」

僕は先生に強くなりたい理由を話した。
守られるだけの自分が嫌だから・・・
誰かを守れる強さが欲しかった・・・

山吹「ふむ・・・なぁ坊や。坊やに強くなる為の覚悟はあるか?」

隆士「覚悟・・・僕は強くなる為なら、どんな事でも頑張るよ・・・」

山吹「そうか・・・教えてみる価値はありそうじゃな。」

そう言う事で僕は先生に星の型を教わる事になった。
どこから聞きつけたのかなっきも一緒に教わる事になって・・・

夏樹「ほら隆。しっかりやりなさいよ。」

隆士「わ、分かってるって。」

だけどやっぱり僕は運動神経が悪いから本当に大変だったよ。

隆士「どうしたら上手く出来るのかな・・・」

子供A「お前なんかに出来るかよ。」

子供B「さっさと辞めちまえよ。」

隆士「・・・」

先生の所には僕をいじめていた子達もいた。

夏樹「あんた達ね〜〜〜!!」

隆士「なっき止めてよ。僕は大丈夫だから。」

夏樹「うぅ〜・・・まぁ隆がそう言うなら。」

隆士「僕は僕で頑張るんだ・・・」

型を覚える早さは本当に遅かったけど僕は諦めなかった。
そして教わり始めてから二ヶ月。
その頃僕はやっと海の型を覚えて先生もこの町から出て行く日が近づいていた。
先生は元々各地を転々としていたからずっといるってわけじゃ無かったから。

山吹「さて、結局残ったのはお前達だけか。」

夏樹「ですね。」

先生が来てから二ヶ月、残っていたのは僕となっきを含めてほんの数名だった。
僕をいじめていた子達は一ヶ月も経たない内に辞めていた。

山吹「ワシが一つの町にこれだけ残ったのは初めてじゃ。それほどお前達は教えがいがあったと言う事じゃ。」

隆士「ありがとうございます。先生。」

山吹「まぁ教えがいがあったついでに、ここまで残ったお前達にとっておきを見せてやろう。」

夏樹「とっておき・・・ですか?」

山吹「あぁ。少し離れてなさい。」

隆士「何だろう・・・」

僕らがそんな事思いながら先生は用意していた丸太の前に立った。

山吹「瞬きしている暇など無いぞ・・・見よ!!はぁっ!!」

夏樹「え、え!?」

その時僕らは先生から奥義、冥の型を見せてもらった。

山吹「これが奥義、冥の型じゃ。」

冥の型を喰らった丸太は見るも無残にボロボロになっていた。

夏樹「全然分からなかった・・・ねぇ隆は分かった?」

隆士「え?あ、っと・・・」

山吹「これは覚えるも覚えないもお前達次第じゃ。まぁ見切れる者がおるかさえ分からぬがな。」

隆士「・・・」

だけど僕は見えていた。
そしてそれから・・・

隆士「はっ!!ていっ!!」

僕は一人で冥の型を覚える為に一人で特訓を始めた。

隆士「このままじゃ駄目だ・・・もっと速く、もっと強く・・・」

冥の型習得に僕は全力を出した。
どんな時でも、僕は頑張った・・・

梨音「ねぇ隆、無理しちゃ駄目だよ?」

隆士「大丈夫、僕は大丈夫だから。」

そんな僕を梨音となっきは心配してくれてた。

夏樹「先生言ってたでしょ?別に覚えなくたっていいって。もう隆は充分強いんだよ?」

隆士「ううん、僕はまだまだだよ。」

僕は一心不乱に冥の型を覚えようとした。
そう言う姿勢のお蔭なのか、周りの僕を見る目が少し少し変わって行った。

少女A「あ、白鳥く〜ん!!一緒に帰らない?」

少女B「駄目!!白鳥君は私と帰るの!!」

少女C「何言ってるのよ!!私となの!!」

夏樹「あんたらいい加減にしなさ〜〜〜い!!」

梨音「人気者だね、隆。」

隆士「あまり嬉しい気はしないんだけどね・・・」

確かに周りの僕に対する見方は変わって行ったけど、それはいい意味だけじゃ無かった・・・

子供A「ちっ隆士のくせに・・・」

子供B「どうする?下手に手を出したってアイツは。」

子供C「だよな。」

子供A「慌てるなって。こう言うのは頭を使うんだよ。」

その時僕は影で動いていたある計画に気づかないでずっと特訓をしていた。
そしてある日・・・

隆士「はぁはぁ・・・」

梨音「そろそろ休んだら?」

隆士「ううん・・・後少し・・・何かがつかめそうなんだ・・・」

梨音「だけど・・・」

夏樹「梨音、隆は一度言い出したら聞かないの、知ってるでしょ。」

梨音「だけど・・・」

夏樹「信じてあげなよ。隆を。」

梨音「・・・うん。」

隆士「今までの感じから・・・もう少し速く強く・・・全力で・・・」

梨音「隆・・・」

隆士「・・・はあぁぁぁっ!!」

その瞬間、僕は初めて奥義を習得出来た。

隆士「で、出来た・・・」

夏樹「やったじゃない隆!!」

梨音「おめでとう隆!!」

隆士「梨音、なっき・・・ありが・・・ぐっ!?」

梨音「え?隆!?」

夏樹「どうしたの隆!?ねぇ!?」

隆士「う、腕が・・・」

梨音「なっちゃん早く救急車を呼んで!!」

夏樹「わ、分かったわ!!」

僕はすぐに病院に運ばれて診察を受けた。
そして後五回冥の型を放てば二度と剣を持てなくなると言われた・・・

梨音「どうしてこんな事に・・・隆・・・」

隆士「・・・」

山吹「白鳥はおるか?」

隆士「先生。どうしてここに?」

山吹「肌岡に呼ばれてな・・・話は聞いた。」

隆士「はい・・・」

山吹「どうやらお前の体は奥義を放つには耐え切れなかったようじゃな・・・」

隆士「・・・どうしたらいいのでしょうか・・・」

山吹「用は奥義を放たなければいいのじゃ。そうすればお前の体は大丈夫じゃろう。」

隆士「そうですか・・・」

山吹「しかしお前が奥義を伝承するとはな。これで二人目か。」

隆士「そうなんですか?」

山吹「あぁ。それよりもお前は自分の体を心配するのじゃ。」

隆士「はい・・・」

それから数日、僕はリハビリをして右腕の調子を戻す事は出来た。
だけどそれから奥義を放つ事は無かった。
あの日まで・・・

少女A「ねぇ白鳥君、腕大丈夫なの?」

隆士「う、うん。」

少女B「私でよかったら何でもするからね。」

夏樹「こらこら!!何勝手に言ってるのよ!!」

少女C「夏樹には関係無いでしょ!!」

夏樹「隆はボクの幼馴染なのよ!!ほら梨音も何か言いなよ!!」

梨音「え?え?」

隆士「ちょ、ちょっとみんな〜・・・」



子供A「チヤホヤされやがって。痛い目見ないと分からねぇようだな。」

子供B「だけどよ、アイツ奥義まで覚えちまってるんだぞ?」

子供C「だよな。いくら使えないって言ってもよ・・・」

子供A「だから頭を使うんだよ。アイツの性格を利用してな。」

子供D「どうするんだ?」

子供A「いいか?よく聞けよ・・・」

子供E「なるほどな。じゃ、今日やるんだな?」

子供A「あぁ。」



少女A「何よ〜〜!!梨音は白鳥君の何なのさ!!」

梨音「わ、私は隆とは・・・」

隆士「み、みんな止めてよ〜・・・僕と梨音はただの幼馴染だよ〜・・・」

夏樹「もう隆は鈍いんだから〜・・・梨音は隆の事がね。」

梨音「な、なっちゃん!!」

いつもと同じでその日も何事も無く終わるはずだった・・・
そう、はずだったんだ・・・

隆士「おかしいな・・・梨音が来ないなんて・・・」

僕は放課後、梨音と帰ろうと思って校門で待っていた。
だけど彼女は来なかった。

隆士「どうしたんだろう・・・」

少女「あ、白鳥君。」

隆士「ん?」

少女「誰を待ってるの?夏樹?梨音?それとも私?」

隆士「梨音を待ってるんだ。知らない?」

少女「もう・・・本当に鈍いのね・・・ま、いいわ。梨音ならもう帰ったわよ。」

隆士「え?そうなの?」

少女「うん。でも誰かに呼ばれていたような気したけど・・・確か公園にとか・・・」

隆士「公園?」

少女「うん。それよりも今日は一緒に。」

隆士「ありがとう。じゃあね!!」

少女「え?あぁん、もう!!」

僕はすぐに公園に向かって走り出した。

隆士「一体どうしたんだろう・・・梨音・・・」

不安を抱えながら僕は公園に来た。
そうしたら不安は的中した・・・

隆士「梨音!!」

梨音「隆!!」

子供A「遅かったじゃん。」

公園には僕をいじめていた子供の他に大人が一人いた。

隆士「どうして梨音を!!」

子供B「そりゃあお前を甚振るのに人質が必要になったからさ。」

隆士「人質・・・?」

子供C「今のお前に下手に手を出したらどうなるか分からないからな。」

隆士「じゃあ・・・その大人は・・・?」

子供D「あぁ。こいつは俺らの手下だ。お前を甚振る為に連れてきたんだよ。」

子供E「こいつは重度の麻薬中毒で、もうまともな考えは出来ないんだ。」

隆士「どうしてそんな人を・・・」

子供A「俺の家は簡単に言えばヤクザと結構係わってるからな、ちょいっとな。」

隆士「このっ・・・」

僕は梨音を助け出そうといつも持っていた木刀を取り出そうとした。
だけど・・・

子供A「おっと、下手に手を出したらどうなるか・・・」

梨音「・・・」

隆士「くっ・・・」

子供A「じゃ、やれ。やったら薬やるからよ。」

男「うぅ・・・」

隆士「くそ・・・」

梨音を人質に取られた僕はなすすべなくその大人の人の暴行を受ける事になった。
手を出したら梨音に危害が及ぶから・・・痛くても苦しくても僕は耐えた・・・

隆士「ぐほっ・・・ごほっ・・・」

子供A「どうだ?痛いだろ?それが奥義伝承してチヤホヤされたお前の驕りだ。」

隆士「そ、そんなの・・・そっちの勝手じゃ・・・」

子供A「うっせぇ!!やっちまえ!!」

男「・・・」

隆士「ぐがっ!!」

梨音「隆!!」

隆士「ぐふっ・・・お、お願いが・・・り、梨音は・・・彼女は逃がして・・・」

梨音「隆・・・」

子供A「へん。青島を逃がしたらお前が逃げないって保障がどこにある?」

隆士「ぜ、絶対に逃げない・・・だから・・・だから梨音は・・・」

子供A「やだね。もう喋れないように口を砕いてやれ。」

男「ん・・・」

隆士「ぐっ・・・」

梨音「も、もう止めて!!」

子供A「なっ!!この!!」

その時梨音がリーダー格の子供に飛び掛った。
その時少年が持っていた麻薬と思う粉が散らばった。

男「あ・・・」

梨音「隆、急いで逃げよう!!」

梨音は僕の手を掴んで逃げようとした。
だけどその時に・・・

男「う、うがあぁぁぁ!!」

梨音「きゃぁっ!!」

麻薬の事で怒ったのか、男の人は梨音を襲いだした。

隆士「や、止めろ・・・!!」

男「うおぁぁ!!」

梨音「う、うぐぅ・・・」

男「おぁぁぁ!!」

そして男の人が梨音を持ち上げて下に投げ落とそうとした。
その先には大きな石があった・・・

隆士「止めろぉーーーー!!」

僕は叫んだ。
だけどその声は男の人に届きはしなかった・・・
僕の叫び声の響く公園に、鈍い音が響いた・・・

隆士「!!」

梨音の頭に石が当たり、梨音はその場に倒れた・・・

子供A「お、おい。やばいんじゃないか・・・?」

子供B「やばいよな・・・」

子供C「に、逃げた方がよくないか?」

子供D「だ、だよな!!逃げろぉ!!」

子供E「うわぁーーーー!!」

予想もしなかった事に子供達は逃げ出した。
公園に残ったのは僕と梨音と男だけだった。

隆士「よくも・・・よくも梨音をーーー!!」

男「うぅっ!?」

僕は痛む体を耐えて木刀を握り男に切りかかった。

隆士「うわぁーーーーーー!!」

僕は何度も男を切り続けた。
そして最後に・・・

隆士「奥義!!冥ぃーーー!!」

男「がぁっ・・・!!」

僕は冥の型を放った・・・
自分でも覚えてるのが不思議なくらいに我を忘れていた僕は本当に修羅だった・・・

隆士「はぁ・・・はぁ・・・」

気づいた時には、僕は返り血で染まり・・・
男の腹部からはおびただしい量の血が流れていた・・・

隆士「ぼ、僕が・・・僕がやったの・・・か・・・?」

僕は自分が怖くなった・・・
人を殺してしまった自分が・・・

隆士「僕は・・・僕は・・・」

僕は呆然と立ち尽くした・・・
その時、前に梨音が傷ついた日と同じような大雨が振り出した・・・

梨音「りゅ、隆・・・」

隆士「!!梨音!!」

僕はすぐに梨音の所に駆け寄って彼女を抱き寄せた。
だけど彼女の体は冷たくなり始めて、頭から血があふれ出していた・・・

梨音「よか・・・った・・・大丈夫・・・なんだ・・・」

隆士「梨音・・・!!」

梨音「えへへ・・・ごめ・・・んね・・・」

隆士「ねぇ・・・しっかりしてよ・・・!!」

梨音「うん・・・分かって・・・るよ・・・けど・・・」

僕は血が流れ出ないように手で押さえたけど、止まる事は無かった・・・

隆士「ごめんよ・・・僕の・・・僕のせいで・・・!!」

梨音「りゅうは悪くないもん・・・悪いのは・・・私だもん・・・」

隆士「そんな事ない!!君は何も悪くない!!」

梨音「そう・・・かな・・・でも・・・もう遅いね・・・」

隆士「え・・・?」

梨音「最期に・・・これだけ言わせて・・・りゅう・・・」

隆士「何・・・?」

梨音「だい・・・好き・・・だよ・・・」

そう言って梨音は目を閉じた・・・
もう、動かなくなっていた・・・

隆士「ねぇ・・・起きてよ・・・起きてって!!ねぇ!!」

呼びかけても、もう起きる事は無かった・・・

隆士「僕のせいだ・・・僕が・・・僕が・・・ぼくが・・・ぼくがぁ・・・!!」

雨が強くなっても、右腕が痛んでも・・・僕は梨音を抱きしめ続けた・・・

隆士「うっうぅ・・・」

「・・・」

泣いていると、近くに少し年上だと思う人がいた・・・
その人が竜汪・・・梨音の兄竜也さんだった・・・

隆士「僕のせいで・・・僕のせいで梨音が・・・」

竜汪「お前が力を欲したのは・・・梨音を守る為では無かったのか・・・」

隆士「だけど・・・だけど!!」

竜汪「嘆いても・・・梨音は二度と戻らない・・・それを覚えておけ・・・」

それだけ言って、竜汪は去った・・・

隆士「うっ・・・うあぁぁぁーーーーー!!」







隆士「それから梨音の葬儀が行われたけど、僕はその前に引っ越した・・・梨音に兄がいた事やその人が星の型を教わっていた事はその後なっきが教えてくれた・・・」

梢「そんな事が・・・」

隆士「それからは僕は二度と星の型を使わないように、そしてそう言う過去があった事を隠して生きてきた・・・もう梨音と同じ犠牲者を出したくないから・・・」

瑞穂「そうだったの・・・」

夏樹「そして今、隆には何の因果か守るべき相手がいる・・・死んだ梨音そっくりの恋人がね・・・」

梢「私が・・・梨音と・・・?」

隆士「鳴滝荘に来て再開した時は驚いたよ。梨音そっくりだったからね・・・だけど梢ちゃんは梢ちゃん。梨音じゃない・・・」

梢「はい・・・」

隆士「もう二度と誰も犠牲にしたくない・・・だからこそ僕の身が滅んでも、僕は守りたい人達を守りたいんだ・・・」

神那「なるほど。で、偶然俺らと修学旅行で出会って、奴らに狙われる事になったけど。今のお前にゃ十二支は二の次か?」

隆士「だろうね。自分の過去にケリをつける。それが十二支を倒す事に繋がってるんだ。」

朱雀「隆士様・・・」

隆士「あの日守れなかった悔しさを忘れない・・・今度は絶対に守ってみせるんだ・・・」

梢「白鳥さん・・・」

隆士「だから、多分最初で最後のお願いがある。みんなにね・・・」

神那「おう。」

虎丈「何だ?」

隆士「・・・僕を、信じて欲しい。」

梢「白鳥さん・・・」

隆士の一言、それは単純だが大きな意味を持っていた。

梢「勿論です。」

虎丈「俺らは仲間だろ?」

神那「当たり前な事聞くなっつうの。」

朱雀「私はどこまでも隆士様についていきますわ。」

瑞穂「ずっと信じるわ。白鳥君を。」

夏樹「ボクはずっと隆を信じてるから。」

夕「あなたには沢山の仲間がいます。ですから私も、あなたの力になります。」

その場にいる全員が隆士の言葉に賛同した。

隆士「みんな。ありがとう・・・」

夕「さて、今日の所はもう休みましょう。隼さん。」

隼「うむ。風呂の用意は出来ておる。ゆっくり入りたまえ。」

梢「ありがとうございます。」







恵「ふ〜・・・気持ちいいわね〜」

珠実「桃さんおじさん臭いです〜」

恵「何を〜!!」

まひる「うるさい。風呂ぐらいゆっくり入ってろ。」

話の後すぐに女性陣は風呂に入っていた。

朝美「だけど本当に大きなお風呂〜」

沙耶「それに露天風呂までつけてるって、そこらの温泉や銭湯顔負けやな。」

瑞穂「贅沢にも程があると言うか何と言うか。」

理想奈「それにしても・・・瑞穂。」

瑞穂「何?」

理想奈「本当に胸大きいね〜」

瑞穂「ばっ!?何言ってるの!?」

三千代「そう言えば前に栗崎さんが触った時は着痩せタイプだとか。」

夏樹「ふ〜ん。ま、女の子は胸が全てじゃないんだし。」

部長「そウ言う姉さんハ相変ワラず成長しテませンネ。」

夏樹「うっさい!!」

恵「対外胸の小さい子ってそう言う風に考えてるからね〜」

珠実「何で私を見るです〜!?」

朝美「でもうらやましいな〜・・・私もタチバナさんみたいなスタイルいい人になりたいんだけど。」

タチバナ「それは駄目です。私みたいなデカ女になってはいけません。」

花梨「でかい以前にスタイルがいいのが羨ましいわよ。」

朱雀「ですが花梨さんもスタイルいい方だと思いますよ?私なんて・・・」

沙夜子「あら、朱雀はまだ成長するわ。きっとね。」

浩子「梢ポンはどうなの?」

梢「あ、見ないでよヒロちゃん。」

サクラ「どれどれ〜?」

梢「サクラさんも〜」

燕「燕も見たい〜」

梢「え〜〜〜!?」



翼「賑やかだなぁ・・・あっちは。」

竜太郎「だな・・・」

神那「何の因果で俺はヤロウ共と一緒なんだか・・・」

虎丈「混浴なんて都合のいい展開なんかあるかバカ・・・」

灰原「所でよ、白鳥はどうした?」

翼「あれ?そう言えば・・・」

竜太郎「いないな。」







山吹「話とは何じゃ?白鳥。」

隆士「はい。」

その頃隆士は風呂に入らず山吹達の所にいた。

隆士「僕に・・・雫をください。」

山吹「雫をじゃと?」

隆士「はい。竜汪と戦う事になると、恐らくただの剣じゃ駄目です。ですから・・・」

山吹「そうか・・・それはいいが、今の右腕で大丈夫だと思うのか?」

隆士「厳しいですね・・・」

菫里「どうする?一時的とは言え腕の痛みを引かせる薬でも作るか?」

隆士「いえ、そう言う物には頼りたくないんです。自分の力で何とかしたいんです。」

夕「兄さん。そんな事をしたら奴らと同じですよ?」

菫里「そ、そうか・・・」

隆士「だから僕は大丈夫です。何としてでも・・・」

夕「ですから、私も協力します。十二支の野望には私も恐らく必要になるでしょうから。私も赴いた方がいいでしょうし。」

丑三「しかし夕ちゃん。」

夕「大丈夫です。信じてください。」

丑三「夕ちゃんがそう言うなら・・・頼むぞ。」

隆士「はい。」

隼「朱雀の事も、頼んだぞ。」

隆士「勿論です。みんなは僕が守りますから。」







隆士「ふぅ・・・」

それから隆士は皆が寝静まった夜中、一人で露天風呂に入っていた。

隆士「明日からまた激闘になる・・・今の内ゆっくり休んでおかないと・・・」

「そうですね。」

隆士一人のはずなのに、近くから声がした。

隆士「頑張らなくちゃね・・・」

「ですね。」

隆士「・・・ん?」

その時隆士はやっと声の理由が、誰かがいるのに気付いた。

隆士「うわぁっ!?」

夕「こんばんわ。」

声の主は夕だった。

隆士「ゆゆゆゆゆ、夕さん!?」

夕「静かに、皆さん起きますよ?それと出来ればこちらを見ないでください。恥ずかしいので。」

隆士「じゃあ入ってこなければいいじゃないですかぁ・・・」

夕「まぁまぁ。」

隆士「ですか・・・」

反論するのを止めた隆士は肩まで湯に浸かり、夕は隆士の背中に寄りかかった。

夕「気持ちいいですね〜」

隆士「で、ですね・・・」

夕「どうかしました?」

隆士「い、いえ・・・」

夕「そうですか?」

隆士(さっき見ちゃったけど・・・肌綺麗だったなぁ・・・背中越しでも触り心地気持ちいいし・・・本当に若いって言うか・・・あ、鼻血が・・・)

夕に気付かれないように隆士は鼻血を拭った。

夕「隆士さん?今私でいやらしい事思いませんでした?」

隆士「うえぇ!?そ、そんな事するわけ!!」

夕「ですよね?私はもう47ですし、夫も娘も、血は繋がって無くても孫がいるんですよ?」

隆士「あ、あははは・・・」

夕「・・・あまり無理をしてはいけませんよ?」

隆士「夕さん・・・」

夕「あなたは一人じゃないんです。私達と言う仲間がいます。それに。」

隆士「それに?」

夕「あなたを愛する人達の事も、忘れてはいけませんよ。」

隆士「・・・ですね。」

夕「朱雀さんも、夏樹さんも、瑞穂さんも、そして梢さんも・・・」

隆士「分かってます。」

夕「頑張りましょうね。」

隆士「はい・・・」

二人は同時に空を見上げた。
共に左右が違う瞳を持つ二人が見上げた空は雲一つ無い綺麗な夜空だった。
そしてその空に一点、月が輝いていた。




これから来る激闘を予想するかのような、現れ始める上弦の月であった。





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