十九の調


二つの龍








梢「白鳥さん・・・」

隆士「・・・」

白鳥さんが一人で百人以上の人と戦おうとしてる。
私は・・・私達はただ見ているしか出来ない・・・
私には、止める事が出来ない・・・

男A「一人でこの数をやるってのか・・・いい度胸じゃねぇか。」

隆士「これでも一応奥義伝承者だ・・・君達には負ける気がしないよ。」

恵「白鳥クンも言うわね・・・でもさ。」

夏樹「九星流の事?星の型の正式な名前ですよ。」

恵「そなの?」

夏樹「全部ホニャララの型って言うから星の型って呼ぶんです。」

朝美「じゃあ星ってのは?」

隆士「後で話すよ。だから今は僕から離れてて。」

梢「あ、はい。」

私達は言われた通りに白鳥さんから離れた。
そして白鳥さんも男の人達に向かって行く・・・

男B「それじゃてめぇの死刑の開始だな。」

隆士「それはどっちの事かな・・・?」

男C「減らず口を言いやがって・・・やれ。」

男達「うおぉーーーーー!!」

無数の男の人が白鳥さんに襲い掛かりました。

梢「白鳥さん!!」

隆士「・・・」

白鳥さんは今にも襲われそうなのにその場に立つだけでした。
そして一斉に白鳥さんに凶器が・・・

夏樹「大丈夫。隆を信じてあげな。恋人なんでしょ?」

梢「ですけど・・・!!」

隆士「はっ!!」

神那「おあっ!?」

梢「え?えぇ!?」

白鳥さんは襲われる直前に高くジャンプして男の人達から逃れました。

夏樹「ほらね。」

男C「なっ!?」

隆士「木!!」

ドガッ!!

男C「おごっ!?」

そのまま白鳥さんは男の一人に向かってその人の頭を強く叩きました。

隆士「このまま一気に!!」

男達「おあっ!?」

隆士「たぁあっ!!」

男達「どあぁっ!!」

更に白鳥さんは頭を叩いた男の人を踏み台に襲い掛かった人達に飛び掛って同時に何人も切り倒しました。
一つの無駄も無い動きで・・・

隆士「虎丈に足技習っておいてよかったぁ・・・運動不足の状態でやったらどうなっていた事か。」

虎丈「そりゃどうも。」

隆士「とにかくまだ僕はやれる。まだやるんだったら、少しは手加減してあげるよ。」

男B「お前な、この数を見ろ。お前一人でどうやるってんだ?頭使えよ。」

隆士「君らよりは使っているつもりだけど?」

男A「じゃあよ。どれだけ守れるか、見せてもらおうじゃないか。」

男達「おぉーーーー!!」

梢「え!?」

突然周りにいた人達が私達に襲い掛かってきました。
その数は多く・・・数え切れない・・・

神那「どうする!?防げるか!?」

虎丈「難しそうだが、やるだけ!!」

隆士「その必要は無いよ!!」

朱雀「えぇ!?」

梢「白鳥さん!?」

白鳥さんは既に私達の真上にいて、木刀を構えてました。

隆士「天!!」

男達「ごああっ!!」

隆士「もう一つ!!」

男達「ながぁっ!!」

隆士「っと。」

白鳥さんは私達の上で天の型を二回放って襲い掛かろうとしていた人を全員倒して着地しました。

隆士「言っておくけど、みんなに危害出せると思わない事だよ。僕がいる限りね。」

夏樹「隆もまだまだやるね。本当にブランク明けすぐなの?」

隆士「ちょっとだけ虎丈に足技教わってたから、それのお蔭かな?」

夏樹「なぁる。」

隆士「で、まだやるのかい?」

男A「状況見ろよ。まだお前が不利なのに変わり無いだろ?」

確かにまだ人はいます。
白鳥さんが不利なのは誰にでも分かります・・・

隆士「まぁね・・・だけど、君達には負ける気はしない。確実に・・・」

白鳥さんは木刀を男の人達に向けました・・・

隆士「負けるわけにもいかないしね・・・!!」

男B「お前に出来るのか?この数だぞ?」

隆士「出来る。たとえ何人いても、僕はみんなを守れる。」

男B「へっむかつく奴だな。じゃあてめぇさえ殺しゃいいんだな?」

隆士「それこそ、出来るならね。」

男A「おいお前ら!!まずはその人殺し野郎を先に殺せ。」

男達「おぉぉ!!」

一人の命令で、一斉に男の人達が白鳥さんに襲いかかりました。

梢「白鳥さん!!」

夏樹「大丈夫よ。隆も考えたわね。」

朝美「それってどう言う?」

夏樹「隆は自分でボクらを標的から外したんだ。全員が隆に行くようにね。」

恵「それこそヤバイんじゃないの!!」

夏樹「それこそ大丈夫よ。隆があんな奴らにやられるわけ無いし、正直ボクらがいたら隆の足手まといになるから、あえてあんな事したのよ。」

梢「そう・・・なんですか・・・?」

夏樹「言ったでしょ?誰よりも隆の事知ってるつもりなのよボクは。」

梢「そう・・・ですよね・・・」

珠実「あなた梢ちゃんに失礼ですぅ・・・!!」

夏樹「そう言う風に言ってるんだもん。当たり前でしょ。」

隆士「なっき・・・これ終わったら覚悟しておいてね・・・」

夏樹「はいはい分かりましたよ。だから今は。」

隆士「分かって・・・いるよ!!」

そう言って白鳥さんは男の人達と戦い始めました。

隆士「うおぉーーー!!」









夕「・・・!!」

その時夕は隆士達に降りかかってる危機に感づいた。

丑三「ん?どうした夕ちゃん。」

菫里「何か感じたのか?お、ロン。」

隼「おっと、これは痛いの。」

その時菫里、山吹、丑三、隼は麻雀をしていた。

夕「隆士さん達が襲われています!!場所は海岸近くの駐車場です!!」

山吹「何じゃと!?」

夕「行かなくては!!皆さんを助けに・・・うっ!?」

突然夕が胸を押さえてうずくまった。

丑三「夕ちゃん!?」

菫里「夕!!」

夕「だ、大丈夫です・・・い、急ぎましょう・・・!!」

隼「分かっておるが・・・誰か!!」

梓「どうなさいました!?」

隼が呼ぶと梓がやって来た。

隼「夕殿の容態を見てやってくれ。ワシらは朱雀達の所に向かう。」

梓「はい!!」

夕「ま、待って・・・!!」

丑三「夕ちゃん、だが・・・」

夕「私は今回の事で一番重要な位置にいます・・・そんな私が行った方が皆さんに被害がかかるのを防げるかも・・・」

山吹「馬鹿を言うな!!ここから先はお主を守る為ではないのか!?」

夕「分かってます・・・だからこそ・・・!!」

菫里「・・・行くしかあるまい。」

夕「兄さん・・・ありがとう・・・!!」

丑三「仕方ないの・・・日除け用のベールを頼む。」

梓「はい!!」

夕「待っててください・・・!!」









男A「なっ・・・?」

隆士「ふう・・・」

朝美「え、えっと・・・」

花梨「う、うそぉ・・・」

白鳥さんは本当に一人で襲ってきた人全員倒しました。
殺してはいませんが、しばらくは動けそうに無いほどのダメージを与えて・・・

隆士「どうだった?僕だってまだやれるんだ。」

男B「どうやらその通りだな。だが、これならどうだ?」

隆士「ん?」

そう言って男の人は近くにあった荷物から鉄の筒のような物を取り出しました。

虎丈「RPG!?」

浩子「ひあ?何なのそれ?」

神那「一番簡単な説明はバズーカ見たいな物だよ!!」

浩子「ひ、ひあぁぁぁぁ!?」

虎丈「となるとこいつらの裏は猪玩か!?」

男B「死ねやぁっ!!」

ドシュゥッ!!

花梨「ま、まじ!?」

本当に男の人がRPGと呼ばれた物をこっちに向けて撃ってきました。

恵「どどどどどうするの!?」

竜太郎「おおおお落ち着け恵!!」

沙夜子「あなたも落ち着いてね・・・」

朝美「母さんそんなツッコミいいってば!!」

虎丈「まずい!!朱雀撃ち落せ!!」

神那「バカヤロウ!!こんな距離で撃ったらこっちまで爆発が来るだろうが!!」

虎丈「んじゃどうすりゃ!!」

隆士「みんな伏せてて!!」

梢「え!?」

そう言って隆士さんは自ら発射された弾に向かっていきました。

珠実「白鳥さん正気ですか!?」

隆士「僕はいつだって・・・正気さ!!」

夏樹「おっなるほどね。水の型か。」

隆士「そうさ!!水!!」

灰原「んなぁ!?」

翼「はぁあっ!?」

何と白鳥さんは木刀であまり衝撃を与えないように切り上げて弾を上に弾きました。
これは流石に今までの中で一番驚きました・・・

夏樹「爆発させないように力を緩め、尚且つ出来る限り方向を変える為に力を出したんだ。流石、隆だよ。」

隆士「でもあのままじゃ危険だし、朱雀さんお願いできる?」

朱雀「勿論です。距離からしたら、破片が降る程度で済みそうですね。では!!」

ドドドドド!!ドゴーーーーン!!

梢「きゃっ!!」

朱雀さんが新しく持ってきた銃で撃つと弾が爆発しました。

理想奈「ご、ゴムでも凄い・・・」

男B「こ、この野郎!!」

隆士「させない!!」

男の人がまたRPGを持ち出して撃とうとした瞬間白鳥さんが走り出しました。

男B「なっ!?は、はやっ!!」

踏み込みが早く、一瞬の内に白鳥さんは男の人の懐まで走っていきました。

隆士「喰らえ!!金!!」

ドドドドドドドドドッ!!

男B「がぁーーーーー!!」

梢「え、えっと・・・今何を?」

私は白鳥さんが何をしたのか分かりませんでした。
分かったのは、突きをしたと言う事だけですが、男の人の痛がりは尋常じゃないと気づきました。

夏樹「今のは金の型。二番目に教わる型で、九連続で突くのよ。」

梢「きゅ、九回!?」

恵「全然見えなかったんですけど・・・」

隆士「ま、これで後はお前一人だ。」

男A「ぐっ・・・!!」

隆士「どうする?まだやるかい?」

男A「く・・・くくくく・・・聞いてた通りってわけか。」

隆士「聞いてた?」

男A「あぁ。俺らに言ってきた奴が『隆士が剣を使ってきたら』って事を想定しててな。だからよ、どうぞ俺の体切っていいぜ。」

隆士「何?」

瑞穂「はっ?あいつ何言ってるのよ。」

隆士「・・・分かったよ。」

瑞穂「ちょっと白鳥君!?」

隆士「天!!」

梢「白鳥さん!!」

本当に白鳥さんは男の人に天の型を放ちました。
ですが・・・

男A「ふん、効かねぇな。」

灰原「なっ・・・!?」

男の人は服が切れた程度で怪我をしてませんでした。

虎丈「・・・そうか。隆士の剣技を想定して専用のアーマーか何か作りやがったな!!」

男A「あぁそうさ!!何だか知らねぇがこれ着てりゃ何も効かないって言うから俺は感謝してるぜ!!」

花梨「作ったってどう言う事!?」

虎丈「猪玩の奴、ただ単に兵器を扱うだけじゃなく、兵器やそれに係わる物を自分で作る事もするんだよ・・・」

隆士「どうやら本当に対星の型に優れてるんだな。天の型が全く効かないなんてね。」

夏樹「だったら!!」

隆士「分かって・・・いるさ!!」

ドゥ!!

まひる「本当にやった。」

白鳥さんは本当に海の型を放ちました。
ですが・・・

男A「・・・へっ駄目だな。」

少し飛ばされた程度で全く効いてませんでした。

隆士「参ったね。海の型も効かないって。」

そう言って白鳥さんは一度距離を置きました。

隆士「あれじゃ何やっても無理だろうね。」

珠実「だったらアーマーの無い場所を!!」

隆士「分かってるけど、今ので見切った。あいつは、全身にアーマーがある。無いのは顔だけだ。」

夏樹「流石に顔じゃどんだけ手加減しても致命傷よね・・・」

隆士「となると・・・手は一つだけだね。」

夏樹「一つって・・・隆まさか!!」

隆士「そ、あのアーマーは水・金・地・火・木・土・天・海。八つの型は一切通じない。なら、僕に残された手は一つさ。」

夏樹「そ、そりゃそうだけど・・・あれをやったらどうなるか分かってるの!?」

隆士「多少のリスクを背負わなきゃ、守れる物も守れない。僕はもう迷わないと決めたんだ。」

夏樹「隆・・・」

男A「ほ〜?このアーマーを破るってのか?この無敵のアーマーを?」

隆士「この世に無敵なんか存在しない。いつかは全てが滅ぶかも知れないし、さらに強い何かが現れるだろうからね。」

男A「そう言う事は俺を切ってから言えっての。」

隆士「そうさせてもらうよ・・・」

そう言って白鳥さんは木刀を構えてその場で止まりました。
恐らく集中しているんでしょう・・・

隆士「・・・」

男A「何だ?何もしねぇのか?」

隆士「・・・」

男A「結局何もしねぇなら口だけだって・・・」

隆士「・・・無駄口はその辺にしておいたら・・・」

男A「あ?」

隆士「九星流奥義・・・冥!!」

ザスゥッ!!

男A「ぐがぁあああ!?」

虎丈「なっ!?」

神那「いぃ!?」

梢「え、えぇ!?」

本当に何があったのか全く分かりませんでした・・・
分かった時には男の人のアーマーはぼろぼろになって男の人が宙に浮いていました。
そして白鳥さんがその男の人のすぐ近くにまで移動していました。

恵「え、え〜っと・・・な、何をしたの?」

珠実「見た感じは左下から右上に振るった極普通の一太刀だと・・・」

夏樹「そう・・・見た目は普通なんだけど・・・本当は違うのよ。」

梢「え・・・白鳥さん!!」

隆士「ぐっ!!」

白鳥さんが左手で右腕を押さえていました。
とても痛がっている・・・

梢「大丈夫ですか白鳥さん!!」

夏樹「隆!!」

瑞穂「白鳥君!!」

朱雀「隆士様!!」

私達は白鳥さんの所に走りました。

夏樹「隆!!冥の型は駄目だって・・・!!」

隆士「つつ・・・こ、これ位ならまだ・・・つっ!!」

夏樹「・・・バカ・・・」

梢「白鳥さん・・・」

瑞穂「大丈夫なの白鳥君・・・右腕・・・」

隆士「う、うん・・・大丈夫さ・・・」

朱雀「早く医者に診に行きましょう!!この場にいては危険です!!」

梢「は、はい!!」

虎丈「急いで帰るぞ!!」

神那「おう!!」

私達は全員帰ろうとしました。
ですがその時に。

「待てやぁぁーーー!!」

翼「おあっ!?」

三千代「えぇ!?」

何人かの男の人がバイクに乗ってこっちに向かってきました。
もしかしたらこの人達の仲間・・・?

虎丈「くそっ!!神那やるぞ!!」

神那「合点!!」

藍川さんと栗崎さんが向かいましたが、バイクのスピードは速くて危険でした。

バイク男A「死ねぇ!!」

「させない!!」

朝美「えっ!?」

バゥン!!バゥン!!バゥン!!

バイク男「なっ!?お、おわぁっ!!」

梢「危ない!!」

突然バイクのタイヤが破裂して、バランスを崩したバイクは転倒し、その速度のまま私達の所に向かってきました。

虎丈「この程度、狼牙!!」

神那「でやっ!!」

夏樹「ボクも!!木!!」

藍川さんが狼牙で弾いて、栗崎さんが槍二本で突き刺しながら押さえて、夏樹さんが一度ジャンプして錫杖でバイクを突き刺して止めました。

朝美「今の声・・・鳥汐ちゃん!?」

朝美ちゃんが言ったように近くに鳥汐ちゃんが弓矢を構えていました。

鳥汐「朝美達に・・・友達に怪我はさせない!!」

朝美「鳥汐ちゃん・・・!!」

バイク男「この・・・ガキがぁ!!」

鳥汐「はっ!!」

一人が鳥汐ちゃんに向かって刀を持って走り出しました。

朝美「逃げて!!」

鳥汐「あ・・・!!」

バイク男「死ねやぁ!!」

ガキィィン!!

鳥汐「っ!!」

梢「え・・・?」

斬りかかった時響いたのは金属がぶつかる音・・・
気づいた時鳥汐ちゃんの前には・・・

兎連「全く・・・危ない子なんだから・・・」

兎連さんがいました。

神那「美乃!?」

兎連「やっほ。」

兎連さんは前に持っていた箱と同じくらいの大きさのリュックを前に出して刀を受け止めていました。

バイク男「何だよてめぇは!!」

兎連「十二支が一人、兎連よ。アンタらに指示出した奴の仲間。」

バイク男「んじゃあ何で邪魔するんだよ!!そいつは裏切り者なんだろうがよ!!」

兎連「確かに。だけどこんな子供を殺そうとするアンタらも人として最低でしょ。私達も人の事言えないけどね。」

鳥汐「・・・」

兎連「後、私って卑怯なやり方って気に食わないんだよね。アンタらは白鳥ちゃんがさっきの奴らを倒すのを待って、隙を見てひき殺すつもりだったでしょ?」

バイク男「それがどうした!?」

兎連「言ったわよね・・・卑怯なやり方は気に食わないって・・・だから私は・・・」

話しながら兎連さんはサングラスを外しました。
その雰囲気は今までの兎連さんとは違う・・・

兎連「アンタらを許さないよ!!」

バイク男「うぉっ!?」

虎丈「すげぇ気迫だ・・・あれが本気の兎連か・・・」

怒りをあらわにした兎連さんの瞳は、まるで灼熱の炎のように赤い瞳でした。

バイク男「んじゃあてめぇが相手になるのか?」

兎連「えぇいいわよ・・・ただし、命の保障は出来ないわよ・・・」

バイク男「おもしれぇ。やれるもんならやってみろや。」

兎連「そう・・・じゃあ・・・」

明らかに今までの雰囲気と違う兎連さんがそのリュックの中に手を入れました。

兎連「やると決めたからには・・・!!」

ガキンッ!!ジャキッ!!

理想奈「え、えぇ!?」

兎連「容赦しないわよ・・・」

兎連さんが取り出した物、
それは兎連さんよりも大きな鎌でした。
恐らく刃と柄のつなぎ目を折りたたんでしまっていたのかと・・・

神那「よせっての美乃、お前がそれを持ち出したら・・・」

兎連「悪いけど黙ってて・・・本気で許せれないの・・・」

「ちょっと待てや・・・」

兎連「!!」

隆士「まさか・・・」

鳥汐「猪玩!?」

遠くから沢山の荷物を持っている大男が来ました。

梢「あの人が・・・猪玩・・・」

猪玩「兎連、鳥汐。何を考えている・・・そいつらを殺すのが俺らの役目だろうがよ・・・」

兎連「あら、私は命令が出ない限り好き勝手やらせてもらうって言ったでしょ?今も好き勝手やらせてもらってるの。」

猪玩「裏切り者が・・・!!」

ガギン!!

翼「お、おいアレって・・・」

猪玩は持ってきた荷物から何かを取り出しました。
もしかして・・・

朱雀「ガトリングガン!?」

何とガトリングガンでした。

猪玩「こうなったら全員ぶっ殺す・・・!!」

バイク男「ちょ、ちょっと待てよ!!」

猪玩「死ねぇ!!」

兎連「っのバカぁ!!」

ガギン!!

猪玩「のぉっ!!」

一瞬でしたが、兎連さんはあの大鎌でガトリングガンを斬って壊しました。
とても重そうな鎌なんですが・・・

兎連「そんな物ぶっ放したら一体どうなるか分かってるの?」

猪玩「関係無い。俺らは全てをぶっ潰すのが目的だろうが。」

兎連「あのねぇ。私達は表には出られない陰の存在なのよ?こんな所でそんなのぶっ放したら大事になるわよ。さっきのRPGもそうだし。」

猪玩「なら、貴様も死ね。」

そう言って猪玩は兎連さんの頭部に銃を突きつけました。

梢「兎連さん!!」

神那「逃げろ美乃!!」

兎連「やれるならやりなよ。私はもう逃げないって決めたんだから。」

猪玩「そうか。」

そう言って本当に猪玩は引き金に指をかけました。

神那「よせぇ!!」

ジャラギッ!!

猪玩「おくっ!?」

梢「え・・・?」

引き金を引こうとした時、猪玩の銃と腕に二つの鎖分銅が巻きついて押さえました。
もしかして・・・

神那「鎖分銅・・・蛇蒼か!?」

蛇蒼「あぁ・・・」

すぐ近くに蛇蒼が来ていて彼が押さえてくれていました。

猪玩「蛇蒼・・・てめぇ・・・何しやがる!!」

猪玩はもう片方の手でまた銃を持って蛇蒼を狙いました。

「哀れね・・・」

猪玩「なっ!!」

また撃とうとした時、今度は大きな白い布が猪玩の腕を縛って押さえました。
あの布は・・・

朱雀「ば、馬邨・・・?」

馬邨「久しぶりね。」

すぐ近くに馬邨と呼ばれた女性がいました。
ですがあの人は・・・

梢「牛凱が襲ってきた時に会った方では・・・?」

前に牛凱が襲ってきた時に栗崎さんの槍を持ってきてくださった女性でした。

馬邨「あら、あなたは。」

梢「え、えぇ・・・」

猪玩「てめぇら一体何考えて!!」

「お前はうるさいんだ・・・黙ってろ・・・」

猪玩「にっ?」

「であっ!!」

猪玩「うがっ!?」

虎丈「なっ・・・!!」

突然男の人が上から降りてきて猪玩に踵落しを入れて彼を気絶させました。

虎丈「虎焔・・・てめぇも来てたのか!!」

虎焔「あぁ・・・」

瑞穂「ちょ、ちょっと待ってよ。虎焔、蛇蒼、馬邨、それに兎連って確か・・・」

鳥汐「うん。十二支の中で強い、五強だよ・・・」

兎連「あらあら、五強が四人もそろうなんて。これは何かあるのかしらね〜」

馬邨「いいえ、四人じゃ無いわ。」

隆士「な、何だって・・・はっ・・・!!」

私達の前方から一人の男の人が近づいてきました。
その人を見た瞬間、白鳥さんの表情が変わった・・・

「・・・久しぶりだな・・・隆士・・・」

隆士「・・・そうだね・・・竜汪。」

梢「竜汪・・・それって!!」

隆士「あぁ。前に僕を襲ってきた奴だよ・・・」

竜汪「そうだ・・・」

夏樹「ちょ、ちょっと待ってよ隆。あの人まさか・・・」

隆士「・・・そうだよ。」

竜汪「お前は・・・そうか。あの時の。」

隆士「・・・梢ちゃん、瑞穂さん、朱雀さん、なっき、下がって。」

朱雀「え・・・?」

瑞穂「白鳥君・・・?」

隆士「・・・あいつとは、ここで戦わなきゃいけないんだ・・・」

梢「駄目です!!そんな腕で・・・!!」

隆士「腕がどうだなんて・・・今は関係無い・・・やらなくちゃいけないんだ・・・!!」

そう言って白鳥さんは痛むはずの右手で木刀を持って前に出ました。

夏樹「ま、待ってよ隆!!竜也さんも!!」

竜汪「・・・」

梢「た、竜也?」

夏樹「二人が戦って何になるの!?そんな事梨音が望んでると思うの!?」

竜汪「それくらい・・・」

隆士「分かっているよ・・・」

夏樹「竜也さんだって分かっているんでしょ・・・あの日の事は・・・」

竜汪「・・・」

恵「ね、ねぇ・・・全く話が飲み込めないんだけど・・・そいつと梨音って子と何の関係があるの?」

隆士「・・・あいつと梨音は・・・」

竜汪「梨音は・・・俺の妹だ・・・」

三千代「妹?それじゃあお二人は・・・」

隆士「・・・一度だけ会った事がある・・・八年前にね・・・」

夏樹「青島竜也さん・・・梨音のお兄さん・・・」

花梨「面識がある相手って・・・予想以上に複雑のようね・・・」

隆士「複雑も複雑さ・・・それにあいつは・・・星の型奥義伝承者の一人だよ・・・」

浩子「ひあぁっ!?」

タチバナ「となると・・・山吹殿を除いて今星の型をマスターした者同士と言う事か・・・」

珠実「で、でも奥義伝承者なら実力は・・・」

隆士「それは分からないよ・・・あいつは僕より先に奥義を身につけたし、僕はブランク開けだし・・・それに・・・」

竜汪「話はそのくらいにしておけ、勝負の時間が短くなる・・・」

隆士「・・・あぁ。」

夏樹「こんなのおかしいよ・・・こんな事を梨音は望んでると思うの!?八年前に死んだ梨音が!!」

隆士「・・・」
竜汪「・・・」

梢「し、死んだって・・・白鳥さん!?」

隆士「・・・詳しい事は後で話す。だから今は・・・」

竜汪「・・・待て。」

隆士「ん?」

竜汪「これを使え。」

隆士「おっと。」

竜汪は白鳥さんに一本の刀を投げ渡しました。

竜汪「木刀なんかよりはいいだろう。」

隆士「・・・そうだね。」

そう言って白鳥さんは木刀を置き、刀をズボンのベルトに挿して腰に携えました。

兎連「そっか。あんたら三人が来たのって、二人の決闘を見届ける為ね。」

蛇蒼「少なくとも、俺はそのつもりだ。」

馬邨「何となく。」

虎焔「暇つぶしだ・・・」

隆士「じゃあやろう・・・みんなは離れてて。」

梢「・・・はい。」

バイク男「い、今の内に逃げ・・・」

鳥汐「させない・・・逃がさないから。」

バイク男「・・・」

竜汪「では・・・行くぞ・・・」

そう言って竜汪は腰の後ろにあった短めの刀を二本持ち出して構えました。

夏樹「小太刀二刀・・・あれが竜也さんの・・・」

隆士「・・・あぁ。」

そして白鳥さんも腰の刀に右手を添えて構えました。

隆士「・・・」
竜汪「・・・」

まひる「何故動かない?」

虎丈「動かないんじゃない。動けないんだ・・・」

夏樹「どっちが先に踏み込むか・・・それで全てが決まるかもしれない・・・」

竜汪「・・・」

少し経ち、先に竜汪が踏み込みました。

夏樹「隆!!」

隆士「・・・」

竜汪「はぁっ!!」

キィィン!!

隆士「くっ!!」

竜汪「ちっ!!」

竜太郎「なっ!?」

一瞬の内に竜汪は白鳥さんの後ろに周り斬りかかってましたが、白鳥さんは刀で受け止めていました。

恵「やるじゃん白鳥クン!!受け止めるなんて。」

夏樹「いえ、隆が押されてる!!」

朝美「え?」

翼「だけど一瞬の内に後ろに周った奴の攻撃を受け止めるなんて普通出来ないぞ?」

夏樹「ううん・・・今の居合い、地の型は放てば刃は鞘から出され、全てを弾く技なのに・・・」

虎丈「隆士は、出している途中だ・・・」

皆さんが言うように、白鳥さんの刀は途中までしか刃が出ていませんでした。

夏樹「やっぱりその腕じゃ無理だよ!!」

隆士「そんな事・・・言ってられない!!」

竜汪「つっ!!」

白鳥さんはほぼ無理矢理に刀を抜いて竜汪を弾きました。

隆士「うぉーーー!!」

竜汪「はぁーーー!!」

二人は何度も斬りかかり、刃がぶつかる度に火花が飛び散りました。

花梨「何なのこの戦い・・・全然違うじゃない・・・」

サクラ「ふぇ〜・・・」

梢「本当にアレが・・・白鳥さん・・・?」

恵「てかアイツ二本って卑怯じゃない!!」

夏樹「卑怯なんかじゃな無いです。星の型で小太刀を使う者は必ず二対一刀、二刀流なんです。」

珠実「ですがどう見たって白鳥さんが押されてるです!!」

夏樹「刀を使う隆士は一撃必倒、つまり一撃狙い。小太刀二刀の竜也さんは攻撃を隙を与えない素早さと連続攻撃狙い・・・」

虎丈「つまり竜汪は何度も攻撃を仕掛けて攻撃させないようにし、隆士は一瞬の隙を突いての一撃狙いか。」

夏樹「そう。それが威力の強い刀、小回りの効く小太刀の戦い方よ。」

梢「・・・」

竜汪「やるな!!だが一気に切り刻む!!」

竜汪は両手の小太刀を逆手に持ち替えました。

竜汪「土!!」

隆士「くっ!!」

白鳥さんは後ろの方に飛んで竜汪から離れました。
竜汪は逆手に持った小太刀で素早い連続切りをしました。

夏樹「土の型は連続切りの型。距離を空けたのは正解だったよ・・・」

竜汪「なら!!」

竜汪は再び小太刀を持ち替え、その場に膝を曲げてしゃがみこみました。

隆士「まさか!!」

竜汪「海!!」

竜汪は一気に踏み込んで二本の小太刀を前に突き出して隆士さんに飛び掛りました。

隆士「くそっ!!」

白鳥さんは上に高くジャンプして竜汪をよけました。
ですが竜汪は隆士さんの真下で止まりました。

竜汪「甘い!!」

隆士「しまった!!派生か!!」

竜汪「翔!!」

そして今度は上にいる白鳥さんに向かって飛び掛りました。

隆士「だけど僕だって負けはしない!!」

白鳥さんは下を向いて剣を構えました。

隆士「木」

ガギィン!!

二人の刃はぶつかって激しい火花が散りました。

竜汪「くっ!!」

隆士「くぅ!!はっ!!」

竜汪「とぅ!!」

二人は一度離れて着地しましたがすぐに斬りかかり合いました。

沙耶「とんでもないな・・・二人とも・・・」

花梨「普段のあの人とは思えない・・・」

竜汪「これならどうだ!!天!!」

隆士「させない!!天!!」

二人は同時に天の型を放ち、二つの斬激は結果相殺しました。

竜汪「やはりそう簡単にはいかないか・・・」

隆士「まぁね・・・」

隆汪「次で決める・・・」

隆士「・・・そうだね。」

そう言って白鳥さんは刀を鞘に戻し、竜汪は小太刀を逆手に持って互いに構えました。

夏樹「隆駄目!!それを使っちゃ!!」

隆士「黙ってて!!これは、避けられないんだ・・・!!」

夏樹「隆・・・」

竜汪「行くぞ・・・」

隆士「あぁ・・・」

隆士&竜汪「奥義、冥!!」

ガギィィィン!!

虎丈「なっ!!」

二人が同時に奥義を放ち、刹那刃が当たった金属音が響きました。

隆士「・・・あぐぅ!!」

梢「あっ!!」

二人はすれ違うと白鳥さんの刀は折れていて、また白鳥さんは右腕を押さえてその場に倒れました。

梢「白鳥さん!!」

隆士「こ、梢ちゃん・・・」

竜汪「斬ってはいない。刀に当てただけだ。」

隆士「くっ・・・」

竜汪「いずれ本当の決着をつける・・・待っているんだな・・・」

そう言って竜汪は腰にあった鞘に小太刀をしまい、どこかに去りました。

蛇蒼「見せてもらった。お前達の戦いを。」

馬邨「ま、確かに面白かったわね。」

虎焔「まぁな・・・」

虎丈「虎焔、蛇蒼、馬邨。」

虎焔「ん?」

虎丈「俺らもいずれお前達と決着をつける。覚えておけよ。」

神那「そうだな。」

朱雀「えぇ。」

馬邨「そうね。覚えておくわ。」

蛇蒼「あぁ。」

虎焔「そうさせてもらう・・・」

そう言い残して三人もどこかへ行ってしまいました。

兎連「相変わらず愛想の無い奴ら。じゃ、私も帰るね。鳥汐。」

鳥汐「うん。朝美、またね。」

朝美「うん・・・」

そして二人も去りました。

瑞穂「大丈夫なの?白鳥君・・・」

隆士「まぁね・・・」

翼「もう夜になる。早く戻ろうぜ。」

珠実「そうですね。」

バイク男「おい・・・俺らの事忘れてんじゃねぇだろうな。」

その場全員「あ・・・」

そう言えばすっかり先ほどバイクに乗っていた人達の事忘れていました。

バイク男「ふざけんじゃ!!」

「てやぁっ!!」

バイク男達「ぐっ!?」

朝美「えぇ!?」

その時男の人達の手に何かが刺さり、持っていた凶器を落しました。

「間に合ったようですね。」

朱雀「その声・・・夕様!?」

夕「えぇ。」

近くを見ると夕さんがいました。
が、どこか様子が違いました。

バイク男「このっガキがぁっ!!」

男の一人が夕さんを殴ろうとしました。

夕「っ!!」

バイク男「いっ!?」

その時突然夕さんがいなくなりました。

三千代「え?い、一体何が?」

バイク男「なっ?どこ行きやがったガキ!!」

夕「言っておきますが、私は見た目がこうでも既に47なので。」

バイク男「いっ?」

虎丈「あっ・・・?」

夕さんはいつの間にかその男の人の後ろにいて何かを突きつけてました。
形からして、クナイ?

夕「そちらの方達も逃げようとするなら、容赦はしませんよ?」

そしてもう片方の手にもクナイが二本ありました。

虎丈「んじゃ、捕まえておくか。」

神那「あいよ。」

そして二人が男の人達を捕まえました。

まひる「母様、一体?」

夕「言いませんでした?夜は元気ですって。」

恵「元気過ぎにも程があるような・・・てか47!?」

タチバナ「そう言えば奥様のお歳は皆に教えていなかったな。」

ほぼ一同(47には見えない・・・どう見たって幼子じゃ・・・)

神那「よくまぁ沙夜子さんを産んだもんだ・・・」

夕「そうですか?」

虎丈「にしたってさっきの動きは一体・・・」

「まぁ話そうか。」

朱雀「菫里さん。それに丑三様に山吹さん、おじい様まで。」

遅れて菫里さん達がきました。

菫里「夕は実験の副作用で日の光に弱くはなったが、逆に日が沈んだ後、夜になると強くなれるんじゃ。さっきも見たろう?」

灰原「確かに人間離れしてたナ・・・」

梢「そう言えば既に日が沈んでますね。」

夕「まぁ本気を出したらもっと出来ますけどね。」

隆士「でしょうね・・・クナイの投擲にしても。一体何本持ち込んでるんです?」

夕「ん〜・・・数えた事無いので。」

丑三「夕ちゃん・・・」

隆士「ま、いいか・・・それよりもここを去ろうよ。」

瑞穂「そうよね。それに白鳥君の右腕も。」

朱雀「えぇ。」

山吹「先ほど青島とすれ違ったが・・・その様子じゃ負けたようじゃな。」

隆士「えぇ・・・でも決着はまだです。」

山吹「そうか・・・」

そして私達はここから帰ろうとしました。
その時。

猪玩「待て・・・!!」

理想奈「きゃっ!?」

後ろを見たら猪玩が起きていました。
そう言えば忘れていました・・・

猪玩「どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって・・・!!」

虎丈「ったく・・・早く行け。」

隆士「虎丈?」

虎丈「こいつの始末は俺がつける。お前らは先に帰れ。」

夏樹「大丈夫なの?」

虎丈「信じてろっての。」

隆士「・・・分かった。行こう。」

梢「白鳥さん。ですが・・・」

隆士「虎丈が信じてくれって言ったんだ。だったら信じようよ。」

神那「だな。」

朱雀「えぇ。」

梢「そうなんですか・・・」

夏樹「じゃ、虎丈。気をつけてね。」

虎丈「あぁ。」

そして私達は藍川さんを残して先に帰りました。

梢「・・・あの、白鳥さん。」

隆士「うん?」

梢「・・・話してくださいね・・・あなたの事・・・」

隆士「うん・・・」

やっぱり私は何も知らない。
大切な恋人の事を何にも。
そんな私に、何が出来るのでしょうか。




大切な人の為に、何が出来るのでしょうか・・・





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